神風・愛の劇場スレッド 第163話『眠り姫』(2/22付) 書いた人:佐々木英朗さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: 佐々木 英朗<hidero@po.iijnet.or.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Message-ID: <20020222125427.65a1b455.hidero@po.iijnet.or.jp>
References: <a283qv$4se@infonex.infonex.co.jp>
<a28j8r$5ka@infonex.infonex.co.jp>
<a2qvu3$5f0@infonex.infonex.co.jp>
<a3j3ch$1uh$1@news01be.so-net.ne.jp>
<20020215120849.5c4db527.hidero@po.iijnet.or.jp>
<a4nf9m$47m$1@news01ci.so-net.ne.jp>
Lines: 254
Date: Fri, 22 Feb 2002 12:54:27 +0900
佐々木@横浜市在住です。

On Sun, 17 Feb 2002 14:32:37 +0900
Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp> wrote:

> 石崎です。

こんにちわ。

# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられているヨタ話です。
# 所謂サイドストーリー的な物に拒絶反応が無い方のみ以下をどうぞ。



## 何だか久しぶりにシンプルな(短い ^^;)記事になったなと。

> >>> >★神風・愛の劇場 第159話 『あなたの傍に』(前編)

> ># 何となく凄いのかもしれないという印象はあります。(笑)
>  居眠りしたまま襲いかかる悪魔の群を一撃で粉砕しているセルシアという図が
> 頭に(笑)。

ああ、そういう方向の凄さですか。(笑)
# やっぱり。(爆)

> >★神風・愛の劇場 第161話 『私の中』
>  佐々木さんパートでの佳奈子ちゃん初登場ですね。

あ、そうでしたっけ。(ぉぃ)

> #甘い蜜の罠だったりして(違)。

# 塩辛いかもしれません。(爆)

>  弥白様に急接近する佳奈子ちゃんの描写。まるでそのままキスでもしてしまい
> そうな雰囲気でしたが、眠っている間に変な事はしなかったでしょうね>佳奈子
> ちゃん。

弥白様の寝顔なんか見ていたらキスぐらいしかねないかも。^^;

>  弥白様(と佳奈子ちゃん)については暫く佐々木さんにお任せした方が宜しい
> ような気がします(笑)。

以前のメールでの相談の結果、脇役(笑)関連の担当でしたね、私が。(笑)
# 先に言ってしまいますが、今のままで行くと(佐々木担当回の勘定で)
# 数話以内に結構大きな人間関係の変動がある予定。
# 今の人間関係の枠内で書きたい事があるのでしたらお早めに。

> ★神風・愛の劇場 第162話『記憶の彼方』

都ちゃん、ぐっすり眠れた様で火曜日になってしまいましたか。^^;
まろんちゃんの家を覗きに行くのは当然として、もしも中にお邪魔したら
面倒な事になりそうでした。稚空しか見えない(はず?)なので余計に。^^;
怪我(疵)が無い事をスカートめくって見せる都ちゃんがとってもナァ〜いす。*^^*
# まろんちゃん共々、もっと入念に痣が無いか確認したかったなぁと思い。(爆)

あの日の事を聞かれてちょっと動揺するまろんちゃんでしたが、都ちゃんの
好意的解釈&曖昧な記憶の御陰であまり深くは突っ込まれませんでした。
傍目にはまろんちゃんの受け答えはちょっと都合が悪い話を強引に逸らした様な
感じですので、都ちゃんがもっと落ち着いて考え直すと無茶怪しまれそうです。
# 賭けの話はもうちょっと種明かしおあずけ。^^;
## 低い方から普通の展開まで様々に妄想が。(ぉぃぉぃ)

滞在中の人外対策チームの皆さんですが、セルシアが寝てしまっているという事は
一日中話し合いをしていたんでしょうか。長い会議は良くないです。(笑)
# でも、きっと夕食が出てくると目覚めるんだろうな>セルシア ^^;
作戦会議の話の内容は想像するしかありませんが、フィン大隊の掃討について
とかその辺りか、或いはノインの家探しという可能性もありそうかなと。

# では、次行きます。

★神風・愛の劇場 第163話 『眠り姫』

●名古屋病院

「おや、今日も来たの」
「こんにちは、おじさま」

ここ数日の日課の様になってしまった訪問の途中、弥白は廊下で海生と出くわし
たのでした。

「弥白ちゃんと彼女がそんなに仲良しだったとは知らなかったな」
「仲良しというのとは少し違うと思いますわ」
「そうなの?ご家族以外で二回以上面会に来たのは弥白ちゃんだけだよ」
「来てはいますけれど、話が出来ないんですもの」
「ああ、そうか…」

海生は顎に手を当てて天井を睨んで唸ります。考え事をしている様にも、
考え事をしているフリの様にも見える辺りが人柄という所でしょうか。
声には出しませんでしたが、弥白の顔には笑みが浮かんでしまいます。

「あれ、何で笑うの?おかしいな、不真面目そうに見えた?」
「ええ、少し」
「医者としてそれはマズいんだけど」
「普通にしていらっしゃればよろしいのですわ」
「それが一番難しい」

弥白はそうですねと言って頷くと海生に佳奈子の事を尋ねました。

「佳奈子さん、どうして眠ってばかりなんです?」
「それがねぇ…」

今度は本当に困った顔をした海生。弥白は返事を急かす様な事はせず、
黙ってその顔を見詰めていました。

「正直、良く判らないんだよ。疲れから来るんだと思うけど」
「この前、神楽に聞いたときにはお薬の所為だって言ってましたけれど」
「それがね、プラセボなんだよね」
「偽薬?」
「そうそう。最初の晩に出したのは本物なんだけど、彼女、体質かな。凄く
効き過ぎてね。弥白ちゃんが退院した日の夜まで起きなくって」
「それでは、あの日もしずっと待っていても無駄だった訳ですのね」
「うん。それで二日目からはビタミン剤出してる」
「そうだったんですか」
「あ、この話は彼女やご家族の方には内証ね」
「判ってます。でも何か理由があるはずですわよね」
「レントゲンも断層撮影も異状無しだから心の問題だと思う。けれど、現に
普通では無いのだから今すぐ退院って訳にもいかないし」
「心配ですわ」
「そうだね。今も寝ているかも知れないけど、会って来たら?」
「そうします」
「二〜三時間に一度くらいは起きてるし、そんな時には普通にしてるから
弥白ちゃんがゆっくりしてれば話す機会はあると思うけど。いや、弥白ちゃんには
他にもすることがあるかな」
「時間は構わないのですけれど、あまり長居をしてもご家族の方に気を
使わせてしまいますでしょ?」
「成程ねぇ。もっともそれなら心配要らないかな。今日は午後、着替えとかの
洗濯の為に一度家の方に戻るとお母様は言っていたから」
「そうですか」

海生は応えながら、弥白が言った然程親しい訳では無いという話を何となく
思い出していました。互いの家を訪問する様な関係では無く、また彼女から直接
家族を紹介されたりした訳でも無いのだと改めて理解するのでした。
弥白は軽く会釈をして、そんな事を考えていた海生を残して去って行きました。



弥白が病室に入ってみると、やはりというべきか佳奈子は寝顔で出迎えました。
ベッドの枕に近い側がやや起き上がる仕組みで上半身を起こしているのですが、
そのままの格好で眠り込んでいる佳奈子。軽く組んだ両手を布団の外に
出していて、やや傾げた頭は肩と枕の両方に支えられている状態でした。
どうやら海生の言った様に少し前まで起きていて、つい今しがた居眠りを
始めたという感じです。弥白はベッドの脇の椅子に腰を下ろしました。
そして佳奈子の寝顔を眺めます。彼女を見舞う様になってから毎日見ている、
そして以前は想像してみるしか無かった眼鏡を外した素顔がそこにありました。
じっと見詰めながら先日の夢の事を考えます。夢、今はそう理解しているあの
出来事の中での佳奈子は不思議な雰囲気を湛えていた様に弥白には思えます。
目の前の佳奈子にはその面影は無く、乾き気味で艶の無い唇が多少不健康な
印象を与えている以外は特に変わった様子はありませんでした。
弥白はそんな事を思いつつ、それでも黙って佳奈子を見詰めていました。
声は掛けません。弥白自身が退院した日の翌日に見舞った際には、何度か声を
掛けてみましたが寝言すら返っては来ませんでした。もっとも、それで
諦めたというよりは何となく邪魔をするのが可哀想に思える寝顔でもあったから、
というのが正直なところだったのです。そっとしておきたいという気持ち。
そんな弥白の想いは彼女自身をも穏やかな気持ちへと導き、午後の陽射しで
温まった病室の空気と相俟って眠りへと落ちてしまうのは時間の問題でした。
確かにこれでは一日中寝て過ごしてしまうわね…弥白が最後にぼんやりと
考えたのはそんな事でした。



どうしたら、のんびり、ぐっすり眠れるかしら

夜、ぐっすり眠れないのですか?

ええ

悩み事があるのですね

悩み事が無い人なんていないでしょ

でも大きすぎる悩みや多すぎる悩みは何とかしないと

何とか出来たら悩みとは言わないですわ

私、知ってます、全部、どうすれば良いのかも



ごそごそと動く気配を感じて弥白は目を覚ましました。随分と寝た印象が
ありましたが、窓から射す陽光の様子からは時間は殆ど経っていない様に
思われました。弥白が視線を戻すと、佳奈子は両手で布団の上をまさぐって
いました。あくまでも彼女の意識では目的の物は布団の上に乗っているべき
である様でした。実際にはそれはベッド脇のテーブルの上にあったのですが。
弥白はすぐその事に気付きましたから、眼鏡を手に取るとつるを開いて佳奈子の
方に差し出しました。弥白が掛けた声を聞いて一瞬驚いたらしい佳奈子。
彼女は眉根を寄せて声のした方をじっと睨みました。そうしてやっと手元に
差し出された眼鏡に気付くと、それを受け取って顔に掛けました。
掛けた途端に再び驚いた顔をする佳奈子。
まだ寝ぼけているのか、少しばかりの沈黙の間の後に口を開きました。

「弥白様、何時からいらしたんですか?」
「ええと…」

弥白は手首にちらっと目を落として、時間を確認してから答えます。

「十分くらい前からかしら」
「すみません、起こしてくだされば良かったのに。あ、あと母や先生からも
聞きました。何度も来て下さったとか。本当にすみません、私なんかの」
「それはいいから」
「はい…すみません…」
「それで具合はどうなの?」
「何とも無いんです、本当に」
「それなら良いのだけれど」
「弥白様こそ、お家でゆっくりされた方が」
「退屈しのぎなのよ。佳奈子さんの寝顔を見るのが最近の楽しみ」

始めきょとんとし、続いて顔を真っ赤にして佳奈子は俯いてしまいました。
弥白は身を乗り出して佳奈子の顔を見上げる様に覗き込みます。

「それに今日はもっと面白い物も見られたし」
「え?」

弥白はこんな顔、と言って眉間に皺を寄せて佳奈子を睨みました。それを見て
佳奈子は口をぽかんと開け、すぐに嫌々と首を振ると早口でまくしたてます。

「違うんです、あの、眼鏡が無いと良く見えなくって、けっして弥白様を
睨んだ訳では。ピントを無理に合わせようと目にぎゅって力を込めて…
そ、それより弥白様がそんな顔をなさっては駄目です。人相が悪くって、
別に弥白様が悪い訳では無いので、誤解しないでください。それで」
「良かった」
「は?」
「元気そうで」
「…ありがとう…ございます」

再び俯いてしまった佳奈子を弥白は優しく見詰めていました。



廊下を歩きながら、ふと違和感に気付いた弥白は立ち止まって考え込みます。
そしてその違和感の正体が手に下げた白い箱である事に気付きました。

「あら、嫌だわ」

佳奈子への見舞いの為に持ってきたケーキの入った箱でした。それをそのまま
持って病室を出て来てしまったのです。慌てて戻って見れば、佳奈子はまた
眠り込んでいました。今日、最初に見た時と同じ姿勢、同じ穏やかな寝顔で。
弥白はテーブルの上の眼鏡の隣に箱を置くと、音を立てない様に注意深く扉を
閉めて佳奈子の病室を後にしました。出口に向かって歩いている途中、廊下を
照らす陽光がすっかり傾いている事に弥白は気付きます。
意外に長居をしてしまった様だと知った彼女は家路を急ぐ事にするのでした。

(第163話・完)

# 都ちゃんも寝ていたので、もう一人の姫様の話って事で。^^;
## 何だか寝ている娘ばっかりです。(笑)

では、また。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい

 件名:
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄