◆ 湿疹・皮膚炎
湿疹と皮膚炎は同義と考えてよいです。もとは体質的な素因により発症するものを
湿疹、外部からの刺激によって発するものを皮膚炎と呼びました。近年は細胞や遺伝
子レベルで、免疫システムの解明や皮膚の構造などが判明し、皮膚の病気を単純に分
類できないのが実状のようです。
この中に、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、脂漏性湿疹、ビダール苔癬、貨幣状
湿疹、主婦湿疹などが分類されます。いずれも皮膚表皮に炎症が起るのですが、その
原因と皮膚の状態は様々です。
◆ アトピー性皮膚炎
アトピーという言葉の語源は、ギリシャ語で「奇妙な」という意味のようです。現
在は決して珍しい病気ではありません。ただ、その原因が複合的で一つに断定できな
いところが、アトピー性皮膚炎の完治の難しいところです。免疫機構の視点から観た
アレルギー反応のタイプでも、T型アレルギー(IgEという免疫抗体の異常増加に
よるアレルギー反応)とW型アレルギー(Tリンパ球によるアレルギー反応)の両方
が複合的に発生しています。乳幼児から成年まで発症の幅が広く、食物アレルギーや
花粉症、アレルギー性鼻炎、喘息などと関連して発症することが多くあります。また、
引っ掻き傷や汗による皮膚炎患部への細菌感染を併発することもあります。
◆ 食物アレルギーと腸内細菌
乳幼児期のアトピーでは、食物アレルギーの関与が強く指摘されています。アレル
ギーを起すものは、卵や牛乳、大豆などタンパク質を含むものなら何でも反応する可
能性があります。生体にとって自分で作った(自己由来の)タンパク質以外は非自己
として抗原抗体反応を起します。輸血時に血液型を合せるのもそのためです。ただし、
食物中のタンパク質は消化酵素でアミノ酸に分解され、タンパク質のまま体内に取り
込まれることはほとんどありません。また、多少入ったとしても、あまり危険性のな
いものは免疫寛容という許容の制度があり、アレルギー反応を抑えるようになってい
ます。
ところが、乳幼児期には消化酵素の分泌が十分でなく、タンパク質を十分に分解で
きないこと多く、さらに免疫寛容の発達が未完成で、食物アレルギーに進展してしま
うのです。この免疫寛容は、少しずつ色々な食べ物を経験して獲得していき、さらに
腸内細菌によって誘導されることが知られています。このことから、乳幼児のアトピ
ー性皮膚炎では、食事摂取に注意しなければなりません。