夢への扉の前で



 ご主人様の元に置いていただくようになってから、確かに何かが変わっていきま

した。

無理矢理方向付けられるのではなく、気がついたら、以前の自分とはどこか何か

が違うのです。

 具体的に何がどう変化したのか、よくわかりませんが、今のあるがままの自分

にOKをだせるようになったことでしょうか。

 また、あえていうのなら「悩む」ことがなくなりました。「悩む」ことは、その時の

自分にとっては無理があるからではないかと。ならば、自分に無理をすることは

やめよう、と。

 そんな風に物事をとらえることができるようになってから、どれほど楽になったこ

とでしょう。肩の力がふ〜っと抜けたような気がしました。

 そして、私が一瞬でも迷い考えたことについては、ご主人様に全てお話してある

ので、それが後々、どのように私の生き方に影響してくるのか、ずっと見ていてく

ださる方がいらっしゃるというだけで、安心して過ごせるようになりました。


 ご主人様の元に置いていただく前から、私には夢がありました。

 その時々の仕事をしながら、「これじゃない! 私が本当にしたいことは別にあ

るんだ!」という思いが強くなり、いつかその夢が実現してほしいと願いながらチ

ャンスを探してきました。

 しかし、チャンスなどそう簡単に訪れるものでもなく、また自分が努力したから必

ず出会えるものでもないという、現実の厳しさも味わいました。

 一方で自ら諦めることだけはしたくなかったので、その時々の私にできる地道な

努力は続けてきました。もはや、私の夢は私だけのものではなく、私を支配してく

ださるご主人様と共有させていただいている夢だと思ったからです。私の全ては

ご主人様のものだから…。


 静かな時間が流れていきました。


 そして、あるきっかけからチャンスが訪れました。当初は、ひとつのステップアッ

プとなるよい機会という程度だったので、肩ひじはらずに飛び込めたのもよかった

のでしょうか。

 それまでの私なら、石橋を叩いてそれでも渡ろうかどうしようかと迷ったと思いま

す。

でも、石橋の前に立った時、ご主人様がすぐ後ろにいてくださると同時に、橋の向

こう側で、いつものように待っていてくださると思えたのです。

 一歩一歩、丁寧に進みました。不安や心配よりも、橋の向こう側にご主人様が

待っていらっしゃる・・そんな思いが強かったと思います。そして、橋の上を歩いて

いる自分自身を信じていられる感覚でした。

 また、途中には、いつもの私だったらガックリ落ち込んでしまうような出来事も多

々ありましたが、なぜか「それはそれ!」と割り切って、また前を向いてひたすら

歩き続けることができたのは、今でも不思議です。

 そして、やっと橋の向こう側に辿り着くと、ご主人様のお姿が見えました。もちろ

ん、いつもと変わらぬ表情ですが、温かく包み込んでくださる眼差しがどんなに嬉

しかったことでしょう。そして、私がこの橋を渡りきれると、最初から信じていてくだ

さったのは、他でもないご主人様だったのではないかと。

 気がついたら、自分のライフワークとも言える扉の前に立っていました。ご主人

様によるところがどんなに大きかったことか、言葉では言い尽くせない思いです。

 でも、これからが本番です。それこそ、想像もつかないほど大きな壁にぶつかる

かもしれません。立ち止まってしまうこともあるでしょう。でも、ご主人様がいらっし

ゃれば、きっと乗り越えられるという、安心感があります。


 こんなに大きな愛情で、黙って見守ってくださるご主人様の忍耐には頭の下が

る思いです。随所で的確な言葉をいただけるのは、私の行動パターンや思考回

路を全てお見通しであるからなのでしょう。さすが、ご主人様・・。(*^^*)

 そして、その時々の私に何が必要なのかを最もよくご存知でいらっしゃるので、

沈黙の支配がどんなに奥の深いものであるかを、いつも実感せざるをえません。

これは、ご主人様の支配が一方的なものではなく、奴隷の私に自ら考える時間、

つまり私にしかさせていただけない「服従」の機会を与えてくださっているからで

はないかと。

少しずつ、自分の足で立っていることが実感できるようになりました。

 今、ご主人様の奴隷であることを誇りに思える自分が、どこかとても嬉しいのです。

 これからも少しずつ私の何かが変わっていくと思います。安心してその時々を過

ごし、自分自身を素直に受け止めていけるのは、全てをご主人様がご覧になって

いらっしゃるから・・。

「ご主人様、10年後の祥子を楽しみにしてくださいませ。

 これからも、どうぞよろしくお願い申し上げます」

                                                祥子



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