誤記アラカルト

 街中の看板で「カレーライス丼」というのを見かけたが、「かつ丼」や「うな丼」の例で考えれば、どんぶり飯にカレーライスを盛ることになり、ご飯がダブルで多すぎる。逆に、丼は器しか意味してないのなら、「かつ丼」や「うな丼」は、カツやウナギだけになってしまう。

 「夏バテ回復」というのも味わい深い。「夏バテ状態からの回復」の略だろうが、夏バテからせっかく直って来たのに「バテ」を回復するという、迷惑な話だ。

 電車の中の広告で「Co2」がどうのこうのというのもあった。CO2をシャレて書いたのだろうが、オーを小文字にしてCoとすれば、コバルトのことだ。私の世代でコバルトというと鉄腕アトムを思い出すが、ここは出る幕ではないだろう。

 今夏の猛暑の中、連日ニュースで「どこそこはXX . X度、どこそこはXX . X度」と報道され、小数点以下1桁の数字がどれだけ意味があるのかと思うが、それに並べて「どこそこはちょうど35度」と言うのに違和感を覚えた。測定値の少数点以下の桁数表記は、学校でうるさく指導されたものだ。35度と35.0度は意味が違う(「35度」は34.5度から35.4999…度のはず)。まして「ちょうど」等と言われると、厳密に35度ぴったりなのかい、と突っ込みたくなる。だいたい、気象情報の報道は、理系にはひっかかるものが多い(「風速Xメートル」と言うがメートルは長さの単位だし、「浸水した領域はX平方キロ」と言うがキロは単位ですらない)。そんなことを思っていたら、いつのまにか35ではなく、他と桁数を合わせて35.0という表記に改められていた。

 数の表現で気になる「あるある」は、集会参加者数の主催者発表と警察発表の違いだ。先の安保法案反対デモ(集会)の場合も何倍も違い、もはや誤差の範囲を超えている。このデモに関しては、実地に取材したリポルタージュの報告で、マスコミが意図的に一部を切り取ってイメージ作りをしているという話もあり、実態はよく分からない。また、議会制民主主義としては「民意」は投票行動で示すべきで、議決は情緒的な声に左右されるべきでない(日米安保、北朝鮮理想論、PKOなどが好例)という辛坊治郎氏の意見に同感だ。ともあれ、極度に参加者数を多く喧伝するような(あるいは、故意でないなら、数すら把握できない)団体には、自国の安全を委ねる気にはならない。

(2015.9.20)


HAのHP