循環小数についての種々の考察
2008年5月
 
分数を小数で表すと,有限小数になる場合と無限循環小数になる場合とがある。
また,無限循環小数にも2種類あり,小数第1位からいきなり循環が始まる場合(0.235235…など)と,そうでない場合(0.18235235…など)がある。前者を純循環小数と呼び,後者を混循環小数と呼ぶ。
分数が既約分数になっていることを前提にすると,これらは分母を見ただけで判定できる。つまり,
・有限小数
分母を構成する素因数が2,5だけ。
・純循環小数
分母を構成する素因数に2,5が含まれない(10と互いに素)。
・混循環小数
分母を構成する素因数に,2または5が含まれ,同時にそれ以外の素因数も含まれる。
混循環小数は必ず,有限小数と純循環小数の和の形に表され,しかも,純循環小数を0と1の間の値に限定すれば,この表し方はただ1通りに確定する。つまり,循環小数の純粋形は純循環小数であって,混循環小数は,それに有限小数を加えて得られた派生形だと考えられる。また,純循環小数のうちでも,整数部が0でないものは,整数を差し引くことによって0と1の間の純循環小数になるから,これも派生形の一種と考えてよい。
以上の理由で,今後は0と1の間の純循環小数に話を限定して考察を進めることにする。すなわち,分母が10と互いに素な既約分数で,しかも分子が分母より小さい分数の小数形のみを考えることにする。

たとえば 1/7,2/7,…,6/7 を小数で表すと,それぞれ
  • 1/7=0.142857142857…
  • 2/7=0.285714285714…
  • 3/7=0.428571428571…
  • 4/7=0.571428571428…
  • 5/7=0.714285714285…
  • 6/7=0.857142857142…
となり,循環節(小数部の繰り返し単位)だけを取り出すと,次表のようになる。
  • 分子
    1
    2
    3
    4
    5
    6
    循環節 142857 285714 428571 571428 714285 857142
この表をよく見ると,おもしろい性質がいくつか浮かんでくる。
  • 循環節はどれも,共通の "142857" が6通りにシフトしただけのものである。
  • 循環節を "142" と "857" のように2つに分割してみると,1番目同士の和は 1+8=9 であり,2番目同士の和も 4+5=9 であり,3番目同士も 2+7=9 となっている(すべて和は9)。
  • また,循環節が "142…" となるときの分子と,循環節が "857…" となるときの分子に着目すると,その和は 1+6=7 である。循環節が "428…" となる分子と "571…" となる分子についても,その和は 3+4=7 である。"285…" と "714…" についても同様に 2+5=7 となる(すべて和は7)。
このような性質は,分母が7のときだけに成り立つ特殊なものなのであろうか。それとも,もっと広範に成り立つ性質なのであろうか。あるいは,成り立つ場合と成り立たない場合があるとすれば,それは何によって決定されるのか。これを調べることが,本論文の目的の一つである。

本論文のもう一つの目的は,循環節の長さについてである。分母が7の場合には,上に述べたように,分子にかかわらず循環節の長さは6である。
たとえば,分母が11だと,循環節の長さは2となり,分母が19だと18,分母が31だと15となる。
分母が合成数の場合には,たとえば,分母が72=49だと循環節の長さは42,分母が7・31=217だと循環節の長さは30となる。
こうした例だけをいくら挙げてもきりはないが,循環節の長さを決定づける一般式はあるのだろうか。それを調べることが第2の目的である。

さて,導入はこれくらいにして,論文本体を読みたい人は,次をクリックしてください。
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