堀口和彦 著、光和堂 発行 腕を挙げたり、後ろに回したりすると、肩に鋭い痛みが走りませんか? このような痛みが、慢性的に続くようなら、五十肩の可能性が高いです。五〇代で起こることが多いので、五十肩と呼ばれていますが、六〇代の方でも好発します。正式には肩関節周囲炎といい、肩周辺の筋肉や滑膜、靭帯や腱などが炎症を起こし、さらに神経線維も巻き込む疾患です。 第一段階: 肩関節の潤滑油不足 運動不足や血行不良、慢性的な肩こりは、肩関節の潤滑油を減らし、加齢によりさらに不足させます。この時点では肩を回すとゴリゴリ音がし、引っかかりを感じてスムーズに動きません。「何だか最近肩の回りが悪いなあ」と感じる初期レベルです。この時点での改善がベストです。五○才を過ぎたら、肩や腕を動かして回り具合を日常的にチェックしましょう。 第二段階: 鼻のど口腔内の炎症が肩関節に延焼! 肩関節の潤滑油不足状態が続き、歯肉炎や歯槽膿漏など口腔内の炎症、または風邪やアレルギーによる扁桃腺炎・鼻炎など咽喉頭や頚部の炎症が慢性的に持続すると、五十肩の症状は一気に加速され悪化します。鼻のど口腔内の炎症が腋窩リンパへ拡がり、ちょうど火事の延焼のように肩へ飛び火して、肩関節の炎症が助長されるのです。それによって肩腕の挙上や回転などの動作による痛みが激化します。「歯肉炎で歯医者さんに通っているうちに、肩まで痛くなってきた。」「風邪が長引き、治った頃に肩の痛みが強くなった。」などと訴える方が多くいます。 第三段階: 神経線維を巻き込む リンパ節からの飛び火により肩関節の炎症は激しくなり、それが持続すると肩周辺を通過する神経線維までも巻き込みます。この状態では、肩や腕を動かさなくても痛みを発し、寝ている時にもジンジンと痛み、安眠を妨げる程になります。これでは、睡眠不足から疲労が蓄積し、筋肉の緊張や血行不良がさらに進行します。精神的にも過敏になり、痛みがさらに痛みを呼ぶ「痛みの悪循環」に陥ります。これが五十肩の最悪の事態です。
治療のポイント@炎症を鎮める 肩関節周囲の炎症を先ず鎮めなければなりません。痛みがあまり強くない時は、温めたり肩を動かして血行を良くし、新鮮な血液を送り込んで、炎症を鎮めることも可能です。しかし、痛みが強い時は、逆に安静にして適度に冷やすことです。また、肩の炎症を助長したのど鼻や口腔内に原因がある場合は、それらの消炎も不可欠です。鍼は炎症を抑え、お灸は血行を促進する作用があります。この2つの作用を上手に使い分けて肩周囲の炎症を鎮めます。また漢方では、葛根湯や二朮湯を使います。 |
右の対処法にあるBのレベル(腕や肩を動かすと痛い)の五十肩では、完治まで一ヶ月から半年ぐらいかかります。Cのレベル(動かさなくても痛い)では、三ヵ月から一年ぐらいかかります。痛みの激しい時期は一ヶ月ぐらいですが、完治には時間を要するのが五十肩です。やはり、早く見つけて早く治すことを、心掛けましょう。 発行所:光和堂薬局・鍼灸治療院・通所介護 〒331ー0073 さいたま市西区指扇領別所 326-1 TEL:048-625-6848 FAX:048-624-1663 http://www2r.biglobe.ne.jp/~kowado/ |