例年なら,春から夏にかけてこの種の仕事をし,秋からしばらくは自分の時間が持てたものなのに,今年は秋口から冬までの間に,新規に参考書を一冊仕上げねばならなくなってしまった。安直に引き受けたことを後悔する毎日である。 その上,暇々に趣味のプログラミングにも熱を入れ,そちらの方も結構忙しい。今やっているのは,Texの穴を埋めるソフトだ。クヌース氏の作になるTexは,理数系の仕事をやっている人には不可欠の文書作成ソフトであろう。私もずいぶん長くお世話になっている。 これを使い始めると,とてもWordや一太郎のようなワープロソフトで数学の文書を書こうという気は起こらない。仕上がりの美しさ,修正の容易さ,数式入力のスピード(生産性),インテリジェントな構成力,いずれをとってもワープロソフトはTexにかなわないと思う。 ところがTexにも欠点がないわけではない。図形を描く能力の弱さ,ボックスの横への文章の回り込みができないこと(HTMLにはその能力がある),などである。数式においても,たとえば大きなルート記号,大きな括弧などがすべてフォントの組合せで表現されているため,見栄えにおいてややぎこちない感じがないでもない(ワープロソフトよりははるかにましだが…)。 Texのすばらしい文書作成能力をできるだけ引き継ぎながら(まねながら),さらに上記の欠陥を補うソフトは作れないだろうか。そう考えて夏から手がけているのが,Pictureと名づけた,今作りつつあるソフトである。図形機能はほとんど完成し,文書能力もかなりいい線に到達している。数式は完全にTexと同じ出力を得ることができ,ルートや括弧の欠点も解決している。さまざまなパラメータの入力に,直接の数値だけでなく,数式や変数を使うことができるのも特徴である。三段組など,通常のTexやLaTexにはない機能も持っている。 原稿書きで忙しいため,わずかずつしか進展しないのが残念だが,遠からず完成する見込みである。私的にはすでに実用に供している。数式を入力するだけで曲線を描くことができる機能,任意の領域に斜線を描く機能など,図形機能における実用的なアイテムを多数用意している。任意の線幅の点線で曲線を描く機能など,WindowsのAPI関数の制約を超えた機能も,当然備えている。私的に使っている段階とはいえ,我ながら便利さに驚いている。 愛光では,高校1年を受け持っているのだが,難しい年頃なのか,なかなか楽な授業をさせてもらえない。他の同僚に聞いても同様の困難さを抱えているようだ。高校1年という年齢のせいなのか,全国的な風潮なのか,愛光の現高校1年生だけの特殊性なのか,判断は難しい。世代の違いを感じてしまう。 例年なら,特殊ケースとして生じていた諸事象が,今は日常の珍しくもないケースになっている,そんな感じである。 |