タムパと意欲最下位

 タムパと聞いてラジオのことかと思ったのは昭和の人間だからか。 コストパフォーマンスの「コスパ」と並び、タイムパフォーマンス、 効率重視で無駄なことはしたくないという働き方をドラマで見て、 何かモヤモヤした。

 一方、日本人の働く意欲が世界最低順位だと聞いた。 その一因として、「働き方改革」の弊害で仕事への執着が減ったからではないかともいう。 働き方改革と称して残業時間が法律で一律制限されたときに疑問を感じていたので、 「そらみたことか」と思う。

 業種にもよるが、私のようにコンピューターシミュレーション、 それも既製ソフトでは扱ったことがあまりないようなテーマのシミュレーションでは、 試行錯誤して「やってみないと分からない」部分がままある。 それがまた面白いのだが、そうした作業を一律の勤務時間で切られてしまうと、 「あともう少し工夫したいのに」という一歩が踏めなくなる。 それがストレスとなる。

 強制残業で過労死した人の遺族による訴えがそうした「改革」の発端なのだが(まさにポピュリズム)、 「残業しない権利」と同時に「残業する権利」も認めるべきだろう。  

 「時は金なり」というが、とんでもない。 時間はお金と「イコール」ではなく、お金より価値があると思っている。 だからこそ、仕事の時間もなるべく面白おかしく楽しく過ごしたい。

 そこまで考えて、「タイパ重視」の違和感の理由が分かった。 タイパは消費時間だけの尺度で有意性を評価している。 そうではなく、どれだけ興味を持って自分なりの充実した時間を過ごしたのか、 時間の濃密度を尺度にすると評価が変わってくる。

 つまり、タイパ云々で考えることは、既に労働時間を濃密にできないとあきらめている前提だ。

 もちろん、価値観は人それぞれで、押し付けるつもりはさらさらない。 しかしQOL(生活・人生の質)は短絡的な時間尺度だけで測るのは浅はかで、いろいろな尺度で測るべきだ。 振り返って、自分なりに仕事を楽しめていることはつくづく幸運なのだと思う、

 (2024.3.4)


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