|
――奥村清志―― 湧き出でて泡立ち落つる川の瀬にわがまどろみの時をとどめむ 緑濃き草芽打つ雨橋脚をしなり打つ雨肉打つ雨よ 雨の午後パームツリーの国道に濡るるは雀とわが精神と ひた走る冬枯れの道たれぞ知る永劫回帰の夢のたゆたひ 川中になにやら白きものあらん今日のおのれの禁欲のごと 七日たち腐れの色に変じたるわが屍に青の文字盤 夢の底に始発電車が流れきて喉仏過ぐる一日の始まり 一閃の光のうちに無限なる文字列を吐く星の死にざま 超新星爆発により重元素生まるるといふ物理学者は 超新星爆発により文明の営為があゝ今無に還りゆく 少年らにわが思ひとどかざるものか校庭に花一輪赤し 営々と剣ふるひて川の面をハートのジャック流れゆきたり 子の辞書を手に取りてみぬわが母もわが辞書をかく手に取りしかや そこにいのちありと歌はん下水道末端の泡ぶき夏の日の花 |