その日、私は郊外の閑静な住宅街を通り抜けて、小高い丘に続く道を歩いていました。 これから訪れるところは、ご主人様の古くからのお知り合いのS男性のお宅です。 「その方の調教に預かってきなさい」とのご命令があったからです。 実はその数日前、あることが原因で気が動転し、我を見失いそうになりました。 そんな私に呆れられたのか、目をさませとおしゃっているのか、とにかくご命令をいただきました。 あまり気が進まなかったのですが、ご命令はご命令です。ご主人様以外の方の調教など考えられないことだったので、ご主人様のお考えが理解できず、とても悲しく、重い足どりで歩いていました。 しばらく行くと、そこは大きなお屋敷。通されたのはかなり広い和室でした。 そっと足を踏み入れると、「いらっしゃい。よく来ましたね。話は聞いています」と、低く響く声がしました。 和室の奥には、大柄な男性が和服姿で座っていましたが、暗くて顔の表情など一切見えません。 そして、私は目隠しをされ、縄をかけられ身動きできなくなりました。 恐怖のあまり体が震えてくるのがわかります。 しばらくして、空を切る音とともに、体中に鋭い痛みを感じました。 鞭でしょうか。痛みに耐えている内に、私の意識は遠く消えていきました。 しばらくして目がさめると、体は腫れあがり痛くて身動きができません。 でも、目の前にはその男性がゆっくりお茶を召し上がっている姿がありました。 とにかく「お礼のご挨拶をしなければ」と思い、やっと体をおこし、「ありがとうございました」と手をついて頭を下げました。 すると、静かな声で、「○○さん(ご主人様のお名前)の奴隷らしいな…(笑)」と一言。 そして、しばらくすると、「大丈夫、あなたならちゃんとやっていけますよ。自分自身を信じなさい…」、と。 驚きました。 最後の「自分自身を・・・」の一言は、ご主人様のお声だったからです。 はっとして顔をあげた瞬間、「夢」から覚めました。 :::::::::: :::::::::: この夢をみる前日、ご主人様にお会いした時。 新しく正規の奴隷さんが増えたとのお話を伺いました。 その瞬間、私はショックとともにすっかり動転し、自分自身を見失いそうになってしまったのです。 本来ならば「おめでとうございます」とお伝えしたかったのですが…、それもできず…。(なんと情けない!) おまけに、まっすぐ家に帰れず、どこをどう彷徨ったのか記憶にないほどでした。 ご主人様には、以前から何人かの奴隷さんがいらっしゃいました。 いずれも、いわゆる奴隷誓約書を交わされた正規の奴隷さんたちです。 しかし、私は最初から正規の奴隷として受け止めてはいただけませんでした。 ご主人様が、奴隷に求めていらっしゃる諸条件をみたしていないかったから…。 それを承知の上で数年ほどご主人様の元に置いていただいてきました。 もちろん新しい奴隷さんが増えることも、覚悟はしていたものの、私の中では、いつか私も奴隷誓約書を書かせていただける日が訪れるのではないか、いつか正規の奴隷にしていただけるのではないか、という甘い願望があったのでしょう。 その日も、新しい奴隷さんが羨ましいという気持ちよりも、ご主人様が望んでいらっしゃる「奴隷」として、十分にお応えできない自分が、本当に悲しくて、情けない思いで一杯でした。現実は厳しいものだと…。 ただ、ひとつだけ気になっていたことは、ご主人様のおっしゃった一言です。 「おまえは今のままでいい。何も変わることはない。今まで通りついてきなさい」 しばらく、ご主人様の言葉を抱きしめながら歩いておりました。 どんなに落ち込んでも、どんなにあがいても、「私は私」なのです。 ご主人様と私の関係は、何も変わることはないのです。 それなのに、なぜ私は落ち込んでしまったのでしょう…。 きっと、他の奴隷さんたちと自分のことをどこかで比べていたからではないかと…。 私はどこをみて歩いていたのでしょうね。(汗) ご主人様の視点に立たせていただくと、奴隷ひとりひとりが違う人間なら、支配も異なって当然…。 ご主人様が何人奴隷さんを飼っていらっしゃっても、その支配は奴隷さんによって全く違うものであるということに、ようやく気づかせていただいたのです。 ですから、他の奴隷さんへの支配を、自分のこととくらべるのは全く無意味なことであり、くらべる必要もないのでは…と。 それよりも、ご主人様が私に望んでいらっしゃることは何か、そのことを考えさせていただくことの方がずっとずっと大切なことだったのです。 そう、今までのように「私にしかできない服従をさせていだくこと」。 それなら、まだまだ‘させていただけることはたくさんあるはず…♪’ と、気持ちも明るくなってきました。 「私が私らしく」過させていただけるのは、私だけにいただいている支配があるからこそ…。そして、私にしかできない服従が許されているから…。 「夢」の中で見せていただいたように、ご主人様の元に置いていただいている限り、「自分自身を信じて」生きていくことができると、改めて実感させていただけたのです。 それは、私の全てがご主人様のものであるから…。 奴隷誓約書があってもなくても、それはそれ。 正規の奴隷さんと比べる必要もなければ、誓約書のない自分を卑下することもないのでしょう。 ご主人様が「今のままでよし!」とされるのなら、それがベストなのですから…。 「今までの延長線でいいんだ♪」ようやくそんなふうに思える自分があります。 (*^^*) 今回の件でも、改めてご主人様のおっしゃる支配の奥深さに驚くと同時に、また次の扉を少し見せていただいたような気がしております。 どんな扉なのか、まだはっきりわかりません。ましてその先に何があるのか、知るよしもありません。ただ、肩の力がすぅ〜っと抜けて、心も体もずっと軽くなったので、きっといつか気がついた時には、その扉の前に立たせていただいているのではないかと…。 そんな気がしています。 ご主人様、まだまだつまづくこともあると思います。 でも、ご主人様の元でなら、起き上がることもできる、ということを 学ばせていただきました。 「もう大丈夫!」と、ちょっとだけ胸を張ってつぶやけるようになった 祥子がここにおります。(*^^*) これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます。 祥子 |