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NO.02
(1)はじめに
最近、農業や林業の体験教室が「はやり」です。先日もあるところから依頼されて、 「落ち葉掃き」体験教室に参加しました。頼まれていったとはいうものの、極めて手持 ち無沙汰で困りました。打ち合わせもしないし、指示もありません。その上道具も足り ないといった具合で、どこまで関与したらよいのか雲をつかむような有り様でした。 教室を開く側に、目的も展望もないから、こういうことになってしまうのです。何の ためにこういう教室を開くのか、参加者に何を期待しているのか、また、依頼した講師 に何をして欲しいのか、といった基本的な事が分かっていないのです。 これでは、参加者が「ああ、面白かった。」で終わりです。参加者にとっては、熊手 を持って「風変わりな遊び」をして、「けんちん汁を食べ」て、農産物を土産にもらっ たということ以外には得るところは何もないでしょう。 農家にしてみれば、労力、資材、料理材料の出し損です。農事を一日休み、大きな出 費を強いられたにすぎないことになります。例えば、これが役所主催の行事ならば、役 所の人は休日出勤で平日以上の手当てがあるからよいけれど、農家にしたらこの上もな く不満なことになるでしょう。 |
(2)作業の前に
市民を集めて体験教室を開く場合、主催者側に、参加者が全くの素人であること、作
業には危険の潜むこと、農具など道具の持つ危険性などに対する考えが殆どない場合が
多いようです。もちろん、参加者側にも危険についての意識が全くありません。こうい
ったことを主催者はしっかりと認識していなければいけないでしょう。その危険を回避
するためには、主催者が細心の注意を払わなければならなりません。
思い付きで始めたような体験教室では、申し合わせたように、危険の存在を全く考慮
することのないままに行動をし始めます。参加者も珍しさや懐かしさのあまり、自分が
危険と背中合わせをしていることに気がつかないのです。何事もなく終わればよいので
すが万一事故ということになれば只事では済まされません。事故回避のためには、主催
者として自ずからしなければならぬことがいくつかあるのです。
落ち葉掃き程度のことでは、事故とは無縁だと考えているのかも知れませんが、それ
でもいくつかの危険を持ち合わせています。使う道具として、準備の為の刈り払い機や
下刈り鎌(あるいはなた鎌)、木の葉を掃く熊手などが用意されるのが普通です。時に
はチェ−ンソ−が用意されている事もあります。従って、森林内では、
(1)鎌、刈り払い機やチェ−ンソ−などの刃で怪我をする
(2)熊手の柄で人の顔を突く
(3)落枝・倒木で怪我をする
(4)枯れ木に寄りかかってそれが倒れて怪我をする
(5)切り株や蔓に躓き怪我をする
(6)人と競って腰を痛める
などの事故が考えられます。
そこで、多少時間のロスがあっても、次のような準備や注意を省略してはいけないの
です。
(ア)準備体操をする。
(イ)近接作業、上下作業の禁止を徹底する。
(ウ)道具の扱いについて以下のことを徹底する。
・道具の性質を解説する。
・道具の持つ危険性を解説する。
・道具の扱いかたを解説する。
・無理な扱いをしないこと
・不必要に力を入れないこと
・丁寧に大切に扱うこと
(エ)作業の基本を教える。
・同じ作業を1日続けてもなお余力のあるような力の配分が大切であること
・農業も林業も同じ作業を毎日しなければならないこと。
・むきにならないこと。
・周囲の者と競争をしないこと。参加者は無意識のうちに競争をしがちである。
・「焦らず、ゆっくり、しかし、休まず」作業を続けるのが能率を上げる秘訣
であること。
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(3)無目的では意味がない!
体験教室を行う場合、主催する側も参加する側も無目的ではいけません。例えば、役
所が何かを行わないと格好がつかないから行う、市民も面白そうだから参加してみよう
といったレベルでは、「風変わりな遊びに打ち興じた」以外の何ものでもないことにな
ってしまいます。
農業の体験教室ならば、主催者も参加者も次のようなことは最低限理解していなけれ
ばならないのです。
・その日の作業が、農作業の上でどのような意義を持っているのか。
・その作業の結果、あらたに何が期待できるのか。
・最終的には、生産物においてどのようなことが期待できるのか。
・自分たちのしていることが生産の過程のどの部分を担っているのか。
これは、面白かった、楽しかったで終わってしまったのでは、体験ではなく、単なる
「風変わりな遊び」に時間を費やしたに過ぎなくなってしまうからです。
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(4)学ぶべきことは何?
体験教室であるからには、必ず学ぶべき事柄があるはずです。特に若齢の人たちにと
っては、この点が最も大切なところです。例を挙げれば、
(1)田や畑を耕すことと肥料との結びつきを理解する。
(2)落ち葉を掃くのはなぜか。
・有機肥料である堆肥をつくるため。
では、堆肥を作るのになぜ木の葉でなくてはいけないのか。
木の葉なら何の木の葉でもよいのだろうか。
実は特定の木の葉が必要なのである。
特定の木は自然に生えてくるのか、それとも育てるのか。
育てるにはどうするのか。
そのためにはどんな仕事があるのか。
何年ぐらいかかるのか。
・害虫の駆除にも役立つ。
害虫ってどんな虫なのか。
その虫はなぜ害虫なのか。
虫の国では人間のことを害虫っていってるかもしれない。
・一つの種類の草木には必ず何種類かの虫が生活している。
虫が生きてゆくためには草木が豊かに茂っていなくてはならない。
豊かな森林を創るにはどうするのか。
里山と言われている雑木林なら、手入れをしなくてはならない。
手入れは誰がするのか。
山の持ち主のお百姓さんが手入れをする。
お百姓さんが間に合わないので、今日は私たちがお手伝いに来た
のである。
森を荒らせば、身の回りから虫がいなくなる。
森を荒らせば、森の中の草木の数は減ってしまう。
やがて、虫ばかりか、野鳥もウサギなどの動物もいなくなる。
・ 身の回りに、沢山の生き物に棲んでいてもらいたかったら、森を大切にし
なくてはいけないのだ。
大切にするということは、ほって置くことじゃなくて、しっかりと手入れ
をすることが必要なのだ。
・林床(林の中)の植生の萌芽を助ける。
分厚く落ち葉が積もっていたのでは、新しい草木の芽は地上になかなか顔
を出すことが出来ない。落ち葉を掃いてやると春には草木の芽がみんな揃
って出てくるのだ。
森の木の成長に必要な肥料がなくなってしう、って!大丈夫、掃き残
した草木の葉が腐って山の草木のために程よい肥料になってくれるの
だ。
・昔は秣(まぐさ)も刈り取った
・田んぼの中に肥料として入れる「刈り敷き」も刈りとった。
・薬草や山菜も採った。
(3)田畑をうなったり、畝を立てるのはなぜ?
うなう。
・土の固まりをほぐし、空気や水分を通りやすくする。
・土を上下に入れ替える。
・肥料をしっかりまぜる。
・肥料や有機物の分解を早める。
畝をたてる。
・水はけをよくする。
・太陽の光をまんべんなく作物に行き渡るようにする。
・後の作業(手入れ)が楽にできる。
・見た目にもきれいである。
・栽培量を把握しやすい。
(4)元肥(もとごい)の役割は?
堆肥は元肥に使うのに適している。
種子の上に施したり、下に施したりしているよ。
どうしてだろう。
芽を出し成長する際、野菜は大量の栄養分を必要とする。その成長を助ける為
に元肥を供給しておく。作物の特徴により上下を決める。
(5)作付けするものをどうしてきめてるの?
・必要な太陽エネルギ−が充分であるか。
・その作物に気象条件が合っているか。
・その作物に水文条件が合っているか。
・その作物に合った地勢であるか。
・その作物に土質が合っているから。
・その作物の経済効果が大きいから(高く売れるから)。
・その土地で出来る作物、出来ない作物がある。
・連作障害を避けて栽培する。
(6)種まきの時期(農事暦)
では、なぜ決まった時期に蒔くのだろう?
・季節季節の厳しい条件をクリアするためである。
・冬を越す作物 ....秋に蒔く
・夏を越す作物 ....春に蒔く
・春に蒔き夏収穫する作物....トマト、キウリ、ナスなど
・夏に蒔き秋から冬に収穫する作物....ダイコン、白菜、蕪など
行事や自然現象を目安にしている。
・ジャガイモ ....彼岸に蒔く
・エンドウ....トウカンヤのころ(秋に蒔く)
・ダイコン....七夕に蒔く
・苗代づくり....残雪がある形を作ったとき(種まき男:教科書)
(7)作付けするときどんなことを注意するのかな?
・キウリ、トマト、ナス、ジャガイモ、ゴボウ....連作をしない。
・サトイモ、サツマイモは連作しても大丈夫!
ちなみに、サトイモの仲間は毒な物が多い。
サトイモの仲間
サトイモ、コンヤク、テンナンショウ、マムシグサ、ウラシマソウ
ミズバショウなど。
食べられるのは、サトイモとコンニャクだけである。
・サトイモの花、サツマイモの花
なかなか咲いてくれない。サトイモの花はミズバショウに似ている。
サツマイモの花はアサガオに似ている。
(8)作物づくりの秘伝はあるの?
私の家の例
・秘伝もあるらしい。
私の父は、ナスの種を新聞に包み腹巻きの中に入れ体温で発芽させていた。
伯父は、別なことをしていたようだが、ナスの苗を上手にそだてていた。
その方法は生前に聞きそびれてしまった。
・その家の先祖の伝承は面白い?
私の家の先祖については村にこういうことわざが残っている。
畑にジシバリ田にビルモ(ヒルムシロのこと)大森織部なけりゃよい。
ジシバリもヒルムシロもともに退治が難しい草である。権力者も農民
にとっては厄介な代物なのである。
・古い家にはエピソ−ドもある。
大森織部
江戸時代のはじめ頃の人らしいが墓石に刻まれた文中に出るのみではっきり
わからない。
・農作業の開始や終了など節目節目に村民に為すべきことを命じたといわ
れている。例えば、
「今日より田植えぞ!」「今日でさなぶりぞ!」など
・岩の上にすわり采配をふるった。
・道を回るのが面倒と田植えの終わった植田の中を馬上のまま突っ切っ
た。
などと私の家には伝わっています。古い村にはこういう伝えがいくつかあるも
のです。
学ばなければならないことは、様々です。主催者側の器量次第で同じ名のイベントで
も中味はまるで違った催しになるのです。
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(5)学んだことはメモしておこう!
最後にひとこと。学んだことを忘れないためには、その日のことを整理しておくため
のノ−トをつくるとよいでしょう。そこには次のような事を書く習慣を身につけるよう
にします。
・参加年月日
・主催者
・場所
・作業の内容
・何が目的
・自分のしたこと
・教えられたこと
・感じたこと
・指導者の名前
・指導者のいったこと
・大切なこと
・役に立つこと
・感動したこと
・使った道具
・言い伝え
・昔の人の知恵
気負わず、簡単に記録しておくだけで、後で必ず役に立ちます。書くことで記
憶がしっかりもするし指導者の特性もわかることになります。
というわけで、体験教室にあたって、上に述べた程度の配慮は主催者側にも必
要だし、参加者側にも必要です。お互いに問題意識がなくては農家と市民の間に
なかなかパイプは通じないだろうと思います。
(98/03/06) (筆者:大森 孟(森林インストラクタ-&環境カウンセラ-))
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森林と環境の森づくり集団【里ネット】 |