=========================================================================== 【光和堂通信】テキスト版 2000/12/06 Vol.006        予防と早期治療のために =========================================================================== ■目次  ● お知らせ、トピックス(ホームページの更新情報)  ● 【光和堂HP】漢方から観るハーブ・スパイスの生理活性「その1」  ● お問い合わせ、関連リンク ----------------------------------------------------------- ● お知らせ、トピックス(ホームページの更新情報) ----------------------------------------------------------- ★早いもので、もうすぐ屠蘇散の時期です。12月よりお配りしております。     どうぞ年始の祝杯にお使いください。 ★11月12日(日)から15日(水)まで韓国での国際会議に出席しました     (2000.11.15改) ★10月19日(木)午後2時より第3回「健康セミナー」開催(2000.10.13新) ★第21号2000年秋季号(Vol.6,No.1) (2000.10.13新)   五十肩/指圧21:肩前面・肩後面/痛風 http://www2r.biglobe.ne.jp/~kowado/v2/mag21.htm ★9月11日(月)WHOのシンポジューム(淡路夢舞台国際会議場)へ行って きました。(2000.10.13改) http://www2r.biglobe.ne.jp/~kowado/v2/who2000.htm ★淡路花博のスナップ(2000.10.13新) http://www2r.biglobe.ne.jp/~kowado/v2/awa_snp.htm ★【光和堂BBS】(掲示板)を開設しました(2000.9.11) http://bbs4.otd.co.jp/kowado/bbs_tree ★「ネットと健康」54%が利用(米国)(2000.8.24改) 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http://www2r.biglobe.ne.jp/~kowado/v2/book.htm ★「漢方から観るハーブ・スパイスの生理活性」  堀口和彦、他3名と共著  月刊フードケミカル、1994.12、P63-70  特集2 ハーブ・スパイスの機能性  通常ハーブ・スパイスとして店頭で販売されているものでも漢方と共通するものが ある。単なる調味料や香辛料としてではなく、健康法としての利用も考えられ、その 効果は組み合わせによって増強可能である。 --------------------------------------------------------------- 「その1」  ◆ 総 論  ◆ 1.シナモン(力シア,二ッキ)  ◆ 2.シ ソ  ◆ 3.ガーリック  ◆ 4.ファガラ(ジャバニーズ・ペッバー)  ◆ 5.マスタード 「その2」 (次回予定)  ◆ 6.クローブ  ◆ 7.ナツメグ  ◆ 8.ジンジャー  ◆ 9.フェンネル  ◆ 10.スターアニス  ◆ 11.ペパーミント  ◆ まとめ    ☆      ☆      ☆ 漢方から観るハーブ・スパイスの生理活性 古尾谷不ニ*,堀口和彦**,小松 一**,根本幸夫** Fuji Furuoya, Kazuhiko Horiguchi, Hajime Komatsu, Yukio Nemoto              *フジ・フード研究所 **総合漢方研究会 「その1」 ◆ 総 論  人類がハーブ・スパイスを使用した歴史は古く,5万年以上前にさかのぽる原始 狩猟時代といわれる。狩猟時代には,食糧としての獣肉の腐敗臭のマスキングや保 存のためにハーブ・スパイスが利用されていたと考えられる。また,古代オリエン ト時代より,芳香性植物やその精油成分は薬用として用いられてきた。  中国では,後漢(22〜250年)の時代に,中国最古の薬物書『神農本草経』が成 立した。それには365種の薬物が記載されており,使用目的に応じて上品薬・中品 薬・下品薬の3種類に分類されている。この中にもすでに,いくつかのハーブ・ス パイスが登場している。このうち上品薬は120種で,長年にわたって服用しても害 がなく,不老長寿,元気増進を日的とするものが中心となっている。その中には, 桂皮(シナモン)や陳皮(ミカンの皮)が収載されている。中品薬は無毒と有害の ものがあり,病気予防や体力回復を目的とするもので,乾姜(ジンジャー)が取り 上げられている。そして,下品薬は多毒とし,久服してりまならないとされている が,寒熱の邪気を除き,病を癒す力を持っている。そこには山椒(ファガラ)が載 っている。  その後,多くの本草書(薬物書)が編纂され,明の時代(1578年)の『本草網目』 をもって,その集大成をなした。これには1,898種におよぶ薬物が収載されており, 各薬物の名称をはじめとして,生産地・採集法・製法・性能・効能主治・用法な どが記してある。現在でも多くの漢方家が参考にし,利用している。この中には, かなりのハープ,スペィスが収載されており,ハーブ・スパィスの漢方的用法を知 る上で最も重要な書物である。そこで,漢方における薬物の性質のとらえ方につい て述べてみる。  まず,味覚で分類する方法がある。酸っぱい,苦い,甘い,辛い,鹸いの5つに 分類する。これを五味と呼び,その5つはそれぞれ次のような作用を有している。 すなわち,酸は収軟作用,苦は消炎・結集作用,甘は補力・緩和作用,辛は発散・ 発汗作用,鹸は瀉下・軟化作用となっている。  また,性質・機能から分類すると,寒(熱症の激しいときに用いる)・熱(冷え の激しいときに用いる)・温(温めるときに用いる)・涼(清熱するときに用いる)・ 平(変化なく中性なもの)となる。これを五性という。  漢方では,各生薬の性質をこれらの五味・五性で表現し,複雑な生薬の機能を単 純化し,理解しやすく,使いやすくしている。この観点からすると,ハーブは一般 に涼のものが多く,スパイスは一般に辛温あるいは辛熱のものが多い。  ハーブ・スパイスの中には,医薬品として扱われているものも多い。現在,日本 ではウィキョウ(フェンネル),ガジュツ(ゼドアリー),ケイヒ(シナモン), サンショウ(ファガラ),シュクシャ(アモムム),ショウキョウ(ジンジャー), ソヨウ(シソ),トウガラシ(チリ),チョウジ(クローブ),トウヒ(オレン ジピール),ハッカ(ミント)など約30種のハーブ・スパイスが,その薬としての 有用性から,日本薬局方に収載されており,医薬品として,あるいは漢方薬の調剤 原料として利用されている。さて,ここでハーブ・スバイスの定義について述べる。  ハーブは一般に,芳香性で,香料・薬材・園芸材・衣料材・染料材などに利用さ れている植物を総称していう。スパイスは,一般に芳香性刺激性で,調味料として 賦香作用・呈味作用・着色作用・矯臭または脱臭作用などを持った植物を総称して いう。これらハーブ・スパイスは,一概にハーブ,スパイスとわりきれるものでは なく,その両面で利用されているものもある。またミックススパイスや七味とうが らし,カレー粉などは数種類混合して,その味や香りを引き出すようにしたもので ある。一方,漢方では,薬効のある植物・動物・鉱物を総称して漢方薬と呼ぶ。そ れゆえ,薬効のあるハーブ・スパイスは,漢方薬としても利用される。  漢方での生薬の使い方は,具体的な病状の需要に基づいて,用薬の法則にしたが い,薬物を慎重に選び組み合わせて用い,薬物の効能を十分に発揮させ,期待通り の治療効果を得るわけである。これを薬物の協力作用という。  古人は,長期にわたる臨床医療を通して,選薬配合に関するきわめて豊富な経験 をつみ重ねてきた結果,その配合による規則性をも見い出している。「用薬の妙は 加減にしくはなく,用薬の難もまた加減にしくはなし」というように,用いる薬物 を加減することの難かしさは,とりわけ配合する薬物の選択にある。よい処方とい うものは,単に薬効が強いというだけではなく,病状によく適し,厳粛な配合の法 則にのっとり,運用の主次をはっきりさせたものである。  例えぱ,後漢の時代に張仲景によって書かれた『傷寒論』中,まず最初に登場す る桂枝湯は,桂枝(シナモン)を筆頭に,生姜(ジンジャー),大棗(ジュジュべ), 甘草(天然甘味料),芍薬(薬用部分は根)の5種類が配合された処方である。 このうち,薬といえるのは芍薬くらいのもので,あとはすべてスパイス・ハーブ・ 食材として用いられているものばかりである。さらに,この桂枝湯のシナモンを増 量すると,桂枝加桂湯といい,奔豚病(発作性の神経性心悸亢進や下腹から気の衝 き上がってくる神経症の激しいもの)に用いられるし,芍薬を増量すると,桂枝加 芍薬湯といい,腹筋が拘攣して腹痛する者に用いられる。トリカブトの根を加える と鎮痛作用によるリウマチ・神経痛に応用される桂枝加附子湯になるし,牡蛎の殻 を加えると精神的過労や不眠などに用いられる桂枝加竜骨牡蛎湯という処方ができ る。  また,めまい,難聴,飛蚊症などに使われる苓桂朮甘湯という処方では,その中 の桂枝一味を乾姜(生姜を乾燥させたもの)にかえただけで,その方意は大きく変 化し,腰から下の冷え,腰痛,夜尿症などに用いられる苓姜朮甘湯という処方に なる。このように漢方では,配合する薬物の選択によって,薬能を転換したり,薬 効を増強したりして各生薬のもつ働きを存分に発揮している。  そこで,今回よく使われるスパイス・ハ一ブを調味料・香辛料としてではなく, 漢方の立場から,その薬効,配合などについて紹介ずる。  ◆ 1.シナモン(力シア,二ッキ)  シナモンは,クスノキ科のシナニッケイ(Cinnamomum cassia)の樹皮を乾燥し たもので,総論でも触れたように漠方薬にとっては欠くことのできない重要なスパ イスである。  漢方では,「桂皮」あるいは「桂枝」といい,現在日本市場では中国南部産の広 南桂皮,ベトナム産のべトナム桂皮,セイロン産のセイロン桂皮などが主流である。  この桂皮は,スパイスとしては品質・品種・産地などは区別せずに用いられてい る場合が多いが,漢方では,「桂枝」「肉桂」「玉桂」といって用途に応じて区別 して用いる。桂枝は発汗・解熱といった発表作用に優れているため,風邪の初期に 応用される桂枝湯などに用いる。肉桂は,肉厚の桂皮で,強壮作用に優れているた め,腎を補う目的で用いる。すなわち八味丸などは,桂枝よりも肉桂を使う方がよ り効果的である。玉桂は,特に品質の優れた最上級品で,強心剤として用いる。 〔成分〕 精油1〜3.5%を含み,主成分は,cinnamaldehyde(75〜90%), cinnamyl acetate などである。 〔効能と応用〕  (1)発表作用……風邪の初期には,熱いくず湯にシナモン末を入れて飲むとよ い。ジンジャーを加えると発汗作用がさらに増強されて,より効果的である。  (2)鎮静作用……精神的疲労やのぼせなどには,シナモンティーやシナモンコー ヒーとして用いるとよい。  (3)健胃作用……シナモンの煎じ汁を食間に温服すると食欲不振にもよい。 〔処方例〕 桂枝湯に葛根と麻黄を加えた葛根湯は,傷寒論に,「太陽病,項背強 ばること几几,汗無く,悪風するは葛根湯之を主る」とあり,風邪の初期で頭痛, 発熱,肩こりなどのあるものに応用される。この処方中の桂枝は,麻黄と組んで発 表作用をあらわす。  その他,桂枝茯苓丸,桂枝加竜骨牡蛎湯,桂枝加附子湯,桂枝加黄耆湯,桂枝人 参湯,小建中湯,五苓散,苓桂朮甘湯,麻黄湯,小青竜湯,大青竜湯,柴胡桂枝湯, 柴胡桂枝乾姜湯などの処方に配合されている。  ◆ 2.シ ソ  シソは和名を紫蘇といい中国南部原産の一年草で,シソ科のチリメンジソ(Perilla frutescens)の種子を乾燥したものを「蘇子」と呼び,葉を乾燥させた ものを「蘇葉」,茎を「蘇梗」といい,宋代にはそれぞれを使い分けている。 『本草網目』には,「蘇の字は禾に従う。音はsuで舒暢(のびのびする)の意味で ある。蘇は性が舒暢で,気を行らし,血を和するものだから蘇というのだ」とある。 〔成分〕 種子に脂肪油を含み,その主成分はlinolenic acidである。また全草に 精油0.5〜1%を含み,その主成分は,特有香気の(−)−perill-aldehyde(55%), (+)−limonene(20〜30%),紫紅色色素のcyaninなどである。 〔効能と応用〕  (1)発表解熱作用……乾姜と配合して,感冒による悪寒,発熱など治す。  (2)鎮吐・鎮静作用……霍香と配合すれぱ,感冒,妊娠,牌胃の磯能低下による 悪心,嘔吐を治す。 また,神経症には百合根を配合すると,より一層効果的である。  (3)解毒作用……蘇葉を単味で用いたり,生姜を配合して,魚貝類の中毒による 嘔吐,下痢,腹痛などを治す。刺身にオオバが添えられているのは,ただの色どり ではなく,このように意味のあることなのである。 〔処方例〕 『金匱要略』に,「婦人咽中灸臠有るが如ぎは,半夏厚朴湯之を主る」 とある。この処方は気剤といって,気分のふさがっているのを開くものである。 のどに異物感のある者や神経質な者,緊張による咳,血の道症などに応用される。 よく演奏会で,楽章と楽章の問でゴホゴホと咳をする人がいるが,このような人は, 本方証であることが多い。本方中の蘇葉は,厚朴や生姜と協力して気を開くもので ある。  香蘇散は『和剤局方』に,「四時の瘟疫傷寒を治す」とあり,胃腸の弱い,みぞ おちの痞えがちな,気の滞りのある人の感冒に用いられる。また,ノイローゼに対 する安定剤として用いられる。  ◆ 3.ガーリック  ガーリックは,ユリ科のニンニク(Allium sativum)の球根で,主に暖かい国の 畑で栽培される多年草で,臭気強烈である。地下に大きな鱗茎を有し,これを「大蒜」 と称して薬用にする。  ガーリックは,洋の東西を問わず,あまりにも古くから使われ,栽培されていた ので,原産地の特定は困難であるが,中央アジアから西アジアにかけてであろうと 考えられている。同じユリ科植物のオニオン(たまねぎ)と共に,西洋料理に限ら ず,種々の料理には不可欠のスパイスとなっている。 〔成分〕 精油約1%を含み,その主成分はalliinおよびdiallyl disulfideであ る。alliinは無臭無刺激性物質であるが,allinaseによって刺激性の強い臭気をも allicinを生成する。 〔効能と応用〕  (1)強精・強壮作用……エジプトのピラミッド建設で酷使された奴隷には,ガー リックが食料として与えられ,スタミナ源となっていた。    7  (2)殺菌・殺虫作用……外用剤として細菌性のイボに貼るとよく効くし,魔よけ として家の軒先にガーリックをつるしておくという習慣やドラキュラがきらいとい うのも,細菌が発見される前の人々の知恵であったのであろう。  (3)脱臭・解毒作用……『金匱要略』に,「山椒のロの開かないものは,毒が有 るので,誤って食べると咽喉を刺激し,気絶しそうになったり,吐き下したり,体 がしびれたりする。その時にはニンニクを食べるか,肉桂の煎じ汁をのむとよい」 とある。  (4)腫瘍に有効……瘻や疔のような大きい腫物のみならず,いろいろの結毒,無 名の頑腫、悪性腫瘍には,ニンニクを細かくすって,軽く汁をしぼり,竹筒の中に つめて,艾をその上にのせて火をつける「ニンニク灸」を用いて奇効が得られるこ とがある。  ◆ 4.ファガラ(ジャバニーズ・ペッパー)  ファガラはミカン科のサンショウ(Zanthoxylum piperitum)の果実で,人家の 庭にもよく植えられているので,比較的なじみの深いスパイスのひとつである。  わが国では,土用の丑の日に,うなぎを食べる習慣があるが,山椒の粉をふりか けたあつあつの蒲焼は,まさに夏季における食味の王者である。また,冷ややっこ などにはよく山椒の葉が添えられ,風味を引ぎ出している。  さて,山椒には種類が多いけれども漢方では「蜀椒」を用いる。これは蜀州産の 上品の山椒のことである。日本では,但馬の朝倉山椒を良品としている。 〔成分〕 2〜4%の芳香性の精油を含み,その主成分は,(±)−limonene(54%), citronellal(8%)などであり,辛味成分としてsanshoolやsanshoamideを含む。 〔効能と応用〕  (1)健胃整腸作用  (2)解毒殺中作用  (3)利尿作用などがある。『古方薬品考』には,「蜀椒は中(脾胃)を温め,克 く就虫を征す」とあり,『神農本草経』には,「蜀椒は味辛温,邪気咳逆を主り, 中を温め,骨節・皮膚・死肌・寒湿痺痛を逐い,気を下す」とある。正月にのむ 「お屠蘇」の中にも山椒が入っており,一年の邪気払い,延命効果があるといわれ ている。また,七味とうがらしにも配合ざれている。 〔処方例〕 大建中湯は『金匱要略』に,「心胸中大いに寒え痛み,嘔して飲食す ること能はず,腹中寒え,上衝して皮起こり,出で見るれぱ,頭足有り,上下痛み て触れ近づくべからざるは,大建中湯之を主る」とあり,要するに,お腹が冷えて 痛み,外から腸のぜん動運動が分かり,痛くてさわることもできないものに用いる。 すなわち,腸捻転,胃下垂,胃アトニー,急性虫垂炎,腎臓結石,胆石症,膵炎 などに応用される。  この処方中の蜀椒は乾姜と組んで,弛緩した組織に活力を与え,これを緊張させ る効果があり,腸の寒えを温めて,停滞している気(ガス)をめぐらす。  その他,蜀椒は解急蜀椒湯,白朮散,巳椒歴黄丸,烏頭赤石脂丸などにも配合さ れている。  ◆ 5.マスタード  マスタードは春から初夏にかけて黄色い花をつけ,夏から秋に小さな種子をつけ る。これが香辛料となる。  ヨーロッパではマスタードをホワイトマスタードとブラックマスタードという風 に大きく二つに区別している。前者は中央アジア〜ヨーロッパ原産のアブラナ科の シロガラシ(Brassica hirta)の種子で,調理用としてドレッシング,マヨネーズ, からしあえなどに用いられているものである。漢方薬でいう白芥子である。後者は 西アジア〜南ヨーロッパ原産のクロガラシ(B. nigra)の種子で,ステーキ,ハン バーグ,とんかつなどの薬味として用いられている。  日本で使うねりがらしは,これらと似た植物であるカラシナ(B. juncea)であり, 漢方薬では芥子と呼んでいる。 〔成分〕 B. junceaは,配糖体sinigrinを含み,加水分解によって生じるallyl isothiocyanateが刺激成分である。B. hirtaは,配糖体sinalbin(2.5〜5%)を 含有する。 〔効能と応用〕  (1)緩下作用……便秘にはマスタードの種子を約1g食前に服用するとよい。  (2)消炎鎮痛作用……うがい薬として扇桃腺炎やロ内炎に用いる。また,ブラッ クマスタードはホワイトマスタードよりも辛く,温める作用もより強いので,神経 痛,リウマチなどに貼布外用剤として用いられる。  (3)利気除痰作用……蘇子と配合すると,気を通利し,痰飲を除き,喘咳を止め る作用がある。 〔処方例〕 控涎丹(姑洗丸)は,『三因方』に,「人が忽ち患って胸背・手脚・ 頚項・腰胯隠痛してがまんできない,筋骨に連なってひきつる,じっと坐ったり横 になったりもできないなどの症状に用いて,其の効きめは神のようだ」とある。ま た,尾台榕堂は『類聚方広義』で,この丸剤を麻杏甘石湯,枳実薤白桂枝湯,括婁 薤白白酒湯に兼用している。  清湿化痰湯は『寿世保元』に「湿痰経絡に流注して関節利せず,遍身四肢骨節走 注疼痛,胸背牽引,四肢麻痺不仁,背心一点水冷の如く脉沈滑の者を治す」とあり, 肋間神経痛,筋肉リウマチ,リンパ腺腫,肩こりなどに応用される。 (以下次回に続く) --------------------------------------------------------------- ● お問い合わせ、関連リンク --------------------------------------------------------------- 発行:   〒331ー0073 大宮市指扇領別所 326-1   光和堂鍼灸治療院   TEL:048-625-6848   FAX:048-624-1663   院長:堀口 和彦  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