From: hidero@po.iijnet.or.jp
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 13 Feb 2001 18:02:03 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。
これは神風怪盗ジャンヌのアニメ版に触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、この手の代物がお好きな方のみ以下をどうぞ。
妄想100話突破記念&冬だからスペシャル7本目です。
# 第1、2章<94a13v$akm@infonex.infonex.co.jp>、
# 第3章<94gv95$li5@infonex.infonex.co.jp>
# 第4章<94qqnh$59b@infonex.infonex.co.jp>
# 第5章<9535kq$jfn@infonex.infonex.co.jp>
# 第6章<95da1p$989@infonex.infonex.co.jp>
# 第7章<95ln87$nav@infonex.infonex.co.jp>
# 第8章<9608e2$e5f@infonex.infonex.co.jp>の続きですので宜しく。
## 本編も再開してます。そちらもよろしく。
### 本編102話は多分週末です。^^;;;;
# では、始めます。
★神風・愛の劇場 冬のスペシャル版 『火炎回廊』
●第9章・脱出
辺りを見回すまろん。一瞬また置いて行かれたのかとも思いましたが、すぐに
都の姿を見付けました。先程飛び込んだ柱の陰に。まろんは近づいて都の
肩をゆすります。
「何座ってんの。行こうよ」
やはり返事はありませんでした。
「都、ねぇ、都ってば!」
異変に気付いた二人も来て、都の傍にしゃがみました。
「ツグミさん、賢者さま、都が起きないよぅ」
ツグミが右手を持ち上げて二人に見せました。
「自分で抜いた所で気を失った様ですね」
都の手には見覚えのある吹き矢が握られていました。
「良かった。眠らされたのか」
「ちょっと違うかもしれません」
「えっ?」
傍らで手を取って看ていた大和が言いました。
「脈が乱れてます。息も荒い…」
ツグミはランプを素早く点すと吹き矢の先を見詰めました。
「毒矢…でしょう。多分」
「そ、そんな…都っ!起きてよっ!」
再び肩を揺するまろんの手をツグミが制しました。
「止めなさい。毒が回るのが早くなりますよ」
「…」
ツグミは都の身体を探って傷口を見つけ出しました。
左の太股の上、履いていた服に僅かな染みが出来ています。
短剣で左足の裾から服を裂き、布地を切り取って細い帯を作りました。
その帯で股の付け根をきつく縛ります。
何も出来ずに見ているだけのまろんが小声で聞きます。
「大丈夫?」
「毒の種類が判りませんね。此では暗くて調べられないですし」
「そんな…」
「取りあえず血の巡りを遅らせて時間を稼ぎましょう。後は外で」
「うん」
「賢者さん、悪いのですけれど」
「判ってます」
大和が背中を向けると、ツグミとまろんが都を大和の背にもたせかけます。
都を背負った大和を伴って、再び通路を奥へと向かいます。
歩きながら大和が言いました。
「どうやって外に出たらいいんでしょうか」
「そんなの判らないよ…」
「祭壇の部屋を通って別の通路に出られればいいんですが」
「もう死んじゃってないかなぁ」
まろんの期待を裏切る様に、通路の奥から火竜の吐息と閃光が届きました。
「元気一杯みたいですね」
「じゃぁ!私が倒す!」
「無茶言わないで下さい」
「ならどうするの!」
「それは……そうでした!回廊ですよ」
「回廊…」
「上に昇って回廊側へ降りましょう。そうすれば別の通路へ出られるかも」
「そうだね!さっき都が上がってた所は」
それまで黙っていたツグミが答えます。
「炎の海の先ですよ…」
「それじゃ別の回廊を探しましょう」
「別のって?」
「あの回廊は真ん中の物だと思います。だから奥の方にもう一つ」
「賢者様、鋭い」
三人はより注意深く天井付近を見詰めながら進みました。
幸いな事に後ろから迫る炎が天井を照らして、ランプのか細い灯りを
補ってくれていました。
「でもあの穴、下からじゃ見えないよね?」
「そうでした…」
「大丈夫ですよ。回廊は以前は通路とちゃんと繋がっていたそうですから」
「どういう事?」
「生贄の骸を投げ込む為に塞いだのでしょう。後から誰かが」
「それじゃ石壁を良く見ていれば」
「きっと判るはずです」
やがて三人はそれらしい個所を見付けました。石壁に使われている石材の
色が異なっていて、更には石の大きさも不揃いです。
「何で最初に気付かなかったんですかね」
「そんな事より、上がろう」
「そうでした」
突然大事な事に気付いて、顔を見合わせる三人。
「誰が綱を下ろしてくれるの?」
「それ以前に綱……置いてきてしまいましたね」
「もう駄目ですぅ…」
「私は諦めない!何か手が」
「ありますよ」
まろんと大和はツグミを見詰めました。
「壁を壊せばいいじゃないですか」
「か、火薬持ってるんですか?」
「あぁ、ありますけど、それは駄目ですよね?」
ツグミは通路の先へ顔を向けてから再び二人の方を向きます。
彼女が何を言おうとしたのか理解した大和が呟きます。
「確かに今は駄目ですね…」
「じゃぁ、どうするの?」
「剣で破るしか無いんですよ」
「剣…剣も置いて来ちゃったよ、さっきの所に!」
「ありますよね、もう一本」
まろんは背中から剣を下ろして手に持ちました。
「これで…」
「そう」
「無理だよ、こんな細い剣じゃ。叩き付けても崩れないよ」
「切ってくださいな」
「何言ってるの!切れる訳無いよ!」
「やってみないと判りませんよ」
静かな物言いでしたが、反論を許さない重さがありました。
それを聞いたまろんは思わず後退りしてしまいます。
ですが、すぐに普段通りの穏やかな顔に戻ったツグミが促します。
「さぁ、時間があまり無いですから」
まろんは腹をくくりました。そして剣を構えると目をつぶって石壁に
突進しました。
「もう知らないっ!」
剣を腰の高さで突き込んだまろん。穀物を入れた麻の袋の様な手応えでした。
「へっ?」
目を開けたまろんは白い刀身が石壁に刺さっているのを茫然と見詰めました。
石と石の隙間に入った訳ではありません。積み上げた石の一つの真ん中に
真っ直に突き立っています。
「えええっ?」
まろんはそのまま剣を持ち上げる様に持ち直すと、一気に力を込めて
上に引き上げました。予想も出来ない程の軽い手応えで、剣はまろんの
頭上に振り上げられ、石壁には縦の筋が穿たれていました。
それを目の当たりにした大和が言います。
「凄いですよ!」
「な、な、何これ…」
「感動するのは後回しにしましょう。早く刳り貫いてください」
「判った」
まろんが同じようにして数度石壁に切り込みを穿ち、最後に真ん中を
蹴るとガラガラと音を立てて石が崩れ、充分に人が通れる穴が開きました。
「やった!」
「行きましょう」
灯りを提げたまろんが先頭に立って中に入り、都を背負った大和が続きます。
最後にツグミが後ろを振り向いた時には炎は数歩程度の距離まで迫っていました。
回廊側の床は酷く歩きづらい場所でした。所どころに堆く積み上げられた骸も
行く手を阻みますが、それ以上に厄介だったのは床に溜まった油でした。
足首程の深さがあり、ぬるぬると纏わりついて歩みを遅くさせます。
「気持ち悪いよ」
「何でこんなに溜まっているんでしょうか」
「もともと回廊側に油を入れた甕か何かが有ったのかも知れませんね」
「漏れたのかなぁ」
「割ったという事も考えられますよ」
「何で?」
「術の一部としてとか」
「ふ〜ん」
その時、後ろの方からポンッと弾ける様な音が聞こえました。
振り向く三人の目が明々と輝きます。
「燃え移って来ました〜」
「嫌〜っ」
三人は慌てて走り出します。先頭を行くまろんは何度か足を滑らせて
よろめきました。大和は都を気遣ってか、まろんの様子を見て慎重に
滑りやすい場所を避けた様です。ツグミも何の澱みもなく滑るように
油の満ちた回廊を進みました。炎は表面を這って追いすがっていましたが、
ある程度の距離を開けたままで、三人は回廊の終端、すなわち別の通路との
合流点へと辿り着く事が出来ました。
そして先程と同じように剣を振るうまろん。穿たれた穴の先には、しかし。
「うわっ」
のけ反ったまろんに問うまでもなく、穴の向こう側は火の海でした。
「あいつめ、こっちの通路にまで火を」
「火竜の熱で燃え出したのかも」
「どっちだって同じよ!」
周りを見回していたツグミが声を掛けます。
「こっちです、早く」
振り向いた二人にツグミが指し示したのは一本の太い柱。その根元には
植物を模したと思われる複雑な模様が彫刻されていて、その中心に穴が
開いています。その穴の奥に見えるのは細い階段でした。
「何処に通じてるの?」
「何処でも、此よりはいいですよぉ」
確かにその通りでしょう。まろんはすぐに踵を返して階段を駆け登ります。
敵や罠の存在を逸早く確認する為でした。もっとも、まろんが様子を教える前に
大和は後に続いてしまっていましたが。階段は幅こそ狭かったのですが、
高さは充分にありました。ただ、登り始めてすぐに螺旋階段になっていて、
勾配がとても急です。柱の中を刳り貫いて階段にした為なのでした。
ぐるぐると回る階段に自分達がどちらの方向を向いているのか判らなくなった
頃、やっと階段が途切れて暗い場所に辿り着きました。炎が無い事に
一安心するまろん達。そろそろと階段から歩み出てみます。
「何なのかな、此」
「さぁ…」
「お二人ともこの遺跡に入る直前の事、思い出しませんか?」
「え?」
ツグミに言われて、外から見た遺跡の姿を思い浮かべるまろんと大和。
大和が気付いて言いました。
「此は通路部分の上層の階ですね」
「ええ、きっとそうでしょう」
「じゃぁ、此からでも出られるのね?」
「多分」
「行こう!」
走り出したまろんをツグミが止めます。
「剣士さん、そっちは塔の方ですよ」
「…知ってた」
「はいはい。では、行きましょう」
「…」
まろんはばつが悪そうにしながらも、反対の方へ向けて歩きだしました。
暫く歩いていると、この通路も様子がおかしい事に皆が気付きます。
「熱いよね、この通路」
既に考えを巡らせていたと見えて、大和が即座に答えます。
「恐らくですが」
「何?」
「僕らの足の下が火の海だからではないかと」
流れていた汗が急に寒く感じられました。今自分達は業火の上に架けられた
橋の上を渡っている様なものだと気付いたのです。自然に歩みも早くなりました。
やがて無意識の内にまろんと大和は駆け出していました。と、突然の轟音。
立ち止まった二人が振り向くと、目の前に火柱が立ちはだかっていました。
床が崩れ落ちて通路の真ん中に穴が開いており、下の通路からは激しく炎が
噴き上げています。その炎に向かってまろんは叫びました。
「ツグミさん!」
返事がすぐに返りました。
「私は大丈夫ですよ」
「今そっちに行くから!」
「無茶言わないでください」
まろんは穴の周囲を見回しました。穴と左右の壁の間には片足を乗せられる
程度の幅しか残されてはおらず、ましてや間断なく噴き上がる炎を避ける
術がありません。まろんが迷っているとツグミが言いました。
「どうか、先に行ってください」
「馬鹿言わないで!」
「大丈夫ですよ。遠回りだけれど、戻って別の通路へ出ますから」
「でも…」
「外で会いましょうね」
「…」
まろんは返事も出来ずにいましたが。
「行きなさい!」
ツグミの鋭い言葉に打たれ立ち尽くしているまろんの手を大和の手が掴みます。
「世話焼かせないで下さい。二人は背負えませんからね」
そしてまろんの手を握ったまま大和は歩きだしました。
「放してっ!」
大和は何も言わず、手に力を込めてどんどん歩いて行きました。
ツグミの声が聞こえましたが、先程より小さくなっています。
「その突き当たりにきっと先程の様な階段があるはずです。そこから降りて
すぐに建物から離れてくださいね。賢者さん、頼みましたよ」
「判りました!」
顔を向けずに返事をする為に大声を張り上げた大和。その所為でしょうか、
声が少し震えていました。
まろんは大和に引きずられながらも振り向き叫びます。
「ツグミさんってば!」
しかし、まろんの呼びかけには誰も答えませんでした。
(続く)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
■■■■ hidero@po.iijnet.or.jp ■■■■
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