神風・愛の劇場スレッド 第117話『告白(前編)』(4/22付) 書いた人:携帯@さん
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ
From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Sun, 22 Apr 2001 16:13:09 +0900
Organization: So-net
Lines: 479
Message-ID: <9bu0a9$jdg$1@news01bj.so-net.ne.jp>
References: <9apotq$k04$1@news01dc.so-net.ne.jp>
<9b69ct$oh9@infonex.infonex.co.jp>
<9b69cu$ohm@infonex.infonex.co.jp>
<9bbolh$afo$1@news01bd.so-net.ne.jp>
<9bot6l$pk4@infonex.infonex.co.jp>

石崎です。

hidero@po.iijnet.or.jpさんの<9bot6l$pk4@infonex.infonex.co.jp>から
>佐々木@横浜市在住です。

こんにちわ。

これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。

今週も長さの関係でフォロー記事&前編及び後半の分割記事です。
こちらはフォロー記事&第117話前編です。


#本スレッドは、過去記事のアーカイブがあります。
#本スレッドの記事のアーカイブに関しては、各種検索エンジンで検索可能な他、
#hidero@po.iijnet.or.jpさんの<8cs0mq$enl@infonex.infonex.co.jp>の記事を
#道標として下さい。

>>> >>> ★神風・愛の劇場番外編 『道具』
>
>>>  同じ懸念があったので、今回は一部に娯楽を導入してみました(そう
か?)。
>
>娯楽というよりは目の保養。(笑)

 目の保養も娯楽の内ですから(爆)。

>>> >★神風・愛の劇場 第114話 『帰結』
>
>ノースリーブで腋の下が大きく開いているワンピース…というのが佐々木案。*
^^*
># 家の中なので夏に着るような服装だと思っておくんなせぇ。(笑)

 すると前屈みになったりすると、脇の下から色々と覗いたりするという絵が見
えてきます。

#それを見ている人がいたとして、ツグミさんはそれに全く気付かないであろう
#事もポイントでしょうね(笑)。
#一番そういう姿を見ているのはまろんちゃんでしょうけど。

>石崎さんパートが一日遅れていて稚空がこの日(9日)登校するかどうか
>はっきりしない段階では学校シーンを書く訳にもいかんし…
>という消極的理由が3割程。(笑)

 お手数をおかけしたお詫びに(?)今回はその空白の学校シーンを出してみま
した(笑)。
 実は前回稚空が弥白様に家に置き去りにされる展開になっているのは、本当は
稚空も学校に行って弥白様を迎えに行ったら…という展開にする予定が、先回り
して稚空が休みとなっていたので予定を変更していたりします(笑)。


>>> ★神風・愛の劇場 第115話『受容(前編)』
>
>いたたまれなくなって帰ってしまった弥白様。
>成程。稚空とはすれ違ってしまいましたか。
>約束しないで迎えに行くと会えないってのはいかにもラブコメです。^^;
>でも神楽はちゃんと出迎えたぞ、修業が足らんな稚空。(笑)
># 今のままでは弥白様が引き篭もりになってしまいそうで不安。
>
>ゲストの女の子。ショートヘアで小柄で眼鏡というと……
>時節柄、那己ちゃん@くるみ2式の顔が浮かんでしまいます。*^^*

 家はUHFのアンテナが立っていないので…(号泣)。
 実はこの娘に関しては、別の元キャラが居ます。

>どうやら弥白様に対して「本気」らしい。(爆)
>ストーカー属性がありそうなので鋒先が弥白様本人に向かないと良いのですが。

 上のこのフォローでこの子の性格は大きくねじ曲げられた事を予告しておきま
す(笑)。

>ま、毒気が抜けた様子ですので大丈夫だとは思いますけれど。
># しかも"素顔は美形ネタ"とはまたお約束な。おマケに自己突っ込み入り。^^;
;

 やはりお約束はお約束として描かないと。
 ちなみにもちろん、眼鏡っ娘の定義に従い、本人は眼鏡を外したら美形だとは
気付いていません。

#以前の眼鏡っ娘スレッドでは、どういう結論に達したんでしたっけ?

>眼鏡に悪魔が憑いていたのは眼鏡を通して何時も弥白様を見ていた
>想いを利用されてしまったという事なのでしょうね。

 まさしくその通りです。

>稚空、美味しいんだか損したのか良く判らない夕暮れでありました。
># で、何処触ったんだ?柔らかかったのかな?(爆)

 そう思って頂けると、最初は「両肩を押さえて」と書いたのを、わざわざ「身
体を押さえて」に書き直した意味があったというものです(爆)。

#「手の平サイズ」という隠れ設定が(爆)。

>それにしても、弥白様(小)が焦らぬ様にと言うとは意外。
>弥白様以上に良くも我慢してるものです、ミストは。^^;

 下記の理由が1割。
 話が先に進んでいる佐々木さんパートで、9日の夜にミストが疲れた様子なの
で、未だ目的を達していないのかもと考えたのが3割。
 もっとも後者は、目的を果たしたから疲れているという解釈も可能だったので
すが(笑)、そこまで話を進める事が出来なかったのが3割。
 残りの部分については、シリーズ構成の都合上、ある拘りがあって段階を踏も
うと考えていたりするからです(ぉぃ)。

>別に少しぐらい怪我していても用は済む気がしますが、何が気に入らないのか。
>万全な体調にさせてリターンマッチとか思ってるのかな。(爆)

 かなり鋭い指摘です(爆)。

>それでも弥白様は小さな幸せを得た様です。
># また泥沼の深みに半歩前進と。^^;;;

 やはり、稚空や弥白様にも少しは良い思いをさせないと(違)。

>どうやらシルクの口振りからすると、ブレスレットを渡した日以後にも
>ツグミさんの家を訪れている様ですね。今日(8日)とかかな。
># シルクには更に何かお仕事があるらしい。

 実は、シルクが言っていたのは、以前何種類も料理を教えて貰った時の事を言
っているのですが、そうですね、あの後もツグミの所を訪れた事にしましょうか。

#スケジュール管理が結構雑(笑)。


>★神風・愛の劇場 第116話 『忘れていたこと』

 都ちゃんのまろんちゃんに対する友情を描く話でした。

 両手の塞がった都ちゃんがチャイムを押した方法は、常識的に考えれば肩を使
ったか、さもなければ頭で押したかするのでしょうが、あの答え振りからすると、
わざわざ足を持ち上げて押したか、さもなければその様にまろんちゃんに妄想さ
せようとしたのでしょうか。
 ちなみに都ちゃんの服装の描写がありませんが、使い回し用都の私服だとスパ
ッツをはいていますので、最悪の事態(違)は避けられているような(笑)。

 都ちゃんの事を心配させまいとし、最近色々と傷ついていた都ちゃんの事を逆
に心配してしまう風なまろんちゃんですが、全て都ちゃんは見透かしているのは
本編でも描かれていた部分なのですが、都ちゃんがまろんちゃんを直に助けよう
とするのは、余程まろんちゃんが追い詰められていると感じたからなのか。
 林の中を探し回って泥だらけになっているのにも関わらず、その事に全く気付
かずに隠している積もりでいるまろんちゃんを見れば、気付いて当然って気もし
ますが。

 都ちゃんは明日、まろんちゃんを強引にどこかに連れて行こうとしています。
 行き先はこれまでの話から想像がつきますが、都ちゃんに取っては、とても辛
い事の筈。
 でもやはり、まろんちゃんが悲しい顔をしているのが辛いのでしょうね。自分
の想いより、まろんちゃんの事を優先する事にしたようです。
 でもそれで、果たして問題解決とすんなりといくのか、それとも逆に問題がこ
じれて行くのかは判らないことですが。

#ちなみに私はこの展開を見た瞬間、こじれる方のストーリー展開を考えたのは
#内緒です(爆)。

 アキコとツグミ二号の再びの接触。
 ツグミ二号は、アキコの事をまろんだと誤解したのか、それとも又何か別の過
去があるのか。ところで町内某所の公園って、やっぱりあの番外編で出て来たあ
の公園でしょうか。

 では、本編へと続きます。


★神風・愛の劇場 第117話『告白(前編)』


●名古屋病院

 桃栗町の町外れにある名古屋病院は、医師と看護婦が美男美女ばかりという点
で有名でしたが、同時に能力面でも優秀な人材を揃え、機材が充実しているとい
う点についても、同業者からでさえ高い評価を受けています。

 その名古屋病院に、昨晩一人の少女が急患で担ぎ込まれました。
 通りがかりだという人物により運転された車で彼女が運び込まれた時、本当は
ベットが満杯だからと他の病院に回って貰おうとしたのですが、偶々そこに居合
わせた院長が、少女の顔を見た後で、ここに入院させるように手配したのでした。
 その事を聞いた病院の医師達は囁きました。
 「また、院長の悪い癖が出た」と。


●…

「婚約破棄ですって?」

 思わず、叫んでしまいました。
 信じられませんでした。
 自分がこれまでいた世界が、崩れていくかのような衝撃。
 尤も、こうなる予感が無かったと言えば嘘になります。
 その原因が自分にある事も。

「弥白も稚空君もまだ若い。まだまだ恋もこれからという時期に、二人を許嫁と
いう形で縛っておくのはどうかと、海生君から申し出があってね…」

 自分の両親の話は殆ど聞こえていませんでした。
 しかし、最後のこの部分だけははっきりと聞こえました。

「別に婚約を破棄したとは言っても、稚空君と付き合っていけない訳じゃない。
付き合ってみて、それでお互いが納得出来るなら、また婚約すれば良いじゃない
か。海生君もそう言ってたよ」
「本当ですね!?」
「ああ」

 その日から決めたのです。
 絶対に、彼には自分の所に帰って来て貰うのだと。


●山茶花本邸 弥白の部屋

「また、あの夢…」

 椅子の上で弥白は目を覚ましました。
 弥白が見た夢は、あの日以来何度も何度も繰り返し見たもの。
 夢だけならば覚めてしまえば消えますが、これは同時に現実でもあるのでした。

 顔を上げ、時計に目をやりました。
 まだ夜明けまでは間がある時刻。

 昨晩怪我をして戻って来た稚空は、手当を受けると疲れていたのでしょう、弥
白が作った夕食にも殆ど手をつけずに早々に横になってしまいました。
 当然、側について見ていようとした弥白でしたが、稚空が気になる風でしたの
で、部屋を出て行きましたが、やはり放っておけませんので、扉の前に椅子を置
いてそこに一晩中座っていたのでした。

 弥白は椅子から立ち上り、後ろを振り返りました。
 目の前にあるのは、稚空が寝ている寝室へと続く扉。
 その扉に手を置きました。
 ややあって、その扉に寄りかかり、頬を扉につけました。

「稚空さん…」

 やがて我慢出来なくなり、起こさないようにそっと扉を開けました。
 扉を開けて気付きました。
 稚空が、苦しそうな声を上げている事に。
 しかし、寝台に稚空の姿は見えませんでした。
 部屋が暗かったからだけでは無く、稚空が布団を被っていたからでした。

「稚空さん!」

 驚いて駆け寄り、布団を剥ぎました。
 見ると、稚空は額に脂汗を浮かべて、苦しそうな声を上げているのでした。
 思わず、稚空の肩を掴んで揺り動かしてしまいました。

「う…ん…」

 何度か揺り動かすと、稚空は目を覚ましました。

「弥白?」
「稚空さん、大丈夫ですか? どこか痛むのですか?」
「いや、大丈夫だ。…痛てて…」

 昨日の弥白の見立てでは、確かに入院しなければならない程の傷を負った訳で
は無さそうでしたが、やはり痛みが残っているようでした。

「やはりお医者様に診て貰った方が…」
「その必要は無い」
「でも、苦しそうでしたわ」
「夢を見たんだ」
「夢?」
「それがちょっと嫌な夢でな」
「まぁ。どんな夢ですの?」
「良く思い出せないんだ」

 嫌な夢なのに、内容が思い出せないのはどういう事なのだろう。
 私に話せないような夢なのだろうか。
 そう思いましたが、自分でもそのような夢を見たばかりでしたので、深くは追
求しませんでした。


●オルレアン

「まろん! まーろーん! まだ寝てるの!?」

 都がチャイムを連射で鳴らしても、まろんの部屋からは物音一つしませんでし
た。
 都は、昨日の夕方にまろんと出会った時の事を思い出しました。

「まさか、本当にあれ…」

 都の頭の中に、もやもやとあの妄想が浮かび、慌ててそれを打ち消しました。

「ま、それならそれで良いんだけどね」

 最近まろんが見せる憂鬱の表情。
 都の見立てによれば、原因は彼女の筈でした。

「本当は誰にも渡したく無いけどね」

 外泊ならば、その憂鬱の原因が解消したという事でしょうから、その事を幼な
じみとしては素直に喜ぶべきだとは理解していました。
 心の中に、割り切れない思いが残されているのも否定しようも無い事実でした
が。

「うかうかしてると、取られちゃうよ」

 今度は隣の部屋の扉を見て呟きました。
 いつもは先に部屋を出て待っている稚空も、今日はチャイムを鳴らしても反応
がありませんでした。

「全く稚空も何考えているんだか」

 そう言いつつも、一人で登校しようとした時です。
 突然、悪寒を感じました。

「これって…」

 以前から、時々感じていた感覚。
 今日はより一層強く感じた気がしました。
 現に、今日はそれがどこから来たのかまで判りました。

「あの部屋から?」

 ずっと空き部屋になったままの、6階の一室。
 ちょうど、今都が立っている場所の真下にある部屋でした。

 オルレアンの6階にある空き部屋。
 ここは、都が子供の頃からずっと空き部屋でした。
 最初に住んでいた住人が不慮の死を遂げて以来、あの部屋には「出る」という
噂で、実際、この部屋に移り住んだ人が、長く住み続けられた試しがありません。
 だから、都はこの空き部屋には近づかないようにしていたのですが。

「やっぱり、噂は本当なのかな…」


●枇杷町

「名古屋さんがそんな態度だから、弥白様は苦しんでいるんです」

 昨日出会った名も知らぬ少女の言葉。
 それは、戦いで受けた傷よりも、稚空の心を傷つけました。
 女として愛せないのなら、弥白に近づかないで欲しい。
 少女の言い分を即座に否定したものの、それは稚空がまろんと出会ってから感
じている事でもあったので、少なからず稚空の心に突き刺さりました。

 雑木林の中を痛む身体で走りながら、ずっと考えていました。
 自分が今こうして弥白の側にいる事が、本当に良いことなのかと。
 それは今までも自問自答していた事なのですが、やはりこの期に及んでも結論
は出ませんでした。

 ただし、一つだけはっきりしている事がありました。
 弥白を不幸にはしたくない。
 自分に嘘をつきたくないという思いよりも、それは強い願いなのでした。



「…言い訳にはならないだろうな」
「え?」

 弥白の声に、稚空は顔を上げました。
 目の前には朝食の皿が並べられた食卓があり、それを挟んで弥白が心配そうな
目を稚空に向けていました。

「いや、何でも無い」
「本当に、お身体は大丈夫ですの? 今日はゆっくり休まれた方が…」

 弥白が心配そうな目を稚空に向けていました。
 その目には、二つの意味がある事に稚空は気付いていました。
 一つは、純粋に稚空の身体を心配している目。
 そしてもう一つは。

「ああ、大丈夫さ。それより弥白の方こそ大丈夫なのか? 昨日は部活を休んだ
んだろ? 身体の方は大丈夫なのか?」
「ええ。私は身体の方は…」
「学校はどうするんだ?」
「勿論、出席致しますわ」

 弥白の顔が暗い風なのが気になりました。
 多分、精神的には未だ立ち直っていないのでしょう。
 しかし、自分から学校に行くと言っている以上、止めるべきでは無いと感じま
した。

「判った。俺もそろそろ学校に行こうと思う。いい加減、風邪で休み続けられな
いし」
「そうですか…」

 弥白の顔が、はっきりと暗くなりました。

「頼みがあるんだが」
「何ですの?」
「夕食は、グラタンが良いな。昨日は折角の夕食、殆ど食べずに寝てしまったし
な」
「え…?」
「もちろん、弥白が作ってくれるんだろ?」
「はいっ!」

 本当に、嬉しそうな顔をするのでした。



 隣町までの通学なので、いつもよりは早い時間に弥白の家を出ました。
 弥白も朝練で早く家を出るので車で送るとの申し出を有り難く稚空は受けまし
た。

「それじゃあ俺、ここで良いから」

 県道から駅へと続く道へと入る所で、稚空は車から降りようとしました。

「駅まではまだ距離がありますわ」
「ここから先、朝は混むだろ? だったら歩いた方が早いさ」
「それじゃあ」
「あ、稚空さん」

 車を出ようとした時、弥白に呼び止められました。

「何だ?」

 稚空が振り返ると、すぐ側に弥白の顔がありました。
 弥白が何をしようとしているのかがすぐに理解できました。
 嫌ならば、避けることは簡単でしたが稚空にはそれは出来ませんでした。

 唇に触れた柔らかい感触。
 触れたと思った瞬間には、それはもう離れていました。
 気がつくと、弥白は伏し目がちに稚空を見ていて、そして言いました。

「いってらっしゃい。稚空さん」
「あ、ああ…」

 稚空が車を出ると、猛然とした勢いで枇杷高校の方向へとリムジンは走り去っ
て行きました。


●枇杷高校

 リムジンで枇杷高校に登校した弥白。
 校門を入った所で取り巻きの女生徒達が、列をなして出迎えました。
 毎朝繰り返される光景でしたが、ふと違和感を覚えました。
 違和感の正体に気付いた弥白は、手近の女生徒に尋ねました。

「あの娘なら、昨晩入院したそうです」
「入院ですって?」

 驚いて更に尋ねましたが、詳細について知らないようでしたので、改めて報告
するように命じました。

「(何かあったのかしら…)」

 お見舞いにでも行こうかしら。
 そう思うだけの余裕が、今の弥白にはありました。
 今の弥白の立場は、執行を待つ死刑囚に似たようなものでしたが、小さな幸せ
がそれをほんの一時だけ忘れさせていたのでした。



 その日一日は、新体操部の先輩達が弥白を見る目が、ますます厳しさを増して
いる事を除けば、何事も無く過ぎて行きました。
 昨日写真が貼られていた部室のロッカーも恐る恐る開けてみましたが、今日は
何もありませんでした。

 昨日の事は夢だったのかしら。
 そんな筈は無い。絶対に。
 彼女は絶対に私を許さないであろうから。
 きっと今も次の手を考えているに違いない…。

 何事も無くとも、弥白の不安が解消する事はありませんでした。


●オルレアン ミストの隠れ家

「あたしは何もしてないのだけど」

 キャンディーを見ながら、ミストは呟きました。
 誤解されたままでは、言うことを聞かせるのが何かと面倒と感じています。
 恐怖だけでは、人間を自分に従わせるのは難しいと、長年の経験から悟ってい
ます。

「死んでは契約の果たしようが無いからね」

 本当の事を話そうか。そう一瞬思いました。

「まぁ良い。今は傷ついたままの方が都合が良さそうね」

 そう呟くと、ミストは知らず知らずの内に眠りに落ちていくのでした。

(第117話(前編)完)

 では、後編へと続きます。

--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
 HOME 記事一覧 前の記事へ 次の記事へ

 記事に対するご意見・ ご感想などがありましたら書いてやって下さい

 件名:
 名前: (ハンドル可)
 E-Mail: (書かなくても良いです)

 ご意見・ご感想記入欄