■浪花の芸術を菊会 REPORT■
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●2001年6月7日UP
第五回 浪花の芸術を菊会
日時:平成13年5月30日(水)
ゲスト:菊笠穂見奈さん・菊笠則仁子さん・中萩あす香さん・阪口夕山さん
演奏曲目
1.『五段砧』(光崎検校):箏A
2.『チャイナチャイナチャイナ』(菊重精峰):箏@・十七絃@・胡弓@
3.『荒れねずみ』:三絃A
4.『千代の鶯』(光崎検校):箏@・三絃@・尺八@
5.『春の海(低音Ver.)』(宮城道雄):箏@・尺八@
「菊会」も5回目を数え、今回で第1回目からちょうど1年が経ちました。
前回(2月)につづき今日も雨。雨オトコ・雨オンナはどなたでしょう??
その雨の中、まずは菊重先生と菊聖先生による『五段砧』で始まりました。この会では菊重先生が箏で古典をされるのは珍しいことです。
先輩の菊聖先生が高音でサポートされますがやっぱりこの曲は砧の情緒をかもしだす低音が主役の名曲です。同じ菊筋の流れを受け継ぐお二人ですので息はピッタリ。特に次の段への"間"の後、おたがい示し合わさなくとも頭の音がピッタリと合うのには驚かされました。
途中ちょっとだけヒヤッとするところがありましたが「チームワークで乗り切った(菊聖先生談)」お二人でした。
2曲目は菊重先生の作品から『チャイナ・チャイナ・チャイナ』です。菊笠穂さんと菊笠則さんが箏・十七絃で助演をされ、菊重先生は今回も胡弓を演奏されました。
今は演奏されることの少なくなった胡弓をメインにして、中国をイメージに作られたそうです。が、実は先生は中国に行った事はないそうです。(笑)
付点のリズムを用いて、なんだかウキウキした気分になる一章の"浩浩"。ゆったりしていて、それでいて少しモノ哀しいような、広い中国のイメージそのものの二章"悠悠"。一転してUP TEMPOになり、バイタリティー溢れる中国の市場を思い浮かべるような三章"軽軽"。さすがに菊重先生。音で風景やイメージを描写する作曲の感性、素晴らしいですね。
お次は菊聖先生。毎回相方を務められる中萩さんと三絃二挺で『荒れねずみ』を演奏されました。この曲は昔からやりたかった曲で、昨年舞台でも演奏。これから磨きをかけていきたい曲だそうです。この『荒れねずみ』は地唄でも作ものという部類のものですが、唄というよりは余興的で、手に擬音が入るなど情景描写が大事になります。そこは声に定評のある菊聖先生。実にうまく声に表情を持たせ、我々を楽しませてくれました。「ちゅう、ちゅう」と鳴き真似をされるところでは思わず吹き出す方々が。
次はゲストに尺八の阪口夕山さんを迎えて『千代の鶯』です。この曲も菊聖先生の大好きな曲とのことですが、先ほどの『荒れねずみ』から一変して緊張感がでてきます。
この曲は光崎検校の作曲ですが、『五段砧』と同じで光崎検校が自ら箏の手付を行った曲です。「三絃と箏のからみが非常にたくみだ」という菊聖先生。曲の山場では菊聖先生の三絃と中萩さんの箏の息もつかせぬようなからみに、さらにパワフルな尺八が絡み合い、見事な演奏でした。
「若い時は若い時の、老いては老いての、その時々の芸がある」と言われる菊聖先生。先日45歳になられたばかりの先生の芸はより磨きがかかり、艶やかでメリハリのある演奏で、非常に聴き応えのあるものでした。
予定されていたのは以上の4曲でしたが、そこはサービス心旺盛なみなさん。菊聖先生と阪口夕山さんが『春の海(低音バージョン?)』を、菊重先生が胡弓の小曲を演奏していただけました。
こちらがお客様にアンケートをお願いしている間、お客様の質問にも色々とお答えいただきました。
そんな先生方の音楽を目の前で聴き、お話もしてみたいかた。ぜひ次回にお待ちしております。 -Y.S-
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●2001年3月4日UP
第四回 浪花の芸術を菊会
日時:平成13年2月28日(木)
ゲスト:菊笠穂見奈さん・中萩あす香さん(箏)・阪口夕山さん(尺八)
演奏曲目
1.『雪のように』(菊重精峰):箏@・胡弓@
2.『ひなまつり』(菊重精峰):箏@・十七絃@・尺八@
3.『ながらの春』(八重崎検校):箏@・三絃@
4.『青柳』(石川勾当):箏@・三絃@
5.『ゆき』(峰崎勾当):三絃@・胡弓@
菊会は今回始めてレポートさせていただきます、H.Nです。お客様も満員御礼で凄い熱気でした。
さて1曲目は菊重先生(胡弓)と菊笠穂さん(箏)で菊重先生作曲の「雪のように」でした。が、本来なら箏Aの編成ですが、箏@・胡弓@のバージョンで演奏されました。またその編成でしっくりと演奏できるのは作曲者である先生だからこそですね。この曲の「雪」とは冬に降る雪そのものでなく、この曲の歌詞の内容から「雪のように白い心」をイメージしているそうです。また曲中につなぎとして「ゆき」の合いの手が使われているそうです。
2曲目はまさにこの時期にぴったりな「ひなまつり」を菊重先生(箏)・菊笠保(十七絃)・阪口さん(尺八)で演奏されました。そのままの「ひなまつり」でなく菊重先生による編曲でした。原曲が8小節の曲なので短いので、色々とテンポや手を変え編曲されたそうです。
菊重先生の持ち時間はここまでなのですが胡弓について少々お話されていたので、その話も。胡弓は明治時代まで三曲の一角を担っていましたが、徐々に尺八に移行されました。また他の要因として、左右に回転しながら演奏するという演奏技術の難しさと、新曲の速さに対応しにくいといった点も指摘されていました。しかし、これだけのいい音色はもっと見直されてもいいのではないのでしょうか。そのような新曲も作曲されると楽しいですね。
3曲目からは菊聖先生の2曲です。まず「ながらの春」を菊聖先生(三絃)、中萩さん(箏)で演奏されました。この曲の前半のしっとりとした雰囲気から一転後唄の華やかさが先生のお好みだそうです。
さて曲間に菊聖先生の邦楽を始めるきっかけについてお話が聞けました。先生は高1の頃お母様の影響を受けて始められたそうです。(ちなみに菊原光治先生は憧れの先生がお稽古していたので始めたそうです(^.^)菊聖先生が高2の頃菊原先生のところにはじめてうかがった時、光治先生に小学生と間違われたそうです。^_^;5年で名取になりそれから20年で現在にいたるそうです。菊重先生は菊聖先生より6歳違いで、始められた当時は男性が2人だけ(菊聖先生、光治先生)っだたので、初めてお稽古に見えた時はどのような人がくるのかと待っていると、当時ラグビーをしていた角刈り頭の菊重先生が現れ、この人が演奏するのだろうかと思われたそうです。(^^ゞ
4曲目は「(新)青柳」でした。こちらも菊聖先生(三絃)、中萩さん(箏)で、菊聖先生の素晴らしい歌声を堪能できました。
5曲目は「ゆき」(抜粋)を菊聖先生(三絃)、菊重先生(胡弓)といった、興味深い編成で演奏されました。菊会ならではですね(^o^)丿
全曲終了後各先生方への質問タイムもございました。一部ご紹介します。
Q菊聖先生は一日どのぐらいお稽古されのですか?
Aだいたい毎日1、2時間で、会などの前はやはり時間数も増えますね。
Qすべて暗譜ですか?
A特に古曲は一度すべてを自分の中に入れてから表現するものなので暗譜になりますね。
Q唄い方のコツは?
Aどうしても声が出ないと喉を絞りがちになりますが、なるべく喉を開くようにしましょう。
Q三絃について
Aさわり・・・さわりは非常に微妙でベストの状態(さわりも調絃も)だと、1の糸意外でも正確なつぼを押さえるときれいなさわりが聞こえます。それを基準にするとよいでしょう。
ばち・・・地唄の撥は大きいのでたたきつけるとぺちぺちといやの音がします。撥自身の重みで弾きましょう。親指の力加減も肝心です。
糸の太さ・・・15・15・14だそうです。
ではまた。 (^_^)/~-H.N-
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●2000年11月27日UP
第参回 浪花の芸術を菊会
1.『Niんja』(菊重精峰作曲)菊重先生(筝)・菊笠則仁子さん(筝)・菊笠穂見奈さん(三絃)
この曲は一章が出来た時に、わり爪のシャッシャッという所が忍者っぽいということでこのタイトルを付け、それから二章を考えられたそうです。
一章はドレミソラから成る明るい曲調。忍者の平和な一日といったところでしょうか。
二章はちょっと妖しげな曲調で忍者の戦いを表しています。忍者の素早い動きが目に浮かびます。この二章の妖しげでどことなく哀愁を帯びた曲調、実は一章のドレミソラを一音変えただけなんです。それだけで日本的な曲調がブルースっぽく変わっちゃうんですね。この和と洋とを併せ持つところがタイトルにローマ字とかなとが混じってる理由なんだそうです。
2.『風雲』(菊重精峰作曲)菊重先生(筝)・阪口夕山さん(尺八)
最近作られたまだ新しい曲で、ことわざの「風雲急を告げる」をイメージしたとのこと。はじめは古典的に作っていたのに転調とか色々やって、しまいには現代曲になってしまったそうです。
「関が原の合戦のイメージで」という阪口さん、五孔の尺八では難しいらしく七孔の尺八で吹かれます。
壮大な尺八のソロで一章が始まります。三絃が入り次第にテンポアップ。二章は逆に曲弾きのような三絃が続き、尺八が入って穏やかになります。伸びる尺八、まけじと三絃。ほとんど途切れなく三章に入ります。三絃・尺八ともにめまぐるしく駆け回ります。現代的の手法を用いながら古典的な雰囲気を持つスケールの大きな曲でした。
3.『新浮船』菊聖先生(三絃)・阪口さん(尺八)・菊聖祥惠理佐さん(筝)
この浪花の芸術を菊会も三度目になりますが今回初めての三曲合奏です。
まずは何と言っても地歌で定評のある菊聖先生、艶やかで伸びのあるお声が印象的でした。阪口さんは二曲目から続けての出演。七孔の尺八の孔をその場で二つ塞いでの演奏です。その体力はさすがですね。菊聖祥さんも的確な音でお二人に絡み合います。典雅なうえに、若手ならではの勢いを感じられた三曲合奏でした。
4.『三津山』菊聖先生(三絃)・中萩あす香さん(筝)
菊聖先生の大好きな曲で、先日のリサイタルでも演奏された30分ほどの大曲です。いつも暗譜で歌われる菊聖先生、リサイタルでは歌詞を間違える失敗をしてしまったのでリベンジしたいとのこと。
ただ長いだけでなく、曲の構成への深い理解や、幅広い音の表現力が必要とされる曲です。途中ころころとテンポが変わるもお二人ともピッタリと息の合った演奏で、立派にリベンジを果たされました。
最後にお客様からの熱烈なアンコールにより菊聖先生が『黒髪』を演奏されて今回の浪花の芸術を菊会は幕を閉じました。「このような小さな会場でマイクを通さずに直に良い音を、良い音を出すのは難しいのですが、ぜひ皆さんに味わっていただきたい。」と菊聖先生。次回は菊聖先生と菊重先生との共演で『良い音』ををぜひ聴きたいですね。 −S.Y−
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