光和堂通信 第 9号1997年秋季号(Vol.3,No.1) 1997.10.01

[予防と早期治療のために]


 夏の日の光りをたっぶり吸収して成長した稲穂 が、頭を垂れ始めました。新米も出初め、収穫の 秋です。今年の出来は、いかがでしょうか?
秋は、私たちの体にも、夏の成果が出るときで す。開放的な夏から、寒くなるこれからの季節へ 向かって、元気に夏をエンジョイした人も夏バテ で辛かった人も、今この秋に体調を見直しておき ましよう。
朝晩の冷え込みが強くなり、風邪を引き易い気 候です。今号でも、病気をできるだけ早くしかも、 適確に治すための情報を紹介したいと思います。

    ぢ 痔

秋は、肺や気管の呼吸器と肛門などの粘膜に卜 ラブルの起こり易い季節です。
夏は暑さで汗をかき毛穴が開き、皮膚呼吸や老 廃物、水分の代謝が活発です。秋になり、肌でヒ ンヤリとした空気を感じると毛穴が閉じるように、 皮膚の呼吸や代謝もその働きを緩めていきます。 すると、その分の負担が気管や鼻にかかり、喘息 になったり、皮膚に隣接する粘膜は充血やうっ血 し易くなります。
肛門付近の粘膜は構造上、特にうっ血し易く、 痔の原因となります。痔は、一般に痔核(いぼ 痔)・裂虹(きれ痔)・痔瘻の三種に分類されま す。

 痔核(いぼ痔)

いぼ痔は、排便時に強く息むことによる腹圧 や重力で、肛門部の静脈がうっ血して、いぼの ように腫れて起ります。それを大便が刺激して 出血を起こしますが、痛みはありません。しか し、症状が進むと・痔核が肛門外に出るように なります。軽いものは排便が終われば自然に元 に戻りますが、慢性化してくると容易に戻らず、 悪化して痛みを起こします。

まず、便通をスムーズに。そし て、肛門部でうっ血しないよう 血液循環の良い体質に改善を!

 養生法
・便秘にならないように気を付ける。
・香辛料とアルコールを控える。
・患部を常に清潔に。
・血液循環を良くするため手足を冷
 やさない。
・長時間にわたる立ち仕事や腰痛のある人は、
 肛門部がうっ血し易いので早めに治療を!

 裂肛(切れ痔)
きれ痔は、一般に硬便の通過により、肛門部
の粘膜に傷ができ起こるものです。出血は少
ないが痛みは強い。慢性化すると炎症が起き
潰瘍となる場合もあります。
 便秘は禁物!患部を清潔にし、
軟膏を上手に使おう。

 痔瘻・肛門周囲膿瘍
痔瘻は、直腸と虹門の間のくぼみにある粘液
分泌腺に感染が起こり、炎症さらには、腫れ
痛み、膿(うみ)が出るようになります。
まず、病院(肛門科)へ。それでも
膿(うみ)が続くようなら漢方を。

 痔に効く漢方薬
・乙字湯…出血を抑え、痛みを止め、便通を
 良くする。いぼ痔、きれ痔に。
・弓帰膠文湯…冷え症で血行が悪い人に。肛門部
 のうっ血を取り、出血を止める。
・排膿散…慢性化して膿が止まらない。
・紫雲膏…いぼ痔、きれ痔に良く効く軟膏。

秋は喘息に注意!
東洋医学の基礎的な理論を示す五行説では、
「秋は肺のつかさどりとなり。」と説いてい
ます。つまり、自然界の法則では、秋になる
と、肺を中心に影響を及ぼすと言っています。
先に述べましたように、秋口に入り、朝晩が
冷えてくると、表皮が閉じ、夏に活発だった
皮膚の新陳代謝が下がり、その分の負担が気
管や肺に直接かかるようになります。ですか
ら、肺や気管の弱い人は注意しなければなり
ません。背中の乾布摩擦は肺や気管を丈夫に
し、風邪の予防にもなります
。とにかく、風
邪を引かないように気をつけてね。


   自分でできる
 即効指圧 その9 咳・喘息

 胸部で鎖骨下にある気庫 (きこ)と中府(ちゅうふ) を揉みほぐすように指圧しま す。最初は痛いと思いますが 、ここをほぐしておくと呼吸 が楽にないます。
喘息  うつ伏せか前かがみに なり、肩甲骨の間のある風門 (ふうもん)肺兪(はいゆ) 魄戸(はっこ)を強く指圧し ます。発作時にも有効です。 家族にやってもらうと良いで しょう。

東洋医学は女性の強い味方
 前回に続き女性の病気を漢方ではどのように捉 え、どのように治療するのかを紹介していきます。 前回は、更年期障害について、決して更年期は女 性の敵ではなく、ある意味では体質を改善するチャ ンスであると、述べました。特に東洋医学では、 心と体を一つと見て切り離しません。この発想も 更年期特有の不定愁訴の治療に有効です。

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特集
 漢方で治す締人病
  子営筋腫 その2

 漢方では、子宮筋腫は子宮が長い間古い血に晒 されていたことによると考えています。月経血に 血の塊が混じるのは、古い血が、子宮内に溜まっ ていたことを示します。子宮筋腫は特に症状がな いことが多いので見つけにくいものです。しかし、 このような月経血から、筋腫のでき易い体質を知 ることができます。

 筋腫は、癌とは違い怖いものではありません。
なぜなら、増殖が遅いことと転移しないことです。
筋腫を構成する細胞の性質もガン細胞や肉腫細胞
より正常細胞に近いと言われています。また、筋
腫がガンに変わる確率は低いもので、正常の細胞
がガン化する確率とあまり変わらないとの報告も
あります。
 さて、治療法ですが、漢方で
は、子宮に溜まった古い血を
取り去るため、まず全身の血
液の循環を良くし浄化するこ
とを考えます。さらに、鍼灸
や指圧で、血液循環を阻害し
ている要因である凝りやはり
を取り除きます。特に、筋腫
では骨盤付近で血液循環が
阻害されている場合が多く、
骨盤内でうっ血を引き起こし、子宮内に古い血をと
どめる原因となります。

民間薬 その1
彼岸花
まんじゆしやげ
 ガンによる腹水や全身の
むくみにこの球根を磨り潰
し足の裏に貼る。
 内服はしないこと。

 治療の目安は、筋腫の大きさにして手拳以下な
ら、是非とも漢方をお勧めします。縮小や消失す
ることも少なくなく、随伴症状である過多月経や
下腹部痛、不正出血、貧血などはかなり改善され
ます。それ以上大きく、不正出血が多く手術を選
択する場合でも、漢方や鍼灸の治療をお勧めしま
す。なぜなら、手術をして悪いところを切っても
根本的な解決になっていないことが多いからです。
そのような場合は、術後にのぼせや冷え、肩こり
などさまざまな症状が現れ易くなります。
                 (つづく)
 <お知らせ>
「女性のためのセミナー」の予定
10月2日(木)午前10時〜12時「女性ホルモンと
更年期障書」/10月16日(木)「日本の香り香道」
お問い合わせは事務局 048-624-6013 まで。
 《あとがき》
パプア・ニューギニアの薬草と伝統医に関する本
を時間に追われながら執筆しています。ではまた。


光和堂通信 第 9号1997年秋季号(Vol.3,No.1) 1997.10.01
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