私の愛車にはETCを付けていない。時代遅れで肩身が狭いが、先日、高速道の料金所でETC専用のゲートと「一般」のゲートの2つがあって、ETCは大行列で渋滞する中、他方は誰も通らないので快適に通過させてもらった。こういう場合は、ETCを切って現金を払った方が早いかもしれない。少なくとも急きたてられる心配がないので、悠々と小銭を勘定できた。
とはいうものの、無人のETCに比べて「一般」ゲートは人件費がかかり、その分料金に跳ね返っていると思うと心苦しい面もあるが、雇用の創出という面もある。係の人に声をかけてもらってちょっと和んだが、係の人にとっても「一般」の運転手はありがたい「お得意さん」なのかもしれない。
さて、「一般」という呼び方は「ETC」に対する、「ETC以外」という区分けである。思わず連想するのが、芸能ニュースで聞かれる「一般人」という言い方だ。こちらは「芸能人」とか「有名人」に対しての「それ以外の人」という意味である。「非有名人」「有名でない人」。なんだか「庶民」とか「下々の者」、「取り柄のない人」と言われている感じもするが、そういう区別をするから、思いあがって動画をとられた携帯を取り上げて持ち去るような人間が出てくるのではないか。「人の上に人を作らず」である。
ETCの話に戻るが、「一般車は左に寄れ」という標識を見て、大型車や特殊車両は右なのかと思ってしまった。つまり、何に対しての「一般」なのかが明示されないと、「一般」の意味をなさない。芸能ニュースを聞きながらこの標識を見たら、「右側は芸能人専用なのか」と思うかもしれない(まさか)。あるいは、VIPの車の専用レーンかと思うかもしれない(まさか)。
話は変わるが、マジック業界(?)では「玄人と素人」の議論がある。アマチュアの愛好家がテレビに出るときに「素人」と呼ばれたり「玄人はだし」とほめられることがあるが、プロマジシャン以外でもマジックに詳しい人はいるわけで、芸道としては「素人」という分類はあたらない。また、マジックをやったこともなく、よく知らない人を「素人」というのも気が引ける。知ってる・知らないで差別をするべきでないし、圧倒的多数のそのような観客こそマジックが向き合うべきものだろう。そういう観客を「一般人」というのか?一方、タネを知っているマニア相手のマジックもあるが、裏の裏をかいて結局不思議でなくなったりして、ジャンルが異なる別物と考えるべきだ。
もっと言うと、恩師高木先生が評していたように、プロマジシャンと言っても商売にしていると言うだけで、「プロフェッショナル」の「プロ」ではなく「プロレタリアート」の「プロ」だったりして、では「玄人」というのはどっちを指すのだろうか。ちなみに、個人的には「玄人はだし」と言われてもうれしくない。職業としてのエンターテインメントの技能は(いかに劇場を沸かせて拍手を引き出すか、評判を立てるかなどで)、アマチュアとして楽しむマジックの技能とは別物だと思うからだ。
(2014.10.31)