一定の周波数が長く続くCF型は、一つのパルスが10-50msと長めです。ただし純粋なCF音だけを使うコウモリはまれで、CF部分の前や後ろに短いFM部分がつくことが多く、正確にはCF/FMパルスとかFM/CF/FMパルスと呼びます。コウモリが虫に近づいていくときは、パルスのCF成分が減ってFM部分の周波数帯域が増えていくので、パルスは短く、FM的な性質が強くなります。その理由はFM音のところで述べたように、獲物の情報をより詳しく知るためと距離が近くなるためです。
それではCFの利点は何でしょう。
通りで救急車がピーポーピーポーとサイレンを鳴らして近づいてくるときに、すれ違ったとたんに間の抜けた低い音に変わってしまうのをドップラー効果と言います。最近は物理が選択授業でしかない高校も多いので、原理を習ってない生徒が多くなりました。
接近してくるときは、一つの波から次の波までの間にも音源は近づいるわけですから、サイレンの音波は圧縮されて短くなります。すなわち高い音になります。車が通り過ぎると、音源が遠ざかりながら音波を発することになりますから、波長が引き延ばされ低い音になります。
この現象を利用すれば、エコーが発した声よりどのくらい周波数が高くなったかで、虫の速度が測れるはずです。また周波数が低くなったときは、虫に追いついていないということですから、あきらめた方が懸命です。
コウモリ自身も飛びながら採餌するわけで、自分の相対速度を計算することもできるはずです。スピード違反取り締まり用測定器もこの原理を利用しているとどこかで聞いたことがあるけど・・・(コウモリにネズミ取りのアルバイトさせるとか)
更にこのドップラー効果は虫のはばたきも検出することができます。虫の翅に反射して跳ね返ってくる音波は、はばたきによって翅の位置が変われば周波数が規則的に変調します。また、翅の面がちょうどコウモリの方を向いているときは、一番よく音波を反射しますからエコーの振幅(音波の強さ)も一番強くなります。コウモリはこういった情報によって、何の虫が飛んでいるのか調べて、美味しい虫を選んで食べているようです。