堀口和彦 著、光和堂 発行 ◆ 骨変性のない膝関節炎 骨変性がまだ起こっていない膝関節炎は、関節周辺部の炎症です。膝蓋靭帯、十字靭帯、副側靭帯 や筋腱が、過度な運動や運動不足時の急な運動、あるいはリウマチなど免疫学的な病気によって炎症 を生じ、痛みや腫れを起こします。一般に膝関節症の初期の段階であり、六〇歳代に多く的確な治療 をすれば治ります。しかし、この段階で原因をきちんと認識して改善しないと、再発や悪化を引き起 こし軟骨や骨の変性に進行します。 ◆ 膝水腫と滑液包炎
膝に水が溜まり腫脹した状態です。膝水腫では、関節内の滑膜で被われた関節腔に関節液が余分に
溜まります。この関節液は、動きをスムーズにする潤滑油と軟骨を養う大切な役割を担っているので
すが、使い過ぎやホルモンや免疫の異常によって、大量に分泌されるのです。更年期ごろの五〇歳代
女性に多いようです。 ◆ 膝の声を聞く 関節の腫れは、生体の防御反応の現れです。関節面にある軟骨や靭帯を衝撃から守るために一生懸 命働いた結果が炎症や腫れなのです。まず膝を休め、いたわりましょう。患部の熱感が強い場合は冷 やします。痛風やリウマチなど血液やリンパに起因する場合も同様です。そして熱感が引いたら、徐 々に血液やリンパの流れを促進させて、患部の炎症と腫れを取り除いていきます。腫れと痛みが強い 時期には、火に油を注がないように無理しないことです。
◆ 膝の構造と姿勢 太ももの骨は人体で最も太く、一番荷重がかかります。膝はその骨を脛の骨につなぎ留め、人間の 二足歩行を可能にしています。この二つの重要な骨を連結させ、しかも衝撃を緩和しながら、それら の骨が巧みに動く役割を担っています。 |
その骨のつなぎ方は、前後の十字靭帯と左右の内側と外側副側靭帯の計四本の丈夫な靭帯で支えら
れています。そして太もも前面の大腿四頭筋と後面の大腿二頭筋などの伸縮によって膝を屈伸します。
膝を痛める原因は、これら靭帯や筋肉の引き具合が乱れ、特定な方向にばかり負荷がかかることによ
るのです。 例えばO脚の場合、内側副側靭帯の張りが強く、外側副側靭帯の張りが弱い状態です。これでは関 節面の内側に体重が強くかかり、内側副側靭帯が炎症を起こし、次第に内側の関節面を傷つけてしま うのです。 また、高齢者に特有の腰曲がりもO脚の原因になります。腰を曲げて前かがみの姿勢で歩行すると、 自然に膝が開いて しまいます。これによって膝の内側に負担が大きくかかり、次第に膝痛を起こし、変形性膝関節症に 至ってしまうのです。 ◆ 変形性膝関節症 膝関節炎が慢性化して、靭帯が傷み弛んでくると、関節面での軟骨の摩擦や衝撃が大きくなります。 この状態が数年続くと、徐々に軟骨が磨り減り、さらに骨膜から骨まで減っていきます。膝の屈伸時 にゴリゴリと音がして、歩行や階段の昇り降りは至難です。この状態に至ると、関節腔にヒアルロン 酸を注射しても定着しづらく、膝の軟骨は再生し難くなります。完治は無理で、何とか現状を維持し さらに悪化させないようにすることで精一杯です。 ◆ 膝関節症の鍼灸治療 鍼は、膝関節周囲の靭帯や筋腱の炎症を取る作用に優れています。さらに靭帯と筋腱の張り具合を 調整し、膝への負荷や偏りを減らします。注射針より細く刺入時の痛みは殆んどありません。是非お 試しください。さらにお灸と組み合わせることによって、血液とリンパ液の流れを促進し、腫れやむ くみを除去します。しかし、腫れと炎症が強く、熱感がある時はお灸を控えます。また、腰と骨盤、 股関節、太ももの筋肉を調整し、柔軟性を高めて、膝への衝撃を吸収しやすい姿勢と身体を作ります。 ◎ 自分でできる即効指圧 膝関節症
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