神風・愛の劇場スレッド 第136話『誤解』(7/22付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 22 Jul 2001 13:56:21 +0900
Organization: So-net
Lines: 499
Message-ID: <9jdmdr$guu$1@news01cb.so-net.ne.jp>
References: <9i3qmd$clk@infonex.infonex.co.jp>
<9i9j1t$qsc$1@news01dg.so-net.ne.jp>
<9im58n$cj3@infonex.infonex.co.jp>
<9ipjao$t9e$1@news01dh.so-net.ne.jp>
<9j5jp2$aca@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9j5jp2$aca@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

 こんにちわ。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版の設定を元にした妄想スレッド
です。そう言うのが好きな方だけに。


>>> >★神風・愛の劇場 第133話 『交錯』
>
>## "交わって"は変な意味じゃ無いので念の為。(爆)

#しまった。先回りされた(笑)。
#変な意味で使うならば、どちらかというとあの二人の場合「触れ合って」みた
#いな(大違)。

>>> ★神風・愛の劇場 第134話『配慮』
>
>桃栗町の若い女性は大体把握しているのではという疑惑が浮上。(笑)

 三枝センセに写真を撮って貰ってスターになれた女性が沢山いるらしいので、
センセは多分普段から街の若い女の子には目を光らせていたのでは無いかと。

># でも実際に他の選手も撮るかどうかはイマイチ信用出来ない。^^;;;;

 一応撮ることには撮っても、実際にはまろんちゃんだけを追いかけているに一
票。

>三枝センセがまろんちゃんとツグミさんの写真を何枚も撮ったのは
>トリミング出来る構図を紛れ込ませる為だったりして。^^;

 これは三枝先生が納得がいく写真を撮りたいがためで、ツグミさんを外してま
ろんちゃんだけにしようとか思っていた訳では無いという事で。

>次の作戦ポイントを示したミストですが、人が大勢集まる場所で
>ミスト好みの作戦って出来るんでしょうか。^^;;;

 人が大勢居る場所で襲撃する場合、

1.周囲の人間に襲撃の現場を見せない状況を作り出す
  例:みんなを眠らせる、マクー空間に引きずり込む(笑)
2.どこか人気の居ない場所に誘き出す
3.構わず周囲の人間毎攻撃

 …等々、色々とパターンが考えられますが、どれが良いでしょうか(笑)。

 それと「ミスト好みの作戦」というのをどう解釈するのか。
 ミストは知略を張り巡らせるよりは、案外力で押していくタイプだと本編では
見えましたので、ある程度まろんの精神が弱まった段階で直接攻撃をかけるのか
なと。

#ひょっとして、『ミスト好みの作戦』を別の意味に解釈しているとか。
#例えば、『淫魔』としての好みとか(爆)。

>おまけに実行だけ宣言してとっとと居なくなってしまうとは。
># 何も後先考えて無い気がしてきた>ミスト(笑)

 実はこのシーンは、本妄想の現状に対する風刺なのです。

 次の作戦=妄想の続き
 ミスト =石崎
 ノイン =佐々木さん
 ちなみに新作構想中のF氏には意味もなくフィンの地位を進呈

#…本気にしないで下さい(笑)。

># 平和だった事にしてバッサリ飛ばしてしまうという選択肢もあります。^^;

 その選択肢を選ぶとは、恐らくは露ほども予想していない筈(笑)。


>★神風・愛の劇場 第135話 『囁き』

 三枝先生に関して用意していた話があって、それは撮影中に笑顔を見せるまろ
んちゃんを見て、その笑顔が作り物だと気付いてしまう…というものでした。
 だから今回、ツグミさんがまろんちゃんの三枝先生への態度に気付き、そして
三枝先生もそれに気付いているであろうという展開には唸りました。

 三枝氏の悩みがもっと別の所にあると指摘するツグミさん。
 単に娘さんを失った悲しみだけでは無い苦しみがあるのではと想像されます。

#苦しみと言うよりは後悔ではという気が少々。

 これまでの話から、三枝氏とアキコの話が頭の中で生成されたのですが、さて、
実際の所はどうなのか。

 またまた出現したツグミさん二号と再開するアキコ。
 アキコの様子から見ると、矢張りアキコはミストに隠れて何かをしようとして
いる模様。
 しかも、ミストはアキコが何をしようとしているか知っていて、敢えて放置し
ているように見えます。
 それは、アキコの話がツグミさん二号には届かないという自信があるからか、
それとも、あれをもう用済みと感じているからなのか。
 ツグミさんが夢の中で見た真っ赤な「何か」とは何でしょう。

#ツグミさんの中にあるもう一人の自分とか。

 では、本編。


★神風・愛の劇場 第136話『誤解』

●オルレアン

 大会がいよいよ今週末に迫った日曜日は休養日でしたので、少し朝寝坊な都。
 にも関わらず、眠そうな眼でリビングに姿を現しました。

「おはよー」
「今日は練習じゃ無かったのか?」

 ジャージ姿で新聞を読んでいた氷室が新聞から目を離さずに言いました。

「今日は休養日だって」
「大会は今度の土曜日じゃ無かったのか?」
「うん」
「父さんも応援に行くからな」
「休み取れるんだ」
「ジャンヌも最近大人しいからな」
「そうねぇ…」
「部活がお休みだからって夜更かししてないで、早く起きなさい」

 キッチンの向こうから、桜が声をかけました。

「してないわよ」

 事実でした。
 昨日は帰宅して早々にベットに横たわったのですが、眠れなかったのです。
 目を瞑ると、浮かぶのは枇杷駅前で目撃したあの光景。

 弥白の事は大嫌いな都でしたが、稚空と弥白の特別な関係については都にも理
解出来ましたから、弥白の側に稚空がいる事については黙認する積もりでした。
 とは言え、まさかそこまで関係が進んでいるとは思いはしませんでした。

 都は稚空を責める事は出来ませんでした。
 自分も傷ついた時稚空に求め、受け入れて貰った事があるのですから。
 だからこそ、稚空が己の立場について理解を求めた時、それを受け入れたので
す。
 ただ、何が弥白の周りで起きているのかまでは判りませんでしたが。

 それでも都は、弥白を許すことは出来ませんでした。
 弥白にこれまで受けてきた仕打ちがその主な理由でしたが、それともう一つ。

 弥白が稚空にした事をまろんが知れば、絶対に傷つくに違いない。
 あの女に、まろんを傷つける権利なんて無い。絶対に。

「今日は練習休みだったら、お部屋をちゃんと掃除してね」
「ごめん母さん。今日はちょっと用事があって出かけるから」



 支度を整え、夕方には帰ると言い残し家を出た都。
 エントランスに降り立つと、メールボックスの前に稚空が立っているのが見え
ました。

「お早う。稚空」

 昨日の事があったので、どうしようかと一瞬考えましたが、結局普段通りに声
をかけました。

「ああ、都か。お早う」

 どことなく、稚空は落ち着かない様子に見えました。
 もっともそれは、都の気のせいなのかもしれませんが。

「今日は帰って来てたんだ」
「ああ。昨日はな」
「弥白は放って置いて良いの?」
「色々あったが、今は落ち着いてる。今日からは大会に向けて特訓らしいから」

 今は、の部分にアクセントを置いて稚空は言いました。

「じゃあ、もう弥白と同棲しなくても大丈夫なんだ」
「おいおい。同棲だなんて聞こえの悪い」
「ずっと一緒に住んでいたんでしょ。意味は違わないじゃない」
「それはだな」

 なおも何か言おうとする稚空を都は手で制します。

「稚空が弥白の事を心配するのは判るけどさ、
 まろんの気持ちも少しは考えてやりなよ。
 一応、まろんには判って貰っているらしいけど、本当は不安な筈だよ?
 あの夜稚空、『俺にはまろんだけだ』ってあたしに言ったよね。
 今もその気持ちに変わりがないのなら…」
「判ってる」
「本当に?」
「本当さ」

 都は、昨日目撃した出来事を稚空に話そうかと一瞬思いました。
 しかし、結局それを言う事は止めてその代わり。

「まぁ、そういう事にしといてあげる」
「何か引っかかる言い方だな」
「済んだ話とは言え、稚空もあたしも、まろんの事できれい事言えないし」
「おいおい」
「事実じゃない」

 稚空は何か言いたそうにしていましたが、無視しました。

「とにかくさ、稚空」
「何だ?」
「前にもメールに書いたけど、まろんを泣かせるんじゃないよ」
「ああ」
「もしも泣かせたら…あたしがまろんを取っちゃうから」
「え?」
「…冗談よ。それじゃあ、あたしは出かけるから」

 そう言って歩き出そうとした都を稚空は呼び止めました。

「何?」
「まろんがどこに行ったか知らないか? 昨日、帰って無いみたいだが」
「あ、そうなんだ」
「都も知らないのか?」
「あたしも昨日、学校の帰り道で別れたから。何か、用事があるらしいけど」
「まさかあいつ、一人で…」
「一人でって?」
「あ、いや…」
「そうね。帰って来なかったのなら、ツグミさん所でしょ」
「やっぱりそこか…」
「気になる?」
「いや、別に」
「嘘おっしゃい。顔に書いてあるわよ」
「そうか?」
「とにかく、まろんを何時までも放って置くんじゃないわよ。それじゃあ」

 そう言い残し、今度こそ都はオルレアンの外へと歩いて行くのでした。


●オルレアン・稚空の部屋

 稚空が部屋に戻って来た時、彼の相棒は未だ眠ったままでした。
 昨日の夜に帰って来たアクセスは、とにかく眠りたいと言うので、話は後で聞
くことにして、稚空が籐籠の中に設えたベットに寝かせました。
 夜が明け日が昇った今になっても、未だ起きる気配が無いところを見ると、余
程疲れているのだろうと稚空は想像しました。

 稚空はリビングのテーブルの上に新聞を置くと、昨日帰って来てから何度もそ
うして来たように、ベランダに出て隣の様子を伺いました。
 先程部屋から出て新聞を取りに行き、そして戻って来ただけですから状況に変
化があるとは思えないのですが、それでも念を入れたのです。
 ですがやはり、隣の住人が帰って来ている気配はありませんでした。
 ため息をつき、稚空はリビングへと戻りソファに腰を下ろしました。

 これからどうするのかを稚空は考えます。
 選択肢は二つありました。
 一つは、昨日まで同様、弥白の側に居てやること。
 そしてもう一つは、まろんを捜すこと。

 前者を選択すべきでした。
 先程、都に出会わなければ、間違いなくそうしていた事でしょう。
 昨日、弥白にもう大丈夫だからと強い調子で言われた為に、もう一つの心残り
のために帰って来てはみたものの、再び誰かが弥白を攻撃した時に、彼女が耐え
られるのかと思うと、心配で溜まらなかったのです。
 一応こっそりと、執事に弥白から目を離さないようにと注意はして置いたので
すが、弥白は使用人に自分のプライバシーを侵されないように色々と仕掛けをし
ている様子でしたので、とても完璧を期す事は出来ないのでした。

 しかし今は、心に迷いがありました。
 暫くの間──実際にはほんの数分程度──迷った末に、稚空は決断を下すと、
ダイニングの方へと向かって歩いて行くのでした。


●枇杷町 山茶花本邸

「私はもう、大丈夫ですから」

 あの夜が明けた朝、稚空にそう言いました。
 本当は、未だ側にいて欲しい気分でしたが、これ以上彼を束縛できないと思っ
たのです。

 抱き続けてきた想いを遂げることが出来た喜びと、彼に彼女を裏切らせた心の
痛み。
 その時の弥白の胸中は複雑でしたが、大雑把に整理するとその二つに分類出来
ました。

 あの夜、稚空の目は、確かに弥白だけを見ていました。
 そして恐らくは頭の中も。
 弥白の知る名古屋稚空とは、そういう人なのでした。

 それが判るだけに、余計弥白は辛くなりました。
 その一方で、このまま彼とずっと共にありたいと、もう一人の自分が囁くので
す。
 このまま一緒にいたら、流されてしまう。彼も私も。

 だから、暫くは、せめて大会が終わるまでは、稚空の側から離れていよう。
 あの朝、そう決めたのです。

 それにどのみち大会までは、ハードな練習が続く筈。
 それまでは、新体操の事に専念すべきでした。

 自分を追い詰める存在のことも気にならない訳ではありません。
 しかし、どのみち稚空が側に居た所で、出来ることは少ないのです。

 弥白の見立てでは、その存在は少女の形をした人外の者。
 弥白はその存在と、ある契約を結んでいました。
 彼女──そう呼ぶのが適切かどうかは不明ですが──との契約は、怪盗ジャン
ヌの正体である日下部まろんとその周辺についての情報を集めること。
 そして、その情報を決して彼女以外には公開しないこと。

 その後者を弥白は破りました。
 正確には、破らされたというべきなのでしょう。
 何者かが、弥白が集めた情報を盗み出し、ネットワーク上で公開した。
 決して、弥白が望んだ事ではありません。
 でも、情報を管理仕切れなかったのは弥白の責任。

 その直後から弥白に対して送られて来た脅迫の数々は、約束を破った弥白に対
する彼女の報復に違い無い。そう思いました。
 一思いに止めを刺さないのは、きっとじわじわと弥白を苦しめるため。
 どうせ苦しめられるのならばと、死を決意しました。
 絶望の深淵。
 稚空に救われなければ、弥白はもうこの世には居なかったでしょう。

 しかし彼女に関しては、別の可能性もあるのではと弥白は考えています。
 その考えが生まれたのは、鏡の中にもう一人の自分──稚空に迫られ、拒絶し
てしまった頃の自分──が現れるようになってからでした。
 稚空への想いを遂げた今となっては、その考えは益々強くなっています。

 全ては、彼女の筋書きの上だったのでは。
 鏡の中のもう一人の自分も、彼女が私に囁きかけていた?

 彼女との契約。その報酬は、彼女と稚空との仲を取り持つこと。
 考えてみれば、彼女が弥白に報復しようとしているのであれば、稚空との仲が
深まっていく事を許す事は無いはずです。
 もちろん、単に彼女の思惑と現実がずれただけという可能性もありましたが。

 一度、彼女に事の真相を尋ねてみるべきでした。
 しかし、弥白は彼女に連絡を取る方法を知らないのでした。



 稚空と暫く離れている決意を固めた代わり、昨日一日、思い切り稚空に甘えま
した。
 新体操の練習はさぼると電車で街に出て、二人でデートを楽しみました。
 生憎と雨が降っていたのが残念ではありましたが。
 帰りに枇杷駅で降りた時に、長い長いお別れの挨拶をしました。
 今までとは違い、周りには人が大勢いましたが、気にはなりませんでした。

 今日も側にいてくれる。
 そう稚空は言ってくれましたが、弥白は強く稚空に帰るように言いました。
 もう二度と馬鹿な事はしないと。
 もっともその約束は、一度違えているのですが、とにかくそう約束しました。
 どこまで稚空が信じてくれたのかは判りませんでしたが、稚空は桃栗町に帰っ
て行きました。

 屋敷に戻った弥白は一人きり。
 人恋しさに、自分と同じ年頃のメイドを呼んで、お茶の相手を命じました。
 緊張した様子の彼女でしたが、話していく内に次第に打ち解けて来たようでし
た。

 実のところ今まで、自分の世話をするという名目で雇われたらしい彼女を始め
とする弥白と同じ年頃の美形の少女で揃えられたメイド達とは、必要以上に会話
を交わした事はありませんでした。
 正確には、どう彼女達と接して良いのか、良く判らなかったのです。
 彼女達のプロフィールは全て頭の中に入っていました。
 それぞれ、山茶花グループと何らかの関わりがあり、家族に不幸があった後に
この家に雇われてきた同世代の少女達。

 代々この家に仕える者達や自ら望んでこの家に仕えてきた者達。
 物心ついた時から側にいた彼らとは自然に接する事が出来ましたが、ここ数年
で雇われてきた彼女達だけはどうも苦手なのでした。
 事情がある事が判っていましたから、彼女達を使用人として使う事に躊躇いを
覚えたからです。
 とは言え、同世代の友達として接する事も難しそうでした。
 彼女達の方も何か遠慮している様子なのが判ったからです。

 夜も更けた頃。
 お風呂に入って寝ようと思い、メイドを下がらせようとした弥白は、ふとある
事に気付くと一緒にお風呂に入るように命じました。

 脱衣所の中でもじもじとしているメイドを前に、弥白はさっと服を脱ぐと、メ
イドにも服を脱ぐように言いました。

「あ、あの。お背中をお流しするのでしたら…」

 真っ赤になりながら、そう言うメイドに弥白は、優しくこう語りかけました。

「何を勘違いなさっているのかしら? 貴方の勤務時間はもう終わっています
わ」
「え? でも…」
「言ったでしょう。一緒にお風呂に入りましょうって。使用人としてでは無く…
そうね、お友達として一緒にお風呂に入って頂けないかしら」
「そんな…私がお嬢様と…」
「嫌かしら?」
「いいえ! …あの、喜んで!」

 暫し戸惑っている様子のメイドは、急に明るい笑顔を見せると、弥白に同意し
ました。

 両親を失い、つき合いのある親戚も無く、天涯孤独の彼女。
 高校に通う以外の時間は、部活にも入らず同じ年頃の娘のように遊ぶこともせ
ず、ただ山茶花家の為に働いている彼女。

 急に弥白は気付きました。
 ああ、この子も本当は寂しかったんだろうなと。



 日曜日の朝。
 目を覚まし、ダイニングに歩いて行くと、そこに昨日のメイドの姿がありまし
た。

「あなた…」
「お早うございます。弥白様。本日は部活の朝練だと伺っていますので、差し出
がましいとは思ったのですが、朝食を用意させて頂きました」
「有り難う」

 契約にある勤務時間内の今、二人の関係は主人と使用人へと戻っているのでし
た。


●桃栗町西部郊外 ツグミの家

「誰もいないのか」

 一人で出かけたらしいまろんの事を心配して、ツグミの家へ向かった稚空。
 しかし、呼び鈴を押しても、誰も出て来ませんでした。
 庭の方に回ってみても、建物の中には誰もいない様子。

「(何事も無ければ良いが…)」

 そう思う稚空でしたが、その一方で少しツグミに嫉妬もしています。
 自分がどんなにまろんに尽くしても得られなかったものを、彼女は手に入れて
いるような気がするから。
 実のところ、弥白の側にいた時も、まろんにはツグミがいるからと心の隅で考
えていた事は否定出来ません。
 もっともその頃、まろんがどんな状態にあったのかは、後で知ったのですが。

「(もしも無事だったとするならば…)」

 稚空の脳裏にもやもやと、いつかミストに見せられた映像が浮かびます。

「(そうなんだよな、あの二人は)」

 暫く、稚空は何事かを考えている様子でしたが。

「やっぱ、言い訳にはならんだろうな」

 そう呟くと、元来た道へと引き返して行くのでした。


●枇杷町 枇杷高校

 稚空が言った通り、今日も枇杷高校の新体操部は大会に向けての練習を行って
いる様子でした。
 山茶花弥白が参加しているかどうかは判りませんが、稚空が出ると言っていた
のだから、恐らく出ているのでしょう。

 とにかく彼女がいるかどうか、確かめようと思いました。
 中を覗こうと入り口に向かって歩いて行くと、別の入り口の前に、杖を持った
少女が立っているのに気付きました。
 その少女に、都は見覚えがありました。
 昨日、何かを撮影していた女の子。間違いない。
 そう確信すると、都の行動は迅速でした。
 少女に歩み寄り、中を覗いていたらしい彼女の肩を掴みます。

「ちょっと良いかしら?」
「何ですか?」
「昨日、駅前で何かをビデオで撮影していなかった?」

 少女の肩がびくり、と震えた感触が伝わりました。

「何のことですか?」
「顔ははっきり覚えてるし、その子も杖を持ってた。間違いないと思うんだけど
な」
「言いがかりは止して下さい!」

 少女の興奮具合から、彼女が撮影していた対象が誰なのか、都は確信しました。

「…判ったわ。人違いのようね。ありがとう」
「あの、私からも質問があるんですけど」
「何?」
「あなたは桃栗学園の東大寺都さんですよね」
「そうだけど? どうして…」
「うちの新体操部の様子を覗きに来たんですか?」
「違うわよ。あたしはただ…」
「スパイですね!」
「だから違うってば」
「そうまでして、弥白様に勝ちたいんですか!?」
「ちょっ…」

 妙な誤解をしているらしい少女を何とか宥めようとしましたが、時既に遅し。

「みなさーん! 桃栗学園のスパイがここに居ますよ〜!!!」

 少女に叫ばれ、都は戦略的撤退を余儀なくされました。
 昨日もここに来ていて、一年生の部員と話していたのだから、慌てて逃げ出す
必要など無かった事に都が気付いたのは、走り続けて校門にまで達した時でした。

(第136話 完)

 メイドさんの話に、オチをつけてみました。
 2/13の午後までの都&稚空&弥白様。

 では、また。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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