神風・愛の劇場スレッド 第166話『きょうだい』(その8)(9/1付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 01 Sep 2002 16:14:18 +0900
Organization: So-net
Lines: 405
Message-ID: <akseoa$4pe$1@news01cc.so-net.ne.jp>
References: <ageulu$6ri$1@news01dd.so-net.ne.jp>
<ah3tp3$glr$1@news01db.so-net.ne.jp>
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石崎です。

神風・愛の劇場 本編第166話(その8)です。

なお、今週は(その9)まであります。

#本スレッドは神風怪盗ジャンヌのアニメ版第40話より着想を得て続いている
#妄想小説スレッドです。所謂二次小説的なものが好きな方だけに。

(その1)は、<af4q7o$k82$1@news01bf.so-net.ne.jp>から
(その2)は、<afvb3c$9p6$1@news01cf.so-net.ne.jp>から
(その3)は、<ageulu$6ri$1@news01dd.so-net.ne.jp>から
(その4)は、<ah3tp3$glr$1@news01db.so-net.ne.jp>から
(その5)は、<ai0rm3$8ji$1@news01cc.so-net.ne.jp>から
(その6)は、<ajo8kt$ct$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その7)は、<akalv3$910$1@news01di.so-net.ne.jp>から

それぞれお読み下さい。




★神風・愛の劇場 第166話『きょうだい』(その8)

●天界・大天使リルの執務室

「魔界に動きが?」

 その報告がリルの元に届けられたのは、丁度朝のお茶を口にしようとした時で
した。

「はい。こちらをご覧下さい」

 リルの秘書役を務める若い準天使は、水鏡の前に立つと念を込めました。
 すると、水面に何かが映し出されました。

「最大望遠で、しかも複数の術者を経由しているので、像が不鮮明ですが」
「この前程ではありませんが、多いですね」
「個体数数百と推定されます。現在、魔界の通常空間側『入り口』付近で集結中。
なお個体数は増加する見込みです」
「大隊規模ですか。部隊編成は?」
「この距離では…。偵察隊に接近を命じますか?」

 リルはため息をつくと、やがて言いました。

「このまま遠距離での監視を続けて下さい。これ程の規模です。必ず前衛で哨戒
中の部隊がいる筈。むざむざ死に急ぐことはありません」
「了解しました」
「それから、緊急の幹部会の招集を提案します。議長に連絡を」
「はいっ」

 慌ただしく準天使が出て行った後。
 リルは水鏡の前に立つと念を込めました。
 すると先程とは比較にならない程鮮明な像が映し出されました。
 それを見て、リルは軽い驚きを覚えます。

「情報は正確でしたか。それにしても」

 水鏡の一点にあるものを見つけ、リルは呟きます。

「まさか、自分で参加するとは」


●…

「今日のことは、忘れて下さい」

 衣服を直しながら、トキは言いました。

「忘れて…って、どういう事ですですっ!?」
「言った通りです。今のことは、忘れるのです。それがお互いのため」
「好きだって言ってくれたのは嘘だったんですです?」

 動揺していたのでしょう。
 起き上がろうとして、そのまま倒れて床に突っ伏してしまいました。

「私は嘘は言いません」
「だったら」
「ですが、『掟』はご存じですね」
「みんな裏では好きにやっているですです!」
「それが露見して、懲罰を受けている天使も少なくないこともですね」
「そう…だけど!」
「もう一つか二つ」
「何ですです?」
「今まで真面目にやって来た私達です。後少しで正天使に昇進出来るはずです」
「トキが助けてくれるから…」
「セルシアの能力が無ければ、ここまで早く昇進は出来ません」
「だけど」

 私はトキに助けて貰わなければ、何も出来ない。
 今までは何とかやってこれたけど、何時かは置いて行かれてしまうかも。
 そうしたら、トキは私のことをそれでも見ていてくれるの?

「正天使になれば、恋愛は自由です。その時こそ、堂々と私達の関係を公にする
時です」
「判りましたですですっ」
「セルシア」
「頑張って、トキと一緒に正天使になるですですっ!」
「判ってくれたのですね」
「はいですですっ!」
「セルシア?」

 それがトキの意志ならば、私はそれに従おう。
 頑張って、トキの力を借りずに正天使になろう。
 そうすれば、トキも私のことを本当に受け入れてくれる。
 だけど。

「お止しなさい。アクセスがもう少しで帰って来ます」
「もう少しは帰って来ないですです」
「彼も余計な気を回してくれたものです」
「トキの話は判りましたですです。だけど、今だけは」

 セルシアは暫くの間、トキのことを抱きしめたままでいました。


●オルレアン・まろんの部屋

「トキ、好きですです」

 そう言い、腕に力を込めたセルシア。

「セルシア? ちょっと、セルシアってば」
「まろん…ちゃん?」

 気がつくと、そこは人間界の知らない場所でした。
 セルシアが力を込めて抱きしめていたのは、今のセルシアが守り、助けるべき
対象の神の御子。
 それに気付くと、恥ずかしさにセルシアは慌てて離れました。

「ご…ごめんなさいですですっ!」
「良いのよ。それより、身体は大丈夫?」
「え…」

 漸く、自分が人間の娘の心の中に入り込み、現実の世界へと戻って来たのだと
いうことを思い出したセルシア。

「かなこちゃんは? それに、悪魔さん…」
「悪魔は封印したわ。佳奈子ちゃんも無事。今は弥白さんが側についていると思
う」
「良かった…」
「あれからセルシアはずっと眠り続けていたのよ」
「まろんちゃんがずっと側に? それに、ここ…」
「ここ? パパとママの寝室。セルシアは入った事無かったっけ?」
「ですです。でも、何だか懐かしい匂いがします」
「え? フィンがここに寝泊まりしていたからかな?」

 何故か、動揺した様子でまろんは答えました。
 何故だろう? 心の中を探ろうとして、思い止まりました。
 例え人間相手であれ、掟を破るのは気が引けたからというのもあります。

「フィンちゃんが、ここに…」

 思わずシーツの匂いを嗅ぐセルシア。
 しかし、洗濯されたシーツからは、フィンの匂いはしませんでした。

「それより、本当に身体は大丈夫なの?」
「全然大丈夫ですです!」
「トキは今日は休んだ方が良いって言ったけど…」
「大丈夫ですです! 今日からお仕事に復帰出来ますですですっ」

 そう言い、胸を張るセルシアを心配そうな目でまろんは見ていました。


●桃栗町上空

 昨日の大雪から一夜明け、桃栗町の上空は青一色で覆われていました。
 上から眺めると、白で埋め尽くされた景色の中で人間達や機械が動き回り、折
角綺麗な白で塗られた景色をわざわざ汚い黒に塗り替えている。
 そのようにセルシアには思えて仕方がありませんでした。

「よそ見をしないで下さい。セルシア」
「よそ見なんかして無いですですっ」
「じゃあ、今何を言っていたか答えて下さい」
「えっと…」
「やっぱり聞いてませんでしたね」
「ごめんなさいですです…」

 また、トキの前で仕事に集中していない醜態を晒してしまった。
 これでトキが私のことを嫌いにならないだろうか。
 そう思い、憂鬱になるセルシアでしたが。

「それにしても、その調子なら本当に身体は大丈夫なようで、安心しました」
「ありがとう、トキ」

 トキの優しい言葉に喜び、抱きつこうとするセルシア。
 しかし、回した両手は空を掴みました。

「どこで誰が見ているのか判りませんよ、セルシア」
「ここは人間界。誰も見てないですです」
「神様は地上界であろうと、全ての事象を見通しているのですよ。セルシア」
「ぶぅ」

 頬を膨らませ、不満を表明するセルシア。

「ほら、先を急ぎましょう」

 しかし、セルシアの不満の表明をトキは見ていませんでした。
 セルシアのことを振り返りもせずに、先に行ってしまったトキ。
 その背中を慌てて追いかけるセルシアなのでした。


●天界・幹部会

 リルの要請により、緊急幹部会が招集されたものの、実際に幹部が招集するま
でには一刻を要しました。
 特に届けを出さない限り、四半刻以内には招集出来るようにしておくべく定め
られている筈なのに、これでは下級天使達に示しがつかない。
 そう心の中で毒づくリルでしたが、大幹部の中では新参者とあっては、それを
公然と口にすることは憚られました。

「…現在魔界入口に集結中の魔族は一個大隊を数えており、恐らくは地上界への
降下を試みるものと推定されています」

 幹部達が勢揃いしたところで漸く始まった会議。
 リルが現在までに集まった情報を報告すると、円形のテーブルに着席した寝ぼ
け眼の大天使達や、周辺の長椅子に居並ぶ正天使達がざわめきました。

「行く先は例の人間の居場所だな」
「恐らくは」
「魔族共め。一個旅団も送り込んで、たった一人に勝てぬものだから焦ってると
見える」
「向こうも我々と事情は同じ筈です。我ら程では無いとは言え、公然と大兵力を
動かせぬ筈。あれだけの魔族を人間達の目から隠すだけでも一苦労でしょうか
ら」
「ならば何故今更増援を送り込む?」
「まさか。本格的に人間界に攻勢を?」
「待って。目標が人間界と決めつけるのは危険よ」
「天界を直撃すると言うのか? 馬鹿馬鹿しい」
「天界の守りは完璧だ。例え彼らの兵力が我らに十倍すると言えども破れはせ
ぬ」
「我らには御神の守護がおわす! 魔族如きに…」
「精神論は危険だわ」
「静粛に。リルの話はまだ終わっていない」

 議長──女性型の大天使──が、好き勝手に騒ぎ始めた大天使達を鎮めると、
リルは話を再開しました。

「さて、我が天界が誇る情報部は、既に以前よりこの部隊の出撃を察知していま
した。彼らの目的地は、諸先輩方のご想像の通り、神の御子、今は日下部まろん
という人間の中に居る魂の存在する場所で間違いありません」
「断言して良いのか?」
「情報部の言う事は過去に何度も外れているぞ」
「確実な情報源です」
「ここはリルの言う事を信じよう、諸君」
「貴殿にしては珍しくリルの味方をするのだな」
「実は、魔界に間諜を送り込んでいるのだ。そうだろう?」
「その話は…」

 リルは困惑しました。
 最高機密をべらべらと。
 この会合を魔界の誰かが覗いていないという保証はどこにも無いのに。

「魔界に潜入するとはまた命知らずな」
「堕天使を装ったのか」
「命を救われたのだ。良く働いて当然だろう、なぁ?」

 まさか、誰がそうなのか知っているのか、こいつは。

「儂からも良く言って聞かせてあるからな。幹部会筆頭の儂がな」

 こいつが情報部に顔が利くのは知っていたが、まさかそれ程とは。

「口を慎まれよ。『魔王』がこの場を覗いていないという保証は無いのですよ」
「は…。これは失礼した」
「続きを」
「はい。この新たな敵に対して我々がどう対処するかですが…」

 その時、一人の準天使が議長に歩み寄り、何事かを囁きました。

「皆さん。重大な報告があります。例の部隊が地上界に向けて移動を開始したそ
うです」

 議長が報告すると、会議場を一瞬、静けさが支配しました。


●オルレアン・まろんの部屋

 セルシアの身体のことを心配したまろんですが、身体は完全に復調したという
セルシアの強固な主張と、自分も付き添っていくとのトキの言葉もあり、最終的
には折れざるを得ませんでした。
 早くも朝食の後にはトキとセルシアは飛び去ってしまい、一人部屋に取り残さ
れたまろん。
 昨日はセルシアのことが心配で、一晩中眠ることが出来なかったまろん。
 今日は雪が積もってるし、悪魔達の探索もお休みにしよう。
 そう決めつけ、もう一寝入りしようとしたのですが、チャイムの連打に叩き起
こされてしまいました。

「都? 朝っぱらから何の…」

 その様なチャイムの鳴らし方をする唯一の人物の名を呟きながら、玄関の扉を
開けたまろん。
 果たして、その人物が立っていました。

「何? 都」
「何よ。寝てたの? だらしない」

 パジャマ姿のまろんを上から下までしげしげと眺め、呆れた口調で都は言いま
した。

「良いじゃん。都だって判ってたし」
「まぁ良いわ。あのさ、今日暇?」
「えっと…」
「考えるって事は暇なのよね。うん、決定!」
「ちょっと…」
「夕方から、スケジュール開けておいてね」
「夕方?」
「うん。パーティーなんだ。さゆり姉さんが帰って来るって」
「え? さゆりさんが? 行く行く!」
「じゃあ、夕方6時までに家に来てね。あ、稚空も誘うから。委員長も来るっ
て」
「うん。それじゃ、お休み」
「お休み…って、あんた今から寝るつもり?」
「うん。昨日、徹夜だったんだ」
「全く。何やってるのよ、最近」
「うん。ちょっとね」
「まぁ良いわ。じゃ、寝坊すんじゃないわよ」
「ふわぁい」

 扉を閉めてから、そう言えばツグミを誘って良いかどうか聞くのを忘れていた
ことに気付いたまろん。
 ま、一人位後からどうにでもなるか。
 今はまだ少し早いから、お昼にでも電話してみよう。
 そう思い直すと、目覚ましをお昼過ぎにセットして改めて寝直すのでした。


●天界・幹部会

「直ちに第7管区警戒中隊に迎撃命令を!」
「はいっ」
「お待ち下さい!」
「何だ、リル」

 魔界軍が動き出した。
 その報に、直ちに迎撃命令を出そうとした「幹部会」の軍事担当官。
 それを止めたのはリルでした。

「現在配備されている兵力では、あの規模の敵を迎え撃つことは出来ません。む
しろここは、兵を退くべきかと」
「臆したかリル!」
「天使一個中隊は魔界軍一個師団に相当する。十分過ぎると考えるが」
「そうよ。魔族は個体は強いが群れると弱い」
「魔族は種族により大幅に戦闘力が異なります! 過信は禁物です」
「悪魔族が出て来るとでも言うのか? ふん。奴らは群れる事は好まぬ」
「リルの言にも一理あるわ。先年の戦いで敵を侮り、同数の竜族に大敗を喫した
こともあるし」
「早くしないと予想迎撃点への兵力の展開が間に合わぬぞ」
「しかし!」

 紛糾する議論。
 それを止めたのは、再び扉を開けて入って来た準天使の報告でした。

「報告! 敵は進路を変えた模様!」


●衛星軌道上 天界軍第5管区

 衛星軌道上で人間達の打ち上げた機械から己の姿を隠しつつ、魔界の住人達の
動向の監視任務に就かされていた女性型の準天使は、あまりの退屈さに光球の中
で欠伸をしかけ、迫り来る何かに気づき、急に我に返りました。

「何かが…近付いてくる?」

 生憎と、配備されている天使の数は監視すべき空間に対して絶望的に少なく、
紙の上ではまとまった戦力も、実際には天使同士の相互支援はまるで不可能。
 それが、人間界を魔界から防衛すると称し、噂でのみ聞く神の御子が復活して
以来、宇宙空間に天使達を配備し続けている天界軍の実態でした。

「何族か?」

 悪魔族を筆頭として、強力な敵であれば無理に戦う必要は無い。
 その様に命令を受けていました。
 しかし、雑魚の敵であれば必ず仕留めねばなりません。
 これ以上、魔界の住人に地上界を汚染されないためにも。

 天使の持つ遠視能力を最大にし、迫り来る何かが何であるかを察知しようとし
た準天使。
 向こうに、無数の魔界の物共が近付いてくるのが判りました。

「こっちに…来るの?」

 最新情報では、現在集結している敵は、神の御子がいる場所へと向かう筈でし
た。
 こちらには来るはずでは無かった。

「あ…あれは」

 その前方。自分の居る方角に向かって、翼を広げて何かが急速に接近しつつあ
りました。
 見間違えようもありません。

「竜族?」

 個体数は少ないながらも、天使と同等の戦闘力を持つと言われる竜族。
 先年の戦いでただでさえ少ない個体数を更に減じていたので、まさか今出撃し
てくるとは。
 とても一人で敵う相手ではありません。
 直ちに待避して、天界に報告しなければ。
 その準天使は慌てて身体の向きを変えると、念波を発信しながら天界の方角へ
と逃走を開始するのでした。

(第166話(その8)完)

 では、(その9)に続きます。

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Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
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