ホームページ歌集<その2>



ミ ク ロ の 律
――奥村清志――

日と陰ととく転びゆく午後を汝はミクロの律を守りゐるべし

星ひとつ冴えわたりゐて大湖を果つるすべなく巡りをる夢

人の世は静けき眠り惑星にさんざきらめくひかり満つるを

北に飛ぶ鳥よ今宵の視神経一本の冴え遠引きてゆけ

あふれたる計算屑に果たさずて倒れし己が屍を見る

少年の鳴らすピアノは原初なる神の決意のごとく濡れをる

指よ細くすみやかに梳け還らざる百のかたちに日は空けゆけば

春一日一斉に萌ゆる山翠(ミドリ)幼子はそを指もて容れり

いづかたの音やか細くも絶えざりて妻は気性を外の面に刺せり

靄ぬくしヌーディスト島の波頭より透明色のコスモス立ちぬ

デッサンの筆に光りてほとばしる乳のごとくに裸婦の焦点

開きそめはや吸ふひかり木犀の柔き緑はわれを急かすや

 

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愛媛県松山市在住 奥村清志
愛光学園勤務
メール : koko@mxw.mesh.ne.jp