上方文化評論家福井栄一・地歌演奏家菊聖公一
『地歌で寿ぐ寅歳』
                                     2010年1月30日(土)14:00〜
演奏曲目 作曲・編曲者 演奏者(敬称略)
1. 『新青柳』 石川勾当作曲
・八重崎検校箏手付
(三絃)菊聖公一(箏)中萩あす香
○能『遊行柳』と『源氏物語』若菜の巻
2. 『梅の宿』 菊岡検校 (三絃)菊聖公一(箏)中萩あす香
○白梅と紅梅
○梅見の心得
3. 『名護屋帯』 作者不詳 (三絃)菊聖公一
○名護屋と秀吉
○名護屋帯と名古屋帯
今回のテーマ『寅歳』。なかなか地歌で寅が出てくる物が有りません。菊聖先生に頭を絞り何とか寅が擦る3曲を見つけて頂きました。
1曲目の『新青柳』は能の『遊行柳』の一部、源氏物語『若菜』の巻を地歌として歌われています。
源氏物語で姫君「女三宮」とイケメン「柏木」の恋愛を描いていますが、特にこの地歌『新青柳』では二人の出会いを歌っています。『蹴鞠』の説明やキッカケとなった『手飼いの虎』(猫)の説明を楽しいイラストで説明頂きました。ここでテーマの『寅』が登場です。

2曲目には残念ながら寅が入っていません。タイトルの『寿ぐ寅歳』の『寿ぐ』と言うわけで祝儀曲『梅の宿』になりました。
そこで梅にまつわるお話し。梅は中国大陸から伝来した植物で、『白梅』と『紅梅』はどちらが日本に先に入ってきたかと言うと、白梅の方が奈良時代に先に伝来してきました。なので奈良時代の和歌に歌われている梅は全て白梅になるそうです。平安時代になり紅梅が登場したそうです。菅原道真で有名な梅ですが、その飛び梅は紅梅だそうです。
花見と言えば桜の花見が一般的ですが、その花見と梅見の心得は異なります。桜は群れで咲いた花を見、多人数で見に行き、飲食を伴います。が、梅見は独りで静かに観察するのが心得とされています。江戸時代には『夜の梅見て戻りしを女房に言訳くらき袖の移り香』と言った洒落た歌も詠われています。

3曲目は『名護屋帯』ですが、名古屋と名護屋と勘違いされている方が多いそうです。『名護屋』は肥前の国にあり、1592年に豊臣秀吉が朝鮮出兵が行われました。戦には負けましたが武将加藤清正が朝鮮半島に居る虎を退治した逸話があります。ここでテーマ『寅』が登場出来ました。『名護屋帯』→『名護屋』→『加藤清正』→『虎』となかなか苦労されたそうです。その朝鮮出兵の時に半島から連れ帰った職人が作る組紐が『名護屋帯』として肥前の名産として広まりました。ところが、名古屋女子大学の創始者越原春子氏が大正時代に発売した名古屋帯と度々混同されてしまう事もあるそうです。
福井先生の最新刊『虎の目にも涙 44人の虎ばなし』(技報堂出版)。
十二支獣シリーズの最新作。『イノシシは転ばない』『大山鳴動してネズミ100匹』『悟りの牛の見つけかた』に続く第四弾!!
今回の加藤清正の話など、虎にまつわる44人のお話しが載っています。

【クイズ】
母虎が三つ子の子虎を産んだ。その中の1匹が大変凶暴で母虎が居ないと他の子虎を喰い殺す。
母子4匹で旅をしているが、目の前に大河に出くわす。母虎は泳いで渡れるが子虎は泳げない。ただ母虎は子虎を1匹だけなら背負って泳げる。例えば試しに母虎だけが川を渡ってみると残った凶暴な子虎が他の2匹を喰い殺してしまう。ではどのような順番で運べば4匹が無事対岸に渡れるでしょうか?

気になる答えは、その最新刊に書いてあります!!
毎度お馴染み(?)になりつつある福井先生のお土産。
今回の『寅』がテーマなので虎をお土産に用意しようと思ったのですが、ワシントン条約もあるので断念。そこで室町時代から虎屋の屋号を使っている京都の虎屋の羊羹です。寅歳限定の色やイラストのレアな羊羹のプレゼントでした。
【新青柳】(三絃)菊聖公一(箏)中萩あす香