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――奥村清志―― 日と陰ととく転びゆく午後を汝はミクロの律を守りゐるべし 星ひとつ冴えわたりゐて大湖を果つるすべなく巡りをる夢 人の世は静けき眠り惑星にさんざきらめくひかり満つるを 北に飛ぶ鳥よ今宵の視神経一本の冴え遠引きてゆけ あふれたる計算屑に果たさずて倒れし己が屍を見る 少年の鳴らすピアノは原初なる神の決意のごとく濡れをる 指よ細くすみやかに梳け還らざる百のかたちに日は空けゆけば 春一日一斉に萌ゆる山翠(ミドリ)幼子はそを指もて容れり いづかたの音やか細くも絶えざりて妻は気性を外の面に刺せり 靄ぬくしヌーディスト島の波頭より透明色のコスモス立ちぬ デッサンの筆に光りてほとばしる乳のごとくに裸婦の焦点 開きそめはや吸ふひかり木犀の柔き緑はわれを急かすや |