光和堂通信 第25号2001年秋季号(Vol.7,No.1) 2001.10.10
[予防と早期治療のために]

 秋らしくなってきました。稲刈りが始まり、今年の収穫を祝う時節です。七月の猛 暑と火照りの影響はなかったでしょうか。田んぼのそばにアスファルトやコンクリー トが迫っているところでは、あまりの高温のため稲が焼けてしまうことがあると聞き ました。
 この時期は、指扇の駅を降りると、ほのかに籾殻を焼くあの独特のにおいを感じた ことを覚えています。特に風の無い夕暮れに。でも今は残念ながらありません。田ん ぼも減ったし、籾殻を焼くこともしなくなったのでしょうか。
 時間が地球の回転ではなく、人間の活動によって動いている現代、自然の中に季節 の移ろいを見出すとなぜかほっとします。移り変わる自然の中で、深呼吸をしたいも のです。

 米国での同時多発テロが世界を震撼させました。あのニュースの映像を見るたびに、 驚き怒り悲しみと強い感情が込み上げて、呼吸を忘れそうです。最近あまりに凶悪や 驚愕な事件や事故が多過ぎるように感じます。心も身体も緊張の連続です。そこで今 号では、まず心身ともにリラックスさせる呼吸法と、呼吸困難を引き起こす病気とし て喘息と慢性閉塞性肺疾患を取り上げます。

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 *深呼吸をしていますか?

 呼吸は体に酸素を取り入れ、二酸化炭素を出すという、単純な作業ですが、簡単の ようでその大切さを忘れがちです。そこで江戸時代の儒者貝原益軒が書いた「養生訓」 の中にある呼吸法を紹介します。益軒は「養生訓」にある健康法や病気の対処法を実 践し、八五歳という当時にしては大変な長寿を成し遂げました。

 *やっぱり腹式呼吸が大切!

 呼吸は、生命に欠くことのできないものです。普段無意識に行っていることですが、 ストレスや精神的な疲れが続くと、知らぬ間に浅い呼吸になってしまいます。貝原益 軒は「養生訓」で、呼吸の大切さと理想的な呼吸法を述べています。胸ではなくお腹 でする呼吸、いわゆる腹式呼吸です。腹式呼吸をすると、背筋が伸び胸がはって、横 隔膜が大きく動

き、肺にたくさんの空気が入ります。これを実践していけば、全身に酸素を多く含ん だよい血液がめぐり、筋肉の緊張や凝りがとれ、さらに自律神経の機能が向上し、内 臓の働きも良くなります。

「養生訓」による
 呼吸法 貝原益軒

 呼吸は人の鼻よりつねに出入る息也。呼は出る息也。内気をはく也。吸は入る息也。 外気をすう也。呼吸は人の生気也。呼吸なければ死す。
 常の呼吸のいきは、ゆるやかにして、深く丹田に入るべし。急なるべからず。
 臍(へそ)下三寸(約六p)を丹田と云う。腎間の動気ここにあり。・・・これ人身の 命根のある所也。養気の術つねに腰を正しくすえ、その気を丹田におさめあつめ、呼 吸をしずめてあらくせず、事にあたっては、胸中より微気をしばしば口に吐き出して、 胸中に気をあつめずして、丹田に気をあつむべし。このごとくすれば 気のぼらず、むねさわがずして身に力あり。
 鼻より外気を多く吸い入るべし。吸入ところの気、腹中に多くたまりたる とき、口中より少しずつしずかに吐き出すべし。
 これを行う時、身を正しく仰ぎ、足をのべふし、目をふさぎ、手をにぎりかため、 両足の間、さること五寸(約一〇p)、両肘と体との間も、相さることおのおの五寸 なるべし。一日一夜の間、一両度行うべし。久してしるしを見るべし。気を安和にし て行うべし。

 *酸素はタダたっぷり吸おう!

水も生命維持に欠くことのできないものですが、酸素はまだタダです。天然水や深層 水などと売られる水ブーム、次はおいしい空気が売られる時代が来るかもしれません。 今のうちにたっぷり吸っておきましょう。

 *呼吸器疾患

呼吸が十分にできない病気に、気管支炎や喘息、肺炎、肺気腫、さらに慢性閉塞性肺 疾患(COPD)などがあります。気管支炎や喘息は風邪やアレルギーが原因で起こる 身近な病気ですが、慢性化すると気道が腫れ狭くなり、呼吸困難を起こします。


漢方薬局  光和堂  鍼灸治療
【診療時間】火・木・日曜は午前部のみ
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    【月曜・祝日休診】

 *喘 息

 秋は喘息発作が起こりやすい季節です。朝晩の冷え込みと、季節の変わり目でアレ ルギー反応が起こりやすいからです。喘息は、風邪によって誘発されますが、アレル ギー体質が原因で起こる病気です。私たちの身体は、免疫機構によって細菌やウイル スなどの外敵から守られています。ところが、反応しなくていいものに反応したり、 過剰に反応し過ぎることがあります。これがアレルギーです。喘息の場合、気管でア レルギー反応が起こり、炎症し腫れて気道が狭くなってしまうのです。

 *アレルギーと自律神経

また、私たちの体の働きは自律神経によって調節されています。寝ていても、心臓が 休まず働き、食べると胃が動き消化するのも、自律神経が自動的に働いてくれるから です。気管は自律神経によって、リラックスして寛いだ状態になると、狭くなるよう に調節されています。ですから、夜寝ている時に喘息発作が起こりやすいのです。 しかし、発作を心配し常に身体を強ばらせ緊張していたのでは、横隔膜の動きが悪く なり、肺が閉がり、深呼吸ができません。そこで、お腹を使った腹式呼吸を意図的に 実践することで、自律神経に働きかけ気管を拡げながら、ゆったりとした大きな呼吸 ができるようになるのです。

 *慢性閉塞性肺疾患(COPD)

 慢性閉塞性肺疾患は、最近欧米から取り入れられた病名を日本語にしたもので、な じみの薄いものです。歩行や階段の昇降、長時間のおしゃべりで息切れや息苦しさを 感じ、さらに痰や咳をすることが多くなります。それが三ヵ月以上続くと危険信号で す。慢性気管支炎や喘息、肺気腫とも関係が深いもので、気管や肺胞が壊れ、肺の機 能が極端に低下します。四〇才以上の中高年で喫煙習慣のある人に起こりやすい病気 です。

 民間薬 その15
 『 杏仁 アンズ 』
日干しした種をよく
煎じます。
咳、喘息、呼吸困難に

 自分でできる 即効指圧 その25
  〜 呼吸困難 〜

息切れ  胸部で鎖骨の下にある気庫(きこ)と中府(ちゅうふ)を指圧します。押して痛み がなくなるまで指圧してください。次第に呼吸が楽になります。 喘鳴  背部で肩甲骨の間にある肺愈(はいゆ)と風門(ふうもん)を指圧します。夜間の 喘息発作にも有効です。

 *体質改善に東洋医学を!

 喘息を根本から治すには、アレルギー体質の改善と自律神経の働きをよくする必要 があります。体質改善には生活習慣が大切です。中でも食生活は要です。遺伝を設計 図に例えれば、食べ物は身体を作る材料です。設計図がよくても材料が悪ければ、よ い家はできません。その逆に、設計図が多少悪くてもよい材料を使えば、作り方次第 でよい家ができるものです。まさに、東洋医学でいう「医食同源」の発想に通じます。 この理念にもとづいて生活習慣の改善をお手伝いして参ります。

   《 あとがき 》
 今年もまたカレンダーが薄くなってきました。一二月に入りましたら、屠蘇散ご用 意致します。どうぞ御来店ください。先日、「漢方二一〇処方生薬解説」(株式会社 じほう)が二年越しで完成しました。専門家向けの本ですが、ご興味のある方は、一 度御覧になってください。

   《 求人のお知らせ 》
 光和堂では、スタッフを募集しております。東洋医学を通して健康に関わる仕事を したい方募ります。

 『 休診のお知らせ 』

11月17日(土)午後部
11月24日(土)
 (23日(祝)と連休します。)


光和堂通信 第25号2001年秋季号(Vol.7,No.1) 2001.10.10
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