杉本京太
すぎもと きょうた
SUGIMOTO Kyota
 
1882-1972
岡山県に生まれる。
邦文タイプライターの発明者。

経歴と業績
 1900年、大阪市電話技術者養成所を終了後、いくつかの仕事で種々の技術を習得 し、1914年に上京して、邦文タイプライターの発明に没頭、1915年試作機を完成、 同年に得た最初の邦文タイプライターに関する特許である「特許第27877号タイプラ イター」は、その後の邦文タイプライターの基礎となる画期的な発明であり、1985年 工業所有権(特許)制度百周年記念に「日本の偉大なる発明者・10人」に選ばれた 。
 特許のタイプライターの完成をもって、わが国最初の邦字タイプライター製造会社 設立に関与し、取締役技師長に就任する。邦文タイプライターの完成は、公文書の男 性による毛筆清書に代わる女性のタイピストという新しい専門職を生み出した。
 邦文書類作成事務の能率化に大きく貢献したことにより、1953年には藍綬褒章を、 1965年には勲四等旭日小授章を受けた。

(写真:杉本一正氏提供)




主要な業績の説明
 生涯の間、発明家であったが、主要な発明としては、「特許第27877号タイプライ ター」と「特許第34521号活字鋳造装置(モノタイプ)」である。邦文タイプライタ ーの開発に当たって、従来の機構にとらわれず、和文の性質を検討して、文字が角形 に近いことに着目して研究を進めた結果、多数の活字を収容した字庫と前後左右に 摺動する一組の墨付部、印字部、紙筒部を備えて、任意の活字を印字するようにし た、まったく斬新で簡単な機構で製造も容易であり、少し練習すればだれでも正確に 印字できる邦文タイプライターを完成した。
(左の図:特許第27877号タイプライターの第一図。右の図:同、第三図)




エピソード
 杉本京太の邦文タイプライターの発明には、公文書のタイプ印字化と能率向上以外 に、自身の悪筆対策に遠因があったようだとの説や、アジアの漢字文化の機械処理に 興味があったとの説もある。

 若い頃、関係のあった活版印刷が、邦文タイプライターの開発に役立っているが、 のちのモノタイプの一連の発明は活版印刷業の機械化を意図したものであった。

 先発明を特許公報で分析し、自己の開発に役立てたり、取得特許を発表して新しい 会社を興したり、特許を知的財産権として運用するなど、特許制度を利用した新しい 型の技術者・発明家の先駆であった。

 一時期、発明研究所をもち和製エジソンと称されたほど多岐にわたる発明を晩年ま で続けた。最晩年にはカラー映画に関する特許を取得している。

 子息たちもタイプライターを発展させたり、関連分野の技術者であった。


著作、資料
●資料
「邦文印字機の発明」『東京朝日新聞』1915年10月2日付
小倉幸義「実業家としての杉本京太」『経営論集 第3号』亜細亜大学(1968年)
『日本タイプライター株式会社 社史』(1977年)
『日本の偉大なる発明者』特許庁・工業所有権制度百周年記念行事委員会(1985年)
(川上顕治郎)