病気対処術《メタボ編》2009/07/22
堀口和彦 著、光和堂 発行

メタボリックシンドローム

 なにか恐ろしい病気をイメージする名前ですが、日本語訳すると「代謝症候群」となり、脂肪分や糖分などの代謝異常から発症する病気の総称です。WHOが提言した病気の概念をもとに、米国コレステロール教育プログラムが二〇〇一年に診断基準を発表しました。これまでは動脈硬化の原因とし、総コレステロールと悪玉コレステロールが重視されてきましたが、これだけでは十分ではないことが近年明らかにされました。つまり、高脂血症だけを改善しても動脈硬化は防げないということです。そこで、それ以外に関与する原因を追究した結果、血圧・肥満・血糖が危険因子として浮上してきたのです。そしてさらにこれらの四つの因子がそろった場合は「死の四重奏」と呼ばれ、動脈硬化から心筋梗塞や脳梗塞などの心血管系疾患になる確率が三〇倍以上も高くなることが判明したのです。二つある人でも正常の人の一〇倍リスクが上がります。このように危険因子の重複から捉えた場合は、マルチプルリスクファクター症候群と呼び、メタボリックシンドロームと同義に扱われています。
日本肥満学会診断基準
血中
脂質
中性脂肪 150mg/dl以上
善玉コレステロール 40mg/dl未満
血圧 最高血圧 130mmHg以上
最低血圧 85oHg以上
血糖 空腹時 110mg/dl以上
 ウエスト周囲径が男性は85cm、
女性は90cm以上で要注意です
※3項目のうち2つ以上を有する場合を日本肥満学会などの8学会では、メタボリックシンドロームと定義しています。
 ここで注意しなければならないことは、異常な程度が軽度でも、複数の因子にまたがっていれば危険であることです。つまり、血圧が一四五‐九五で、血糖値が一二〇の人はいずれも基準値をやや上回る程度ですが、総コレステロールや中性脂肪が三〇〇以上あって他がすべて正常な人に比べると、数倍も動脈硬化になる危険があるのです。

メタボリックシンドロームと漢方
 メタボリックシンドロームは、代謝力の低下が原因で発症します。代謝力とは、食べ物や酸素など外部から取り入れるエネルギー源を、効率よく身体の運動エネルギーに変換する力です。食物を胃腸で消化吸収し、栄養素を全身の細胞に運び、老廃物を肝臓で代謝して腎臓で排泄する。さらに肺や皮膚で呼吸し、全身の細胞に酸素を運び、二酸化炭素を肺に戻し放出する。これらが代謝力です。この力によって、心臓を動かし血液を全身にめぐらし、内臓や脳を働かせ、筋肉を動かし、生命活動が営まれているのです。代謝力を活性化するために、漢方では発汗・排便・排尿を促進させる手法を採ります。原始的な発想かもしれませんが、現代医学による高脂血症薬や降圧剤を服用する前に是非お試し下さい。

 太る原因別体質チェック
 東洋医学では、まず太る原因をつきとめることから始めます。その上で、体型や体質をとらえ、各々の人に適した方法を選びます。
水太りタイプ
□体がブヨブヨしている
□小便が少ない
□むくむ
□体がだるい
□のどが渇く
□汗をよくかく。または、
なかなか汗をかかない。
脂肪太りタイプ
□甘いもの好きである
□アルコールが好き
□油ものや肉が好き
□便秘する
□タイコ腹
ホルモンの乱れによるタイプ
 □更年期・産後
 □子宮や卵巣の手術をした
 □生理不順

水太りタイプの人へ(ぽっちゃり)
 まず、水分をとりすぎてはいませんか? 水ブームの昨今、いくら体にいい水といえども、自分で代謝できる以上の水を飲めば、体に蓄積され、水太りにつながります。中高年以降からは、新陳代謝が低くなりますので、特に注意しましょう。

【漢方処方】
@足のむくみ・・・麻杏?甘湯
A汗っかき・・・防巳黄耆湯
B排尿促進・・・五苓散
       竜胆瀉肝湯

脂肪太りタイプの人へ(がっちり)
 便通はいいですか?
 一日に一回の通じは少なくともあるようにしましょう。また、食べ物の誘惑に弱いのもこのタイプの人です。
 おいしいものや大好きなものを食べたときの幸福感は、医学的に心身によいとは、言われています。しかしこの幸福感は、頻繁にあると、体によい作用は薄れてしまいます。ですから、おいしい物や大好きなものはなるべく我慢して、特別な時にだけ食べるようにしましょう。
【漢方処方】
@ のどが渇き、水分を多くとる…白虎加人参湯・五苓散
A 甘い物が好きで、間食が多い…越婢加朮湯
B 油ものや肉が好き…大柴胡湯・黄連解毒湯
C 便秘ぎみ…防風通聖散
D 宿便がたまっている…三黄瀉心湯

ホルモンの乱れタイプの人へ(女性)
 女性にとって、ホルモンのバランスは重要です。生理不順や出産・更年期によって、太ることがあります。また、子宮筋腫の手術のあとに太り始めることがあります。このような場合には、漢方薬の服用によって、ホルモンのバランスをとりもどすことを、おすすめします。
【漢方処方】
桂枝茯苓丸・桃核承気湯・通導散

ハリによるメタボ対策
[全身を対象にする場合]  先に分類したタイプにしたがい、それぞれの人にあったツボを選びます。新陳代謝を高めて、血行を促進し、ホルモンバランスを整えます。
[耳バリ]
 胃につながるツボにハリの刺激を伝え、食欲を抑えます。間食を我慢できない人に向いています。

運動療法
 脂肪を効率よく燃焼させるためには、有酸素運動が最もよいとされています。有酸素運動とは、体内に十分な酸素を取り込みながら、苦しくない程度で、ある程度の時間持続して行う運動です。ジョギングやサイクリング、水泳、縄跳びなどがこれに相当します。


病気対処術《メタボ編》2009/07/22
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