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軽井沢シンドローム

karu巨大なアウトレットモールが人を呼ぶ軽井沢。貧乏人がレンタサイクルに乗って行き交う喧騒を離れ、ちょっと森に入るとセレブな人々を見かける。どのような方々なのだろうか? 下世話な興味は尽きない。いや、下世話ではないな。案外そこを分析すればメディアが伝えない日本国が見えてくる。そんな感じがする。メディアといえば、この夏、鳩山別荘からのニュースが大々的に報道された。一度目は金賢姫の滞在場所として、二度目は民主党議員の懇親会の場所としてだった。鳩山別荘は軽井沢駅と旧軽井沢商店街の中間、雲場池の近くにある。敷地は広大、接する道路は鳩山通りと呼ばれている。由紀夫氏が総理になった際、鳩山家は華麗なる一族だとテレビでさかんに紹介された。祖父が鳩山一郎元総理、父は鳩山威一郎元外務大臣、弟の邦夫氏も元大臣だ。みな東大卒の秀才。たしかに華麗だが、鳩山家そのものは岡山の田舎藩士の出に過ぎない。では何故そんなに金を持っているのか? 周知ことだが、それは石橋家の閨閥だからだ。石橋正二郎が一代で築いた財閥、ブリジストンタイヤの石橋家。現役バリバリの企業のオーナー一族だ、生きたお金を持っている。その石橋家も明治の初め、正二郎氏以前は着物の仕立て屋に過ぎなかったのだが、このスタイルこそが現代日本の特権階級を支えてきた処世そのものだ。一代で財を成す実業家とエリート官僚や学者、叩き上げの政治家との婚姻によって形成される一族。そこに歴史的な名誉を武器に巧妙に加わってくる旧華族。そんなものの複合体が日本の金持ちの実像だ。名誉だけでは食えない。金を持ってるだけならいずれ相続税に潰される。能力が無ければ商売は続かない。政治に口出ししなければ利権を誘導できない。それら必要な要素すべてを最も手っ取り早く手に入れる方法がある。セックスだ。あはは、これはさすがに下品だったかな。要するに血の繋がり。上手に閨閥を形成することで自分の死後も子孫に富を残すことが可能となる。さて、セックスの話はこれ位にして、さらにもうひとつ重要なポイントがある。それは米国と仲良くすることだ。いきなり何で?と思われるかも知れないが、これをしないととりあえず金持ちになれてもきっと支配層には加われない。戦後、財閥は解体され、華族制度も廃止された。農地改革も含めそれらは革命的な変化だったはず。しかし、実際には旧財閥は緩やかな企業グループを形成し、今でも日本の富を支えている。どういうことか。その理由は現在でも天皇が在位していることに象徴的に現れている。戦後、日本の統治を容易にするために米国が天皇制を残したことはよく知られた話だが、その後、世界が急速に冷戦構造に突入する世界情勢の中、米国は日本の旧支配層を利用し米国に忠誠を尽くす実力者達を優遇した。この時、米国に尻尾をふった人々が現代日本の特権階級だ。無論、戦後になって勃興した成金も多い。しかし、既存の特権階級と閨閥を築けなかった人や、反米的な行いをした家はだいたい一代限りで没落している。考えてみれば当然のことだ。日本は敗戦国。さらに米国に占領された国なのだ。サンフランシスコ講和条約を機に名実共に独立国として復活したことになってはいるが、その独立に占領国の意に沿わない独立などあるわけがないではないか。その証拠に現在でも日本の領空を米国の戦闘機が自由に飛び回っている。実は何も変わっていないのだ。他国の戦闘機が自由に飛びまわってる国を真の独立国といえるのかどうかは微妙だが、その状態で経済だけは独立してると思い込むのもまた微妙だ。戦後の日本は驚異的な経済発展を遂げた。G5時代から先進国に仲間入りし、今もG7、G8のメンバーとなっている。80年代に経済で米国を抜いたなんてこともほんの一瞬、あったにはあった。しかし、その時、調子に乗って米国人の威信を傷つけてしまった旧財閥は、系列の自動車メーカーがSUVを得意としたことも相俟って、その後こっぴどく米国に虐められたことを忘れてはならない。ある時期、世界で一人勝ちし、米国の豊かさの象徴だった自動車のビック3を追い詰めてしまった日本の別の旧財閥系自動車メーカーも現在どういう仕打ちを受けているかも皆が知るところだろう。社長が泣いてる姿まで全米に放送されてしまった。東条英機や山下奉文が草葉の陰で泣いてるぞ。ドルショックに始まり、牛肉オレンジ、円高不況、プラザ合意、湾岸戦争負担金、郵政民営化・・・。高度経済成長後の日本経済は、内容の違いこそあれそんなことの繰り返しだった。政治家も同じ、調子に乗って日本の増益を追及し米国の逆鱗に触れると必ず失脚する。そんな元気のある政治家も最近はいなくなった。当代こそ市民運動叩き上げの男が首相をやってるが、平成になってからの首相はいわゆる二世議員ばかり。彼らが何のために政治をやってるかといえば、親から引き継いだ一族の権益を守るため。土建屋に連なる閨閥、クルマ屋に連なる閨閥、タイヤ屋、電気屋、セメント屋、そういった閨閥が欲の突っ張りあいで集合離散しては政局を演じつつ持ち回りで総理をやってるに過ぎない。なんともカッコ悪いが、それが去勢された国の現実。情けないといえばその通りだが、一方で1億円以上の資産を持つ家が100万世帯以上あるのも日本だ。これは世界的にみれば凄いこと。カッコは悪いがうまいことやっているとも云えなくは無い。いつも世界の主役で、月に人間まで送り込み国歌もカッコイイ米国だが、第ニ次大戦が終了して以降、世界のあちこちで起きた紛争での米国の戦死者数は実に10万人を超える。豊かさの代償も大きい。子供の頃、軽井沢に云った際、何よりも珍しく感じたのは外人がいる光景だった。ジョン・レノンが避暑にきているのを噂で聞いてワクワクしたこともあった。そういや軽井沢にジョンを連れてきたのは旧安田財閥直系の娘さんだよな。そのジョンも軽井沢に通った数年後にはニューヨークで凶弾に倒れてしまう。何が幸せで何が不幸なのか。夏の軽井沢を歩きながら考えるのもまた乙だろう。

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