第49回日本東洋医学会学術総会1998年5月24日 ワークショップ「東洋医学と情報処理」

世界の伝統医学関連データベースの国際協調への提言
 −CAMed Digital Library Project について−

東京大学大学院医学系研究科     
保健社会学教室 客員研究員 堀口和彦

[要旨]
本年2月にインドのBangaloreで行われたInternational Conference on Medicinal Plantsにおいて、米国 Columbia大学(New York)のRosenthal Centerにより、世界の伝統医学関連データベースの国際協調に 基づく共同研究プロジェクトが提言され、CAMed(Complementary and Alternative Medicine)Digital Libraryの試作版が発表された。今回このプロジエクトについて簡単に報告し、その試作版の一部を紹介す る。

[はじめに]
米国でのComplementary and Altemative Medicine(以下CAMedと略す)の社会的な関心の高まりはすで に日本にも紹介されているが、その高まりに対応しColumbia大学は積極的にそれらの研究や教育に取り組 んでいる。その中心的な役割を担うRosenthal Centerは、CAMedの国際的な情報発信者として、情報分野 の研究に特に力を入れている。

[各国からの参加]
Rosenthal Centerでは、インターネツト上にWeb site(http://cpmcnet.columbia.edu/dept/rosenthal/) を持ち、すでに各国のCAMedや伝統医学データベースを紹介しており、各データベースにリンクしてい る。そこで紹介されている代表的な各国のデータベースの関係者が、今回の会議に参加した。イギリスより 英国図書館(British Library)のAMED(Allied and Alternative Medicine)、中国より中医薬信息研究所の TCMLARS(Traditional Chinese Medicine Literature Analysis and Retrival System)、インドより Foundation for Revitalisation of Local Health TraditionsのINMEDPAN(Indian Medicinal Plants National Network of distributed databases)、韓国よりソウル大学天然物科学研究所のTradiMed (Traditional Oriental Medicine Database)、フランスよりMontpellir大学医学部のACUBASE (Bibliographic acupuncture data base)、米国よりIllinois大学(Chicago)のNAPRALERT (NAtural PRoduct ALERT)、が参加し各データベースを紹介した。日本からは私が参加し、科学技術振興事業団 (JST)の小野寺夏生氏らと東京医科歯科大学難治疾患研究所・情報医学研究部門の津谷喜一郎氏の協カのも とに準備を進め、JMEDICINEとJICSTーEを紹介した。

[CAMed Digital Library Prject]
Rosenthal CenterがKent州立大学図書情報学部と共同で開発したCAMed Digital Libraryの試作版が発表 された。伝統医学関連の国際的な情報発信源として、用語の統制や標準化を念頭に置きながら、検索可能な つぎのような情報を堤供することを計画している。病名や治療法による各情報の検索、学術論文検索、用語 解説、治療術(例えばハリ)や治療薬(例えば生薬)の紹介、教育や研究プロジエクト等の情報、診断法や 治療理論紹介、法律に関する情報、各療法紹介、インターネット上の検索とアクセス。以上のような情報 は、医師、研究者、患者、一般市民へ向けてと幅広く対応している。

[今後の展望]
インドの会議では、以下の点が今後の課題として各国の参加者の討議で指摘された。(1)情報公開につ いての問題(専門家と一般向けの情報の分離と限定)。(2)用語の問題(シソーラス、用語標準化、使用 文字など)。(3)情報の所有権に関する問題。今後多くの議論が予想されるが、長期的な視野に立って、 CAMedや伝統医学の発展のため国内並びに国際的な協力が望まれる。