散歩の楽しさを知る
1998年10月3日
 松山平野は実りの秋を迎えている。つい先日まで黄金色の穂が垂れていた田は,今は広々とした空間になり,あちこちに,ワラを干す円錐形あるいは壁状の構造物が散在している。あぜ道を散歩していると,甘い稲の香りがつーんと心地よく鼻を刺激する。

 10cmほどに刈られた切り株からは,早くも鮮やかな新芽が伸び,田は再び緑の草原と化そうとしている。生命の絶えることのない継続力を感じる。

 秋祭りが近い。松山の秋祭りは,10月5,6,7日と決まっている。7日が本祭りである。公立の小・中学校では7日は休日となる。

 祭りが近づくと日の暮れもうんと早くなり,涼しさもます。昔,子供の頃,祭りで神輿を担ぐ日に,母が半袖から長袖に着替えさせてくれたのを覚えている。ちょうどそういう時期なのだ。

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 春から夏にかけて長く入院したのをきっかけに,20年あまりにわたって続けてきたジョギングをやめた。そのかわり今は散歩を趣味にしている。歩くと新しい発見がいろいろある。稲の切り株からあっという間に瑞々しい緑の新芽が出ることは,この秋の私にとっての新しい発見であった。これまでそれを知らなかったというわけではないが,まるでネギの茎のようにぐんぐん伸びることは,私の予想のほかであった。

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 愛光学園では,雨で延び延びになった運動会が先日やっと終わり,学びの秋に突入しようとしている。卒業生の結婚シーズンでもある。今月から来月にかけて結婚式への案内がすでに三つ来ている。子供だった彼らが,こちらがちっとも進歩しない間に,立派な大人になって活躍し始めている。この現実を目の当たりにするとき,教師冥利の喜びを覚えると同時に,我が身の不甲斐なさへの悲哀に沈んでしまいそうになる。

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