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――奥村清志―― 悲しみを於かむとて来し葦原よ風さはさはと少女を運ぶ 涸れ原に光を抱かば三羽四羽鴉降りきて時を食みをり ひと世なる夢ぞ白鳥逃げ処なき宴の夜に立ちて舞ひこよ 枯れ果てし一葉を握る熱き掌がいのちの揺れの鎮魂に冴ゆ 死さばいま眼裏に青き光立ちさいはひのときとどむるべしや 宵闇の燠に向かひて子と我と黙したるとき青き火は立つ 町空を木星逝きぬ盲なる人群にそは悲しき道化 夜々冴えて黄の背表紙に影ひとつうごめきさやぐ悔いの胸底 秋くれば七つの実もてめぐりくる星に花梨よ物語りてや 反照の鉛色なりむざむざと談のはざまに肌は燻る |