神風・愛の劇場スレッド第39話(4/16付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 16 Apr 2000 17:03:53 +0900
Organization: So-net
Lines: 496
Message-ID: <8dbs5d$ik5$1@news01dh.so-net.ne.jp>
References: <20000403003708keitai@fa2.so-net.ne.jp>
<8c9mfo$4lh@infonex.infonex.co.jp>
<20000409142948keitai@fa2.so-net.ne.jp>
<8cs0mq$enl@infonex.infonex.co.jp>
<8dbnh3$sm6$1@news01de.so-net.ne.jp>

石崎です。

ジャンヌ妄想記事、こちらが本編です。

神風怪盗ジャンヌのアニメ&原作の世界を汚されたくない人は、読まないで下さ
いね。
では、ゲームスタート!



★神風・愛の劇場第39話

■彼方木神楽編

●名古屋病院 事務長室

「稚空様…私はどうすれば良いのでしょうか?」

 名古屋病院院長、名古屋海生の秘書にして、病院の事務長を務める彼方木神楽
は、呟きます。
 手には、稚空と弥白、そして神楽が三人で写った写真があります。そしてそれ
が、神楽が唯一持っている弥白と一緒に写った写真なのでした。

トントン

 ドアがノックされると、神楽は写真を机の引き出しにしまいます。

「お仕事中ごめんなさい、神楽」

 入って来たのは、現在の神楽の悩みの種、山茶花弥白でした。

「これは弥白様。今日も三枝先生のお見舞いですか?」
「ええ。先生がまもなく退院なさるって本当かしら?」
「はい。早ければここ二・三日中には」

 本当は、患者の容態を第三者に伝えるのはいけない事なのですが、三枝には身
寄りが無く、入院して来るまでの経緯を考えると、弥白は特別なのでした。

「そう…。では、別荘に家具を運び込まないと…」

 弥白は、携帯電話を取り出します。

「前から申し上げているように、幾ら先生のファンでも、そこまでされる事は無
いのでは…。三枝先生は、ご自分で生活するだけの財産を…」
「お黙り、神楽」
「弥白様の優しさは、私良く存じている積もりです。しかし、度を過ぎた優しさ
は、却ってその人の為にならない事も…」
「あなたが私に構うのは、私が稚空さんの婚約者だったから。今は婚約者では無
いのですから、もう私に構わないで頂けます?」
「いいえ。小さい頃から稚空様と弥白様の事を見守ってきた私には、あなたのな
さる事は他人事には思えないのです」
「神楽が私の事を心配して下さっているのは、感謝していますわ。でも、弥白は
もう子供ではありません。自分の事くらい自分で決めさせて下さい」
「弥白様が子供では無いのは判っています。しかし…」
「三枝先生の事は、私が立ち直るまでずっと見守るって決めたんです。だから、
神楽は私のする事を黙って見ていて下さいませんか? お願いします」
「弥白様…。判りました。この件については、神楽は見守っている事にします」

 弥白の必死な表情を見て、神楽は弥白をこれ以上諫める事が出来ませんでした。

「ありがとう神楽。ところで、三枝先生がここに入院している事ですけど…」
「ご安心を。秘密は守られています。知っているのは海生様と私、一部の医師と
看護婦だけ。稚空様ももちろん知りません」
「有り難う神楽」

 三枝の入院を秘密にしたのは、弥白のたっての願いでした。マスコミから三枝
を守ると言うのが建前でしたが、奇妙なのは稚空にもその事は知らせないで欲し
いと、弥白がわざわざ念を押したことです。
 稚空も三枝のファンだから、今の三枝の様子を見せたくないとの話で、神楽も
一応納得はしたのですが…。

「それでは、失礼致します」

 弥白が出て行くと、神楽はため息をつくと椅子に身体を沈めます。
 そして引き出しを開けると、一枚の紙を取り出します。

(どうしてあれ程お優しい弥白様が、こんなものを…)

 神楽が手にしているのは、あの「弥白新聞」なのでした。
 神楽は、弥白の後をつけて、配られた問題の弥白新聞を回収していました。
 それで委員長達の目からは、一部にしか配られていないように見えたのです。

(問題は、回収できなかった新聞をどうするかですが…。どうやって回収するべ
きか…)


■名古屋海生編

●名古屋病院 特別病室

「先生、お加減はどうですか?」
「ああ院長。お陰様で最近は随分楽になりました」

 その頃、稚空の父、名古屋海生は三枝の特別病室にいました。

「それは良かった。僕も先生のファンですから、先生が復活される日を心待ちに
していますよ」
「有り難う。努力してみるよ」
「そうそう。先生から頂いた写真。引き延ばして自宅に飾っていますよ」
「あれを? ちょっと恥ずかしいな。たまたま撮った写真だからねぇ…」
「いえいえ。怪盗ジャンヌの美しさを一瞬で捉えた、素晴らしい写真じゃないで
すか」

 海生の家に飾られている怪盗ジャンヌの写真は、三枝が外出を許されている時
に、たまたま撮影したものでした。
 それを三枝は普段のお礼に海生にプレゼントしていたのです。

「うむ。写真はここ暫く撮る気がしなかったんだが、怪盗ジャンヌを見た瞬間、
その美しさに魅せられた所為か、絶対に撮らなくてはいけないと思ったんだ」

 と言いながら、何故か三枝は懐中時計の蓋を開けて見ています。
 これは、三枝の癖なのですが、そこに何があるのか、専属の看護婦ですら知ら
ないのでした。

「それじゃあ、怪盗ジャンヌは三枝先生の復活のきっかけを作ったって訳だ」
「それだけじゃないさ。山茶花さんには、幾ら礼を言っても足りない程だ。こん
な老いぼれの為に…」

 三枝は弥白が持ってきた花の方を見て言います。

「あの子は今時珍しい、本当にいい子ですよ」
(あれで、あの思い込みの激しさを抑えてくれればね…)

「ああ。実はね、彼女に頼まれて、彼女の写真集を撮ることにしたんだ」
「へぇ。それは見たいなぁ」
「ハハハ。プライベートな物と言っていたから、彼女の許可がいると思うよ」


■紫界堂聖編

●桃栗学園OA教室

 桃栗学園のOA教室では、今日から始まるパソコン講習の第一回目の授業が開
かれています。

「パソコン講習の講師を務めます、紫界堂です」

 学園にパソコンを導入する事は決まったものの、肝心の使いこなせる教師が極
度に不足していたことから、パソコンを使うことが出来た聖も臨時講師として雇
われることになったのでした。
 パソコンは、先生が帰るまでの時間であれば、自由に使って良い事になってい
ます。
 各人にパソコンが配られていない現状ではあまり意味がありませんが、メール、
掲示板、DBのシステムも、既に運用が開始されています。
 もちろん、パソコンには盗難防止装置がついていて、勝手に持ち出せないよう
になっていました。

「さて、今日はまずノーツの使い方から…」


■山茶花弥白編

●桃栗町中心部

「あら? 稚空さん? こんな時間に…」

 桃栗町郊外にある名古屋病院から、枇杷町に戻るリムジンの車中で、弥白は稚
空の姿を見つけました。
 歩いて来た稚空は、杖を持った黒服の盲目らしい少女の横にぴったりと付き添
うように立ちます。そして、横断歩道の信号が青になると、先に歩き出します。
 まるで後ろに目がついているかのように、少女の歩く速度に合わせ稚空は横断
歩道を歩いていきます。

「相変わらず、お優しいですのね…」

 弥白は、稚空の行動を見て、その意味を理解しました。

「私、ここで降ります。先に本邸に戻って下さい」

 稚空は、横断歩道を渡ると右に曲がっていきました。
 弥白は稚空の後を追いかける事にしました。もちろん、デジカメを始めとする
ストーカー用の品々を持っています。
 更に、サングラスをかけ、鬘までして帽子を被り、変装もばっちりです。


●桃栗動物病院近辺

(動物病院?)

 稚空の後をこっそりつけた弥白は、動物病院にたどり着きました。
 弥白もここの病院の事は知っていました。腕が立つので有名で、弥白も自分の
ペットを連れて行った事があります。
 稚空は何故か、病院を見通す事の出来る茂みの中に隠れます。

(東大寺さんと水無月さん?)

 その茂みの中には、桃栗学園新体操部の東大寺都と水無月大和の姿も見えます。

(あれは先ほどの…?)

 更に続いて先ほどの盲目の少女が現れ、病院の中に入って行きました。

(日下部さんまで…?)

 ややあって、日下部まろんまで現れて茂みの中に入ります。
 どうやら、全員あの盲目の少女に何か関わりがあるようです。

(ありましたわ…。どうもどこかで見た気がすると思った)

 弥白は、モバイル用のサブノートを出すと、ノートの中に保存されていたDB
から、瀬川ツグミの情報を探し当てました。
 このノートパソコンも、弥白ネットワークに接続可能なのですが、最近新しい
のに買い換えたので、お蔵入りしたためにウイルスの被害を免れていました。
 もっとも、保存されている情報の内容は古いものでしたが、無い物は仕方があ
りません。

 ツグミの正体が判ったので、どうやら彼女の事を心配して稚空達は集まってい
るのだろうと推測しました。

(でも…稚空さんと日下部さんが一緒にいるのは気になりますわ〜)

 瀬川ツグミの事は弥白はどうでも良かったのですが、稚空とまろんが一緒に行
動しているのは気になったので、観察を続行することにしました。

***

 一時間後。
 ツグミが病院から出て来ます。
 茂みの中に隠れていた稚空達をツグミは一瞬で見抜いたのには弥白も驚きまし
た。

(気をつけないと、私の事も気付かれてしまうかもしれませんわ…)

 心眼を持つ者に、変装は意味がありません。
 念を入れてストーカーグッスの一つ、ゴム底の靴に履き替え、足音を減らすよ
うに努めます。

●噴水広場

 桃栗町中心部の噴水広場の側にあるカフェ。
 その店のテーブルの一つに弥白は座っています。
 別のテーブルには、稚空達が陣取っています。

 弥白は、指向性のマイクをこっそり稚空達の方に向けて、何を話しているのか
をチェックします。
 イヤホンを通しての会話は少々聞き取りにくいものでしたが、たわいない話を
しているようです。

***

 一時間も経ったでしょうか。
 日も沈みかけ、そろそろ…と稚空達が立ち上がります。
 弥白も稚空達が会計を終えた頃を見計らって、立ち上がります。

 店の外に出てみると、稚空達はまだ固まって何かを話しています。
 弥白は既にツグミ達の後をつけても何も起こるまいと感じていたので、そのま
ま何気なく通り過ぎようとしました。
 それでも念のため、盗聴マイクは向けたままです。

「…さん、今夜こそ来て下さいね。私、待ってますから」

 弥白の耳のイヤホンに、ツグミの声が届いたのは、ツグミ達の側を通り過ぎよ
うとした時でした。
 え? と、弥白がツグミ達の方を見ると、ツグミがまろんに耳打ちをしている
のが目に入ります。
 ツグミは何故か顔を赤らめていて、まろんも少し頬を染めて、肯いています。

(何か怪しいですわね。あの二人…)


●桃栗町郊外 ツグミの家

 桃栗町郊外のツグミの家の側に、弥白は潜んでいました。
 一端家に戻ってから、改めてツグミの家にやって来たのです。
 服も着替え、黒のボディスーツです。以前監視カメラの映像で見た、怪盗まろ
んのスタイルを見て、自分でも着てみたくなったのです。

 まろんとツグミの様子に何か不審なものを感じた弥白は、ひょっとしたら何か
弱みを握れるのではと、まろんの方を見張る事にしたのです。
 先ほどの会話から、まろんがツグミの家に来るのだろうと張っていると、果た
してまろんがやって来ました。

 ツグミの感覚の鋭さを警戒して、様々な機材を用意しました。
 その一つが、偵察ユニットです。
 ツグミの家は海に面した崖の上に建っていて、部屋の中の様子を伺うには建物
に潜入しなければなりません。
 しかし、ツグミの感覚の鋭さを見ているので、恐らくそれは無理だろうと判断
しました。
 海の上からも、角度の関係で中の様子を伺うことは出来ません。
 そこで、空中に偵察ユニットを浮かべて、中の様子を撮影することにしたので
す。
 この偵察ユニットはイスラエル製で、元々は軍事用に開発された物を自分用に
改良した物です。
 浮力をバルーンで得て、推進力はプロペラによって得ています。移動時にプロ
ペラの音がしてしまうのですが、望遠カメラで遠くから撮影するので、波の音に
消されるであろうとその辺りは楽観していました。

 弥白は、偵察ユニットから送られてくる映像を見ていました。
 どうやら二人は、楽しく食事をしているようです。

(何を話しているのか聞こえませんわ…)

 映像は確認できても、音声の方はどうにもなりません。
 食事が終わった後は、お茶を飲みながら楽しげに話しています。

***

 ややあって、二人ともリビングから消えました。
 弥白はカメラの方向を変えましたが、海側の部屋にはいないようです。
 弥白がツグミの家を見ると、こちら側の窓の一つに灯りがついています。

 集音マイクを向けると、どうやらお風呂に一緒に入っているようです。

(怪しい、怪しすぎですわ〜)

 近寄って中の様子を覗き込みたい衝動にかられましたが、ツグミを警戒してそ
れは我慢しました。

***

 お風呂の電気が消えると、今度はツグミの寝室らしい場所に二人が現れます。
 ツグミはネグリジェに、まろんは白いパジャマに着替えています。

(…!)

 弥白は茂みの中で息を飲みました。
 まろんとツグミは、二人で向き合うと抱き合います。
 そして、お互いに顔を近づけ、そして…。

「許せない。許せないですわ、日下部まろん…」

 それからの光景を弥白は見ていませんでした。
 モニターを叩き壊してしまったからです。

 弥白は、絶対にまろんに稚空は渡さないと、固く心に誓うのでした。


■堕天使フィン・フィッシュ編

●桃栗動物病院

「それじゃあ、この薬をあの犬に処方するのよ。判ったわね」
「はい、判りました。処方します」

 フィンが薬を差し出すと、まるで棒読み口調で獣医が答えます。

「じゃあ、私は行くから。私がいた事はあなたは忘れるのよ」
「はい、判りました。忘れます」

 フィンは、窓を開けると、翼を広げて飛び立ちます。
 ぴゅうと風が部屋の中に吹き込むと、獣医は我を取り戻します。

「あれ? もうこんな時間だ…。おっといけない。この薬をあの盲導犬に…」

●オルレアン まろんの家

「まろん、まろん? いないの?」

 フィンはまろんの部屋に戻って来ました。
 まろんが学校に行った後、フィンは部屋からすぐに脱出したのですが、また戻
って来てしまったのです。

「どうかしてる…。ここはもう私の『居場所』じゃ無いのに…」

 まろんを裏切ってしまったのに、かつてここにいた時の癖で、ついついここに
戻って来てしまう自分に、フィンは苦笑します。

「あ〜。またロザリオ忘れてる〜。もう、盗まれても知らないから」

 まろんの部屋に入ると、やはり誰もいません。
 風呂場、ロフト、両親の部屋…どこにもまろんは居ませんでした。
 そうして最後にリビングに戻って来ました。
 すると、ダイニングのテーブルの上に、何かがあるのに気付きます。

「これは…?」

 テーブルの上には、料理の盛りつけられた皿と、メモが置いてありました。


 愛しのフィンへ

  今晩はツグミさんの所でお泊まりだから、
 夕食はレンジで暖めて食べてね。
  明日の朝には戻るから、いい子にして待っ
 ててね。

                まろんより


「あの馬鹿…」

 …と言いながら、料理の皿をレンジに入れるフィンでした。


■東大寺都編

●オルレアン 都の家

 都は、独りぼっちでした。

 家に帰ると、昴の容態がすぐれないので、まだ家に帰れないとの桜からのメッ
セージと、まだ仕事が続いているので帰れないと言う氷室のメッセージが留守電
に残されていました。
 どうしてPHSの方に連絡をくれなかったのかと都は思いましたが、病院の手
前で電源を切ってそのままにしていた事に気付きました。
 自分一人なので、凝った夕食を作る気も起きず、適当に夕食を済ませます。
 それからふと気がついて、昨日学校から持ち帰ったシャツを他の洗濯物と一緒
に洗濯機に放り込み、洗剤を入れてスイッチを入れます。

 洗濯機が回っている間、リビングのソファに都は腰を下ろします。
 TVをつけますが、都はそれを見ているようで実は見ていませんでした。
 学校でみんなといる時には、考えないでいられた事も、こうして一人でいると、
色々と考えてしまいます。
 考えているのは、ここ数日の間に自分の身の上に起こった出来事。
 自分では親友を裏切るつもりは無いのに、いつの間にか裏切ってしまっていた
自分。
 そんな自分をそれと知りながら、責めようとはせずに、むしろ逆に温かい目で
見つめてくれているその裏側で、親友が何を考えているのかと思うと、都は胸が
張り裂けそうになるのでした。

 洗濯機が止まると、今度は乾燥機に放り込みます。
 そして、乾燥も終了すると、都は洗濯物をリビングでアイロンがけをします。

 家族の洗濯物を順番にアイロンがけして行き、人別に畳んで分けていきます。
 そして、最後に例のシャツが残りました。
 都は、そのシャツを持って暫く固まっていましたが、漸くアイロンをかけ始め
ます。

(ねぇ稚空。稚空は何を考えてあたしにあんな事したの?)

***

 アイロンをかけた後、都はシャツを稚空の部屋に返しに行こうとしたのですが、
チャイムを押すことが出来ませんでした。もう時間も遅いし…と、自分で自分に
言い訳して、都はシャツを持ったまま部屋に戻ります。

 部屋に戻った都は、今度は勇気を振るってまろんの家に電話をかけました。
 都は、まろんに自分のした事の過ちを、ちゃんと謝るつもりでした。
 まろんはその事には触れたがらないようでしたが、都はそうしないと気が済ま
なかったのです。

「強気に…本気…元気に…勇気」

 いつか偶然聞いた、まろんの秘めたるおまじないの言葉を呟きながら、電話の
ボタンを押して行きます。

「ただ今、留守にしています。ご用のある方はメッセージを入れておいてね」

 しかし、電話機から聞こえてきたのは留守番電話のまろんの声でした。

「謝らせてもくれないの? まろん…」


●都の部屋

「はぁ…」

 シャツを前にして、都はため息をついています。
 お風呂にも入り、後は寝るだけですが、今日もなかなか眠れない夜になりそう
でした。

ふわり

 その時、ベランダに一つの影が音もなく降り立ったのに気付きます。

「あらあら、寂しそうね」
「あんたは…」

 窓を開けて、かつて都の心と名乗った白い翼を持つ天使…フィン・フィッシュ
が入って来ます。

「独りぼっちなの?」
「そんなのあんたには関係無い事じゃない」
「否定しないところを見ると独りなのね」
「…」
「寂しいんでしょう? 辛いんでしょうね」
「そんな事無いわよ」
「確かあなたのお友達も同じ様な事を言っていたわね。でも本当は寂しくて寂し
くて仕方がない。都ちゃんだってそうなんでしょ?」
「あんたにあたしの何が判るのよ」
「判るわよ。だって…」

 フィンは、都を抱き寄せて言います。

「私も、独りぼっちだから…大切な人を裏切って、独りぼっちだから…」
「あんた一体…」
「寂しいのよ、私も…。寂しいもの同士、仲良くしましょう」

 都は、天使の目から涙が流れているのを見て、その天使の言っている事が真実
の事なのだと確信しました。

「判ったわ。『あたしの心』さん」
「本当!? 嬉しいわ」

 この時、都は別の意味で眠れない夜になる事を何故か予感していました。


(つづく)

 自分ではこういう展開にはしないようにしていたのに〜(爆)。
 やはり少々疲れているのかもしれません。

 では、また。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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