【光和堂通信】第10号1998年冬季号(Vol.3,No.2)1998.01.01
[予防と早期治療のために]

  謹賀新年
健やかな一年でありますように心からお祈り申し上げます。

 正月二日に見る夢が初夢です。よい初夢を見るために、一枚刷りの宝船の絵を二 日の夜に枕の下に敷いて寝る風習があります。室町時代から行われていたらしく、 江戸時代には、元旦と二日に、
 「お宝お宝、今夜の初夜の初夢」
と言って、宝船売りが七福神が乗った宝船の絵を売り歩いていたそうです。

 正月が過ぎ二月になると寒さ本番です。今号は、寒さに弱い方に朗報です。寒さ や冷えは、風邪を引き起こすだけでなく、心臓病の発作や脳卒中、また女性では、 膀胱炎、低血圧、生理痛・生理不順、さらに不妊症の原因にもなります。

◆ 寒さ冷えに負けるな!
 ――低血圧・貧血・冷え症――

 漢方では、これらの病症を一つに捉えて、次の四つのタイプに原因を分けて治し ます。

1. 婦人科の働きの悪い人 ・・・・・・生理不順や生理痛を伴うことが多く、生理時や生 理後に貧血症状を起こし、下腹部痛、めまい、頭重感、顔面蒼白などの症状が現れ ます。 (対処法)生理痛や生理不順は病状です。体が発する注意信号です。我慢しないで、 しっかり治しましょう。漢方では、当帰芍薬散が良く効きます。

2. 胃腸虚弱な人 ・・・・・胃下垂症や胃腸過敏で冷えたり、精神的なストレスにより すぐに下痢するもの、顔は青白く、朝は起きにくく、疲れやすい人。 (対処法)消化の悪いものや冷たいものをさけ、温かく消化の良いものを摂りまし ょう。漢方では、六君子湯が胃腸の働きを助け、新陳代謝を高め、低血圧・貧血・ 冷えを改善します。

3. 血液成分が薄く、全体に気力不足の人 ・・・・・・再生不良性貧血や悪性貧血、白血 病など血液そのものに問題のあるもの。出血すると止まりにくく、紫斑になりやす く、また疲れ易く、発熱しやすいもの。 (対処法)場合によると、病院での治療も必要になりますが、漢方との併用をお勧 めします。十全大補湯は、血を補い、全身に気をめぐらし、だるさをとります。

4. 腎が弱く水滞がある人 ・・・・・・腎が弱り水分代謝が悪くなり、夜間排尿が多く、 常に腰から下腹部、下肢にかけての冷えを伴うもの。 (対処法)とにかく足を冷やさないように。漢方では、八味地黄丸が体の芯から温 めてくれます。

◆ 働く女性の敵
 ――膀胱炎――

 風邪と同様、寒さや冷え、さらに疲労が加わると膀胱炎が起こり易くなります。 また、接客などですぐにトイレに行けない状況もいけません。  膀胱炎は、構造上どうしても尿道が細菌などによって汚れやすい女性のほうが圧 倒的に多く見られます。頻繁に尿意をもよおしたり、排尿時に下腹部から尿道にか けて痛み、尿の出たあともスッキリしないで、尿が残っている感じがあります。ま た、尿が濁り、時には血尿となることもあります。  漢方では、水分代謝の調整を中心に行い、血尿など炎症の強い場合には、止血や 消炎の薬を配合します。
 ――養生法――
* 腰から下を冷やさない。 * トイレを我慢しない。 * 冷たい食べ物を控える。 * 水分の取り過ぎに注意。(※水分をたくさん取って小便を出す治療法は冷えの 強い人やむくみ易い人には向きません。) * もち米とギンナンは小便の出を悪くするので、控える。 * 血尿がある場合は、刺激物、香辛料、アルコールなどは控える。

☆ 膀胱炎に効くお茶
オオバコ・・・尿の濁り、排尿痛に。
カゴソウ・・・尿の出渋り、炎症に。
南蛮毛(トウモロコシの毛)・・・小水の出を良く

自分でできる即効指圧 その10
 膀胱炎・排尿痛

1. 膀胱炎 ……骨盤の中心にある仙骨には溝があります。ここにある膀胱兪(ぼう こうゆ)を親指で体の中心に向かってゆっくり指圧します。


2. 排尿痛 ……お臍の6〜7p下で恥骨の上にある中極(ちゅうきょく)を手のひら で温めるようにゆっくりマッサージします。この付近を冷やさないようにすると、 膀胱炎の予防にもなります。

◆ 東洋医学は女性の強い味方
 前回に続き女性の病気を漢方ではどのように捉え、どのように治療するのかを紹 介していきます。前回は子宮筋腫でした。今回は、不妊症についてです。  特に避妊していないのに二年以上妊娠しない場合を不妊症と呼んでいます。女性 に問題のあるケースとしては、ホルモン系統(卵巣・下垂体・副腎・甲状腺など) の異常や卵管が詰まったり、細くなっていることや、子宮に筋腫や奇形、発育不全 などがあることや、膣や子宮頚管に異常がある場合などがあります。一方、男性の 側の問題としては、精子が少ない、無精子症などが挙げられます。

◆ 不妊症は飽食の現代病?
 文明が進んだ現代社会で、不妊症は増えています。食べ物が豊富にあり、便利に なった生活で、十分に満たされた現代社会なのに、どうして不妊症が増えるのでし ょうか。貧困や飢えに苦しむ発展途上国では不妊症は極端に少なく、一人の女性が 多くの子を出産します。また、植物の世界でも、過度な栄養や暑さ寒さなど厳しい 環境がないと結実しにくい種があります。このことから、平和な現代社会は人類存 続の危機感が薄れ、人類の増殖力が落ちているのではないかと思えてきます。

◆ 特集 漢方で治す婦人病その3 ――不妊症――
 漢方では、不妊の原因は於血(おけつ)によると考えています。於血とは、体内 に蓄積された非生理的な汚れた血液のことで、生理の働きが不十分なことによって 起こります。月経は、血液を解毒する役割もあります。月経量が少なかったり、月 経血に塊が混じるのは、古い血が子宮内に溜まっていることを示し、血液の汚れを 示します。このような於血の状態では、受精しても着床しにくく、さらに10ヶ月間 胎児を養うことも容易ではありません。
民間薬 その2
夏枯草 かごそう
別名ウツボグサ(シソ科)
膀胱炎による尿の出渋りや 排尿痛に、細菌を洗い流す作用もあり。
 また、精神的なあせりも禁物です。基礎体温を気にし過ぎると、セックスがどう しても義務的でマンネリ化に陥り易く、楽しめなくなります。このような義務的な 状況に男性は弱いものです。 そのために、たまには雰囲気を変えたり、夫婦で旅行 へ行くのも良いことです。

◆ 妊娠への近道
 ――子宝五箇条――

1. 入浴で良く温まってから夫婦生活を。
2. 糖分・脂肪分取り過ぎは不妊の元。
3. 腹八分。少しの飢えを心掛け。
4. 基礎体温、気にし過ぎると男萎え。
5. 気分を変え、夫婦で旅行を。

   〈あとがき〉
 本年もよろしくお願いします。


【光和堂通信】第10号1998年冬季号(Vol.3,No.2)1998.01.01
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