神風・愛の劇場スレッド 第116話『忘れていたこと』(4/20付) 書いた人:佐々木英朗さん
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 20 Apr 2001 17:49:25 +0900
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佐々木@横浜市在住です。

<9bbolh$afo$1@news01bd.so-net.ne.jp>の記事において
keitai@fa2.so-net.ne.jpさんは書きました。

>> 石崎です。

こんにちわ。

>> これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
>> 妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。

という事で。


>> >>> ★神風・愛の劇場番外編 『道具』

>>  同じ懸念があったので、今回は一部に娯楽を導入してみました(そうか?)。

娯楽というよりは目の保養。(笑)

>> >>> ★神風・愛の劇場 第113話『迷い』

>>  一応、再登場も視野に入れて出したキャラなのですが、登場を決めたのはこの
>> 話を書いている途中だったりします。やはり名前と容姿の設定が各キャラ毎に必
>> 要に…(笑)。

そういう部分が物書き屋として結構面白かったりしますからね。^^;

>> >★神風・愛の劇場 第114話 『帰結』

>>  後で飛び上がっている事から推定して、行間を読みたくなってしまうのは妄想
>> のし過ぎでしょうか。

お好きなだけ深く読んで下さい。その為の歪曲表現です。(笑)

>>  続いて着たゆったりした服というのも、隙間から色々覗いたりして絵的には妄
>> 想出来る服なのですが(笑)。

ノースリーブで腋の下が大きく開いているワンピース…というのが佐々木案。*^^*
# 家の中なので夏に着るような服装だと思っておくんなせぇ。(笑)

>> #基本的に、天使の心を完全に失った訳では無さそうで。

その辺りは都ちゃんに対する態度などから薄々感じられましたので。

>>  ツグミさんの料理のメニューは、某所で書いていたメニューですね。
>>  手抜きの方法も(笑)。

原則として事前に実地で確かめる事になっております。^^;

>>  フィンが中身を確認していたのは、椎茸が入ってないかという事なのでしょう
>> ね。
>> #アニメだけだと絶対判らないシーンですね。

はい。ですので、何か苦手な物があるらしいという所で表現を止めています。

>>  まさか、学校まで休んでしまうとは。
>> #最後にあんな状態になって、気にしない方が変ではありますが。

あの後であれば、まろんちゃんは滅多な事では探すのを止めないだろう
という展開上の理由が7割。
朝の間だけ探し回って、取りあえず登校という案もあったのですが、
石崎さんパートが一日遅れていて稚空がこの日(9日)登校するかどうか
はっきりしない段階では学校シーンを書く訳にもいかんし…
という消極的理由が3割程。(笑)

>>  フィンが「今の片割れ」と言ったのが気になります。
>>  それと、ミストが「似合うだろうか」とアキコに言った台詞も。

そんなに深いウラは無いつもりなのですが。^^;

>> #実は最初読んだ時、フィンがアキコをまろんの二重身だと勘違いしたと読んで
>> いまったのですが、アキコの事をフィンは知っているのでそれは無いだろうと思
>> い直しました。

ちなみにあのシーンのミソはノインの来訪だと奥にアキコを引っ込ませて
しまうミストがアキコをそのまま居させた所です。
多少なりともまろんちゃん似のアキコが居るとフィンにとって居心地が
悪いだろうなぁという意味合いのミストの嫌がらせ。(笑)

>> ★神風・愛の劇場 第115話『受容(前編)』

いたたまれなくなって帰ってしまった弥白様。
成程。稚空とはすれ違ってしまいましたか。
約束しないで迎えに行くと会えないってのはいかにもラブコメです。^^;
でも神楽はちゃんと出迎えたぞ、修業が足らんな稚空。(笑)
# 今のままでは弥白様が引き篭もりになってしまいそうで不安。

ゲストの女の子。ショートヘアで小柄で眼鏡というと……
時節柄、那己ちゃん@くるみ2式の顔が浮かんでしまいます。*^^*
# 石崎さんの家では地方局映らないのでしたっけか。
どうやら弥白様に対して「本気」らしい。(爆)
ストーカー属性がありそうなので鋒先が弥白様本人に向かないと良いのですが。
ま、毒気が抜けた様子ですので大丈夫だとは思いますけれど。
# しかも"素顔は美形ネタ"とはまたお約束な。おマケに自己突っ込み入り。^^;;

稚空に対して誰かがいずれは問いただしていたであろう質問を
この娘に言わせましたか。自問以外の形で弥白様の方に比重を置いた
詰問を出来る人間は確かに居ませんし、隙間を突いた配役って感じ。
そして大暴れする眼鏡っ娘。そうですか、そう来ますか。
水色って辺りがそこはかとなく大人しい感じを醸し出してますね。(爆)
眼鏡に悪魔が憑いていたのは眼鏡を通して何時も弥白様を見ていた
想いを利用されてしまったという事なのでしょうね。

稚空、美味しいんだか損したのか良く判らない夕暮れでありました。
# で、何処触ったんだ?柔らかかったのかな?(爆)

それにしても、弥白様(小)が焦らぬ様にと言うとは意外。
弥白様以上に良くも我慢してるものです、ミストは。^^;
別に少しぐらい怪我していても用は済む気がしますが、何が気に入らないのか。
万全な体調にさせてリターンマッチとか思ってるのかな。(爆)
それでも弥白様は小さな幸せを得た様です。
# また泥沼の深みに半歩前進と。^^;;;

どうやらシルクの口振りからすると、ブレスレットを渡した日以後にも
ツグミさんの家を訪れている様ですね。今日(8日)とかかな。
# シルクには更に何かお仕事があるらしい。

>> 予告編(気分次第で変更あり)
>> #次々回とついていないのは、何話後に出て来るのか不明な為です(爆)

Coming soonって奴ですか。^^;;;

## では、本編へ。


★神風・愛の劇場 第116話 『忘れていたこと』

●オルレアン

何度目かの呼出し音を聞いてから、まろんは受話器を戻しました。
そして考えます。どうしてつながらないのかを。
電話機の故障を真っ先に考えました。でも、それは否定しなければ
なりません。自分の家の電話は先日ちゃんと使えました。何を話したかを
思い出しかけてすぐに振り払います。相手の電話は先程通じたと
都に聞いたばかり。もう一度試してみようか迷いますが、また無駄かも
知れないと思うと実際に試す気は起きませんでした。
特に変わった様子は無かったとは聞いたものの、大怪我をさせてしまった
かも知れないという懸念が多少薄らいだだけで、本質的には何も安心する
材料は無いのです。不安な気持ちだけが尽きる事無く溢れます。
当然何も手に付かず、リビングの片隅にうずくまっているだけでした。
どの位時間が経ったのか、ふと玄関の呼び鈴の音が耳に届きました。
まろんは初めは無視してしまおうかと思ったのですが、その鳴らし方を
聞いて無視しても無駄だと判り渋々応対に出る事にします。
扉を外が覗けるくらいに開くと思った通りの顔がありました。

「はいはい。何でしょう都さま」
「居るんなら早く出てこんか」
「せっかちなんだから」
「いいからドアを開けてよ。両手が塞がってんだからさ」
「は〜い」

まろんが扉を大きく開くのを待ち兼ねたとでも言う様に、都はさっさと
玄関の中へ入って来ます。一緒に良い匂いのする空気を連れて。

「ほれ。御飯」

都が持ってきたお盆の上には銀紙で被った丸い皿が二個乗っていました。
程よく焦げたチーズの香りがそこから洩れ出ています。

「グラタン?」
「ドリア」
「有難う。でも、どうして?」
「遅くに手ぶらで帰ってきたでしょ。どうせ夕飯の事なんて考えて無い
 だろうと思ったのよ」
「ちっ…」
「何よその反応は」
「見透かされているのが口惜しいの!」
「口惜しければもっと大人になりな」
「へいへい」
「上がるわよ」
「うん」

実際には、まろんが返事をする前にサンダルを脱いで廊下を歩き出している都。
その後ろ姿を見て、まろんはある疑問を感じました。

「ねぇ」
「何よ?」
「どうやって玄関のチャイム鳴らしたの?」

都は立ち止まって振り向くとニヤリと笑って答えます。

「そんな恥ずかしいマネを説明させないでよね」

そして都は勝手知ったるとばかりに奥へ入って行きました。



都と二人で囲む食卓。そんなに珍しくも無く、当たり前の様な時間が
今のまろんには特別な事の様に感じます。そして、また甘えてしまった事に
ちょっぴりの自己嫌悪。それでも他愛の無い話に花を咲かせるひとときを
満喫しました。
しかし、都には判っていました。まろんの瘠せ我慢がほころび始めている事が。
まろんとは長い付き合いなのです。まろんがまず滅多に他人には見せない
不安気な顔が、近ごろ都の目には何度も映っているのですから。
ふぅっと話題が途切れた頃合を見て、都は思った事を切り出してみました。

「あのさ」
「ん?」
「凄く気になっている事があんのよ」
「何?」
「気になって気になって仕方無いんだけど、イマイチ素直に言えないっていうか」
「そうなの?都らしく無いなぁ」
「行動起こせば簡単だと思うんだけどね。きっかけって奴かな」
「きっかけか。うん、大事だよね」
「誰かがど〜んと背中押してくれるとかあれば行けるかも」
「言ってみなよ。何?私に出来る事なら…」

都の目がじっとまろんを見詰めました。思わず言葉を止めてしまうまろん。
やや間をおいて都が言いました。

「お前の事じゃボケ」
「え゛?」
「気になる事があるのに行動起こして無いのはあんただって言ってんのよ」
「私…」

ふぅと溜息を付く都。そして続けます。

「放っておこうかと思ってたんだけどさ。今のままじゃ、まろん一人では
 解決出来ないんじゃないかって気がしてきちゃったのよ」
「私は別に何も…」
「あっそ」
「そうだよ」
「ならいいわ。それはそれとして、明日付き合ってもらうわよ」
「明日?」
「そうよ。まろんは明日、学校行って朝連出て授業受けて放課後も練習してその後
 私に付き合うのよ、いい?」
「明日は…」
「別に何も無いんでしょ?違うの?」
「うん。判った」
「よろしい」

都はそれだけ言うと食べ終わって空になった皿を再びお盆に乗せて
立ち上がりました。

「じゃ、帰るわ」
「あ、待って。お皿洗って返すよ」
「結構。これ気に入っている皿だから割られると困るのよ」
「何よ、それ」
「それより。まろんはさっさと風呂にでも入って早寝しな」
「うん」
「顔の汚れも洗うのよ」
「え?」

まろんは慌てて自分の部屋に駆け込むと鏡を見て叫びました。

「何これ!」

額や頬に、まるで遊びから帰ってきたばかりの子供の様に泥の筋が付いています。
まろんが部屋から出てきた時には都はもう玄関から外に出ようとして
いました。まろんが追いすがって言います。

「何で教えてくれないのよ!」

空っぽで軽くなったお盆を片手で支えて扉を開きながら、都は再びニヤっと
笑って答えました。

「面白いからに決まってるでしょうが」

そしてまろんが抗議する前に扉は閉まってしまいました。
閉じた扉に向かってまろんは呟きます。

「…何にもしてない訳じゃ無いの。だけど」

それでもやはり行動するしか無い。結局、都が言ったのはそういう事
なのだとまろんは理解する事にしました。そして素直に都の言った事に従い、
ゆっくり風呂に浸かった後に早々とベッドに潜り込みました。
心配事はありましたが、昨夜からの疲れがすぐにまろんを眠りの底へと
沈めていったのでした。

● …

晴れている様でもあり曇りの様でもありました。正面は明るく見えますが、
それ以外の周囲は何となく感じ取る事が出来るものの、白黒の写真に
ベールを掛けた様な曖昧な印象しかもたらしません。
もっとも、それで困るという気はしませんでしたが。
自分がぼんやりしていた事に気付くのと、そこが桃栗町の街角だと
気付くのは殆ど同時でした。どちらかに先に気付いた様にも思えるのですが、
どちら共が先の様でもあり後の様でもあります。
ですが、すぐにそんな事はどうでも良くはなっていました。
暫く歩いていると声がしました。とても良く知っている声です。
その声に導かれて歩を進めると、やがて何も無い場所へ辿り着きました。
意識して周囲を見回せば、そこが空き地等では無く公園なのだと判ります。
声は公園中を動き回っていました。声の主を求めて更に進んで行くと
ベンチを見つけました。座っている人影が見えたので近づいてみます。

あら?

予想外の人物が居てちょっと驚きと喜びが湧き上がるのですが、すぐに
人違いだと判りました。もっとも最初に想った友人の顔も夜空の下で
一度見たきりでしたから、当人なのか人違いなのかすら何となくという
感覚以外には何も根拠など無いのですが。
その相手は少し遅れてこちらに気付いた様子で、初めは戸惑った様に
見えました。ベンチから腰を浮かせて立ち上がろうとしたのですが、
じっと見ているとやがて再び座ります。そして互いに見詰め合いました。
声が。良く知っている声が二人の間を行き来していました。
次第に近づいて行きましたが、今度は相手は特に気にした様子も無く、
何時の間にか同じベンチの隣に腰掛ける事になっています。
色々な事を話しました。もっとも一方的に喋っていた様な気がしますが。
そうしてただ何と言う事も無い時間が流れるのに身を任せました。

●桃栗町内某所

明け方近く。とはいえまだまだ辺りは真っ暗な時間。理由も無く目を醒ました
ミストは辺りを見回して舌打ちをします。苛々の鋒先はまるで人間の様に
熟睡してしまっていた自分への物。今夜は、今の情況では、先日の様に
散歩がてらの追跡を行う気分にはなりませんでした。
即座に知覚能力を最大限に発揮すると、あっさりと目的の場所を探し当てます。
それは意外にもごく近くでした。すぐさま二つの場所を繋ぐ穴を開いて
ミストは向こう側へと飛び出します。行った先でミストは二つの人影を
見い出しました。探していたアキコとそしてもう一人。
アキコはミストの顔を見て一瞬だけ目を見開いた様にも見えましたが、
すぐにわずかながら俯いてしまいました。ですがその時のミストの視線は
もっと下の方に注がれていたのです。軽く下げたアキコの左手がベンチの
上に乗っています。その手の上には隣に座ったもう一人の右手が触れていました。
正確にはその右手が、実体の無いアキコの手と重なってしまっているのですが。
ミストは一切の感情の浮かばない顔をしていました。そして右手を軽く上げて
人指し指を立てると極く軽い所作でアキコの隣の人影に向けて指先を
振り下ろします。辺りには何の変化も無くただ微かに衣擦れの様な音がして、
それに続いてやや重いどさりという音が響きます。その音に気付いて
アキコが視線を向けた先には肩口から綺麗に切り落とされた白い右腕が
落ちていました。目を瞠り両手を口許に添えてアキコは後退る様に
ベンチを立ち上がります。しかし隣の人影は相変わらず何の動きも
見せません。先程からじっとミストを見詰めているだけ。
ここに来て初めてミストは口の端を歪めるとこう言いました。

「意外に浮気者だな、お前」

それからミストはアキコと、そして何時の間にか傍に戻っている別の黒い影を
伴って再び姿を消すのでした。

●桃栗町郊外

ベッドの上で上体を起こして、ツグミはしっかりと目が醒めるのを待って
いました。自分の頭の中がおかしくなってしまったかとまで考えた、昨日までの
尋常では無い夢は見ませんでした。その代わりに見たのは懐かしい風景。
子供のころに遊んだ記憶のある公園。そして今は居ない大切な家族。
見知らぬ誰かが傍に居た様な気もします。

「そんな事、あるはず無いのにね」

現実には得られなかった想い出のひとコマが、朝の光の中に消えていきました。

(第116話・完)

# 2月10日朝まで。

●次々回予告編

「ほれ、行くわよ」

# 予告の抽象度増大。^^;

では、また。

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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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