潰瘍性大腸炎というこの病気にとりつかれて,すでに14年余りになる。国から難病指定を受けているやっかいな病気で,症状がひどくなる「激甚期」と,症状が治まって普通の生活ができる「緩解期」とを執拗に繰り返すことに特徴がある。原因,治療法ともいまだにわかっていないらしい。激甚期の症状は,下痢,大腸からの出血,発熱など。人にはなかなかわかってもらえないのだが,大腸がそのような状態になったときには,とても立ったり座ったりの通常の生活はできなくなる。 この病気に遭遇してからの14年あまりを振り返ってみると,最初のうちは1年周期で激甚期を迎えていた。寒い時期が多かった。主治医(今も変わらず同じ先生にお願いしている)の適切な処置で,たいていは数日の自宅安静で症状が治まるのが常であった。そのあとは仕事をしながら徐々に回復し,ひと月ほどで完全な緩解期に移行することができた。 近頃では周期が2年から2年半に延びていた。それだけ緩解期を長く持続できるようになったということである。 ところが今回はまったく様子が違う。あまりにも症状が重い。入院という処置も今回が初めてである。入院して最初の11日間は,腸に負担をかけないために完全絶食を命じられた。点滴だけで生きながらえた。その間体重は5キロ減り,いまだに回復しないままでいる。 出血が止まってようやく重湯や三分粥が食べられるようになったときのありがたさは,涙が出るほどだった。その後は順調に回復するだろうと自分でも考え,主治医の先生もそう判断されていた。しかし,思惑違いはそこから始まった。 いつまでたっても下痢が止まらず,散歩その他,少しでも体力回復のための運動をすると,決まって熱が出て,ときには出血がぶり返す。これは今まで経験したことのない状況である。 一応退院はしたものの,基本的にはほとんどよくならないまま今を迎えている。生徒たちや,代わりに授業を引き受けてくれている同僚教師には本当に申し訳ないのだが,どうにもならない。不甲斐なさに泣きたいほどである。ひょっとすると回復しないまま廃人になってしまうのでは? といった不安すら胸を過ぎることがある。 何とか弱気の虫を振り払いつつ,「気長に腰を落として治すしかないのだから」と,遠のきかかる勇気を必死につなぎ止めている私である。 |