上方文化評論家福井栄一・地歌演奏家菊聖公一
楽しいお話と地歌の会〜地歌で京へおいでやす〜
       2009年09月26日(土)14:00〜
演奏曲目
1. 『京名所』 (1)寛政年間の作。
(2)平安京は「四神」相応の地。
2. 『京の四季』 (1)長楽寺と六道思想と観音さん
(2)京の五花街と五流派・舞踏公演
3. 『鉄輪』 (1)「丑の時参り」が正しい。
(2)貴船神社の境内で悲喜こもごも。
季節も良い頃合いになり、京都観光も真っ盛りで沢山のお客さんが来はります。今回の邦楽さろんは福井先生のお話と菊聖先生の地歌で京都巡りをして頂こうと、『京名所』『京の四季』『鉄輪』を中心にお話しが進められました。

【京名所】
大阪の長岡勾当が江戸の寛政年間に作曲した曲。京都の名所を並べ連ねた歌詞になっています。

「平安京」が794年に建設されたのは歴史的にも有名な話ですが、その10年前784年には「長岡京」と言う都が造られかっていました。藤原種継が桓武天皇から拝命し建立の指揮に当たっていましたが、矢により暗殺されてしまいます。その首謀者として早良親王が捕らえ長岡京の近くにある寺に幽閉されていました。早良親王は無罪を訴え続け絶食しますが聞き届けられず絶命します。その後長岡京で干ばつや災害に見舞われ、ゲンも悪いというので建設は中断されました。
その10年後平安京に遷都されました。
平安京はゲンを担ぎ中国から伝わる陰陽道を元に立地を考えられました。「四神相応」で北を守る玄武、西の白虎、南の朱雀、東の青龍によって守られた土地が良いとされていたそうです。丁度京都は東(青龍)に東山山系が横たわり鴨川が流れています。南(朱雀)には昔巨椋池と言った沼地があり、西(白虎)には山陽道があり、北(玄武)には船岡山と、四方が守られた平安京が1000年の間平定されました。

と、平安京の成り立ちを面白く説明頂きました。
京名所は歌詞にストーリー性は一切無く唯々名所を歌い並べた珍しい曲です。大阪の人間がわざわざ京都を並べ歌う・・・福井先生曰く「いやみちゃうか」
【京の四季】
先程の京名所とは異なり、京都の四季の良さを歌っています。花街で芸子さん呼ん遊ぶと、最初の頃に習う曲なので新米の芸子さんが良く踊ってくれるそうです。これぞ京都と思えます。
中に出てくる長楽寺はマイナーな寺ですが、実は歴史上重要なお寺なのだそうです。人間界を摂化する准胝観音さま(秘仏)をご本尊としています。他にも天道、餓鬼道、修羅道など六道のお話しに広がっていきました。

その他京都五花街の舞踊流派の色々なお話しもありました。
【鉄輪】
鉄輪(鉄輪)とは別名『五徳』と呼ばれていて、火鉢や囲炉裏の中で鍋ややかんなどを乗せる機具。この歌の中では上下反対にし、頭に乗せ呪いを掛ける為に使います。
貴船神社で男に呪いを掛けようとするが、安倍晴明に邪魔され失敗する内容の曲。
貴船神社は『丑の時参り』の定番になったそうです。

ただ、よく『丑の刻参り』と色々な場所で言われていますが、『丑の刻』とは午前二時を指し、『丑の刻参り』だとこの時間丁度に呪いをかけに行かなければなりません。現実的では有りません。なので『丑の時(午前二時から三時)参り』が正しい使い方なのだそうです。

なかなか他では聞けない面白いお話しでした。