From: hidero@po.iijnet.or.jp
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Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: 29 Jan 2001 16:20:58 +0900
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佐々木@横浜市在住です。こんにちわ。
これは神風怪盗ジャンヌのアニメに触発されて書き連ねられている
妄想小説のスレッドですので、お好きな方のみ以下をどうぞ。
妄想100話突破記念&冬だからスペシャル4本目です。
# 第1、2章<94a13v$akm@infonex.infonex.co.jp>、
# 第3章<94gv95$li5@infonex.infonex.co.jp>
# 第4章<94qqnh$59b@infonex.infonex.co.jp>の続きですので宜しく。
# では、始めます。
★神風・愛の劇場 冬のスペシャル版 『火炎回廊』
●第5章・封じられた時間
陽が完全に隠れてしまうと、乾いた空気を透かして満天の星が見えました。
それと共に気温がどんどん下がり、昼間とはうって変わって寒さが行動を
阻みます。まろんはまたツグミの外套の中に潜り込み、そのまま並んで
歩いていました。都は自分の荷物から出した毛皮の防寒着をまとっています。
大和は都から借りた雨具を被って何とか寒さをしのいでいました。
先頭を都が歩いていて、星空で方角を確かめながら進んで行きます。
時折、ツグミに間違いが無いかを確認するのですが、ほぼ都の言う通りに
進めば良いという返事でした。そんな折りにまろんが聞きます。
「ねぇ、何で都が一緒について来てるの?」
立ち止まって都が応えます。
「判ってないね、やつらも同じお宝を狙っているのよ。
後を追って来るに決まってるでしょうが」
「じゃぁ守ってくれるの?」
「馬鹿。あんた達は餌よ、エサ」
「む…」
ツグミが言いました。
「餌は兎も角として、追って来ているのは確かでしょうね」
「判るの?」
「ええ」
都と大和が傍に来ます。そして都が。
「見えるわけ?」
「違いますよ。あちらの術が届いているんです」
「術が届くってどういう意味?」
「つまり、向こうが私達を見ているのが判るという事ですね」
「距離は?」
「はっきりとは言えませんけれど、慎重になっている様子ですね。
大分距離は離れてます。でも、段々と差を詰めている感じがします」
「急ぎましょう。先に入ってしまいたいし」
都の言葉に目ざとくまろんが言いました。
「やっぱりお宝狙ってるでしょ?」
「違います!待ち伏せるのに都合の良い場所を探す為よ」
「どうだか」
「別に信じなくてもいいわよ」
「今度は山分けだからね…」
「くどいぞ」
それから更に幾度かの休憩を挾んで数時間歩き続け、
夜明け間近になった頃にツグミが言いました。
「ここですよ」
「え?」
まろんは辺りを見回しましたが、相変わらずの砂漠の真ん中にしか見えません。
少しだけ先を行っていた都が戻り、遅れ気味だった大和が追い付きました。
全員が揃ったのを確認すると、ツグミはもう一度尋ねました。
「冗談は一切抜きにして、私は此だけは止めた方が賢明だと思います」
「危険は承知の上だよ」
「餌に逃げられる訳にはいかないわ」
「まぁ覚悟は出来てます。多分…」
「判りました。もう聞きませんから」
それからツグミは肩から下げている物入れより一際小さい皮袋を取り出します。
「剣士さん、ちょっと離れていて下さいね」
「うん」
まろんが外套の中から出るとツグミは数歩前に進んで立ち止まり、
皮袋の中から粉を手のひらに出しました。そして両手のひらを合わせてこすり、
粉を手に馴染ませると、その手のひらを正面に向けて突き出します。
そのまま更に数歩前進すると、後の三人から見たツグミの肩越しの風景が
歪み、波打ちました。まろんが声を上げます。
「何、これ…」
「これが結界という物でしょうか」
「成程ね」
「でも、あの辺ってさっき都が歩いてたよね」
「それが普通の人間には判らない仕掛けって事よ」
ツグミは更にそのまま進むと、左手はそのままに右手を外套の下に戻すと
短剣を取り出して宙を薙ぎました。歪んでいた景色の中に縦に切れ目が生まれます。
その切れ目に手を入れたツグミは、そのまま切れ目の片側をめくりました。
まるで窓の日除けを開く様に。短剣をしまうと片手でまろん達を手招きするツグミ。
「中へ入ったら、一つだけ気を付けて欲しい事があります」
「何?」
「砂漠の砂が赤くなっている所を踏まない様にしてください。絶対に」
「それが例の大昔の罠って事?」
「ええ」
「何だか知らないけど、踏まなきゃいいんでしょ」
躊躇するまろんと大和を尻目に、都はすたすたと中に入って行きます。
慌てて続くまろんと大和。中に入ってから振り向いた三人は、そこに
誰も居ない事に一瞬驚きました。が、すぐに何もない空中から手が見え始め、
やがてツグミも中に入って来ます。それからツグミの背後で、透明な幕が
今通った透き間を塞ぐ様に垂れてきて視界を遮る様子を目撃しました。
まろんが慌てて尋ねます。
「閉じてしまったの?」
「いいえ。閉じてしまったら中からは開けられないんです」
「でも、向こう側の景色が隠れた様に見えましたが」
「カーテンと同じですよ。降りているだけ」
都がぽつりと言いました。
「つまり奴等も此から入って来れるのよね?」
「そういう事になりますね」
「じゃ行くわよ」
再び正面を向いた大和が怪訝そうに言います。
「でも相変わらず何も無い様ですが」
「何言ってるのよ、こんな砂丘は結界の外では見えなかったでしょうが」
「あれ、そうだっけ?」
「その砂丘の向こう側…」
四人が目の前の砂丘を登り切ると眼下に石で造られた壮麗なる建物が
見えました。中央には窓の無い塔がそびえていて、その塔の下からは
通路と思われる細い建物が四方に延びています。塔の外側には三層の回廊が
巡っていて、四つの通路と回廊の交差する部分には中央の塔の三分の一程の
高さの塔、更に最外周を囲む石壁と通路が接した部分には門と思われる物があり、
それ以外にも石壁の四隅には櫓らしき物が付いています。
全体はほぼ真四角の構造になっていて、塔を中心に四つの四角い輪が
入れ子になっている様にも見えます。
「これが…」
「太陽神殿って訳ね」
「凄いです」
何か聞こえた気がして、まろんは振り向きましたが、そこには
まろんに向かってツグミが小首を傾げて立っているだけでした。
気を取り直して遺跡に向かって進み出す四人。ツグミに言われた様に
赤い砂を避けて歩いていた為に多少遠回りになりましたが、やがて
建物へと近づいて行きます。砂丘の上から見下ろしていた時には
それ程とも感じませんでしたが、遺跡は相当に大きな建物である事が
近づくにつれて判ってきました。正面に見えてきた入り口らしき部分の柱は馬を
数頭並べた位の幅を占める太さがあり、その柱が支える空間の天井はロクアトの
城砦より高さがある事は間違いなく、さらにその上にも階層があるのです。
三人が言葉もなく見上げているの中でツグミが言います。
「昔の人は熱心ですよね、こういう事に」
と、素っ気無く言うと先に中へ入って行ってしまいました。
後を追って三人が中に入ると、そこは城の広間の様な空間でした。
入り口と同様に天井は高いのですが、空気が澱んでいる様な重い感覚が
襲ってきます。そして頭痛を催しそうな酷い臭い。
更に灯りは全くありませんでした。
「ツグミさ〜ん」
「何も見えないじゃない」
「灯りを持ってくるのでした」
「松明ならあるけど」
都が取り出した松明の先端を入り口から差し込むわずかな明りで確かめ、
大和が燐寸を擦ろうとしたその時、闇の奥から鋭く声が届きました。
「待って!松明は駄目!火は点けないでください」
通路の奥から碧い光がゆらゆらと近づいて来ました。
炎とは違う何かから光が発しているランプを両手に提げているツグミ。
それを各々に一つづつ渡して行きます。受け取ったまろんが聞きました。
「なんで松明点けちゃ駄目なの?」
「そこいら中に漏れているんですよ。危ない物が」
「え?」
「判りませんか、この臭い」
三人は顔を見合わせていましたが、すぐに都が答えました。
「ああ、地の油なのね、この臭い」
「ええ」
「それって…」
よく判っていないらしいまろんに大和が教えました。
「ランプの油とかに使う奴の原料ですね」
「ふ〜ん」
「でも何でそんなもんが臭いを充満させる程沢山あるのよ?」
「この神殿への捧げ物なんですよ」
都はその答に頷きましたが、納得したというよりは何かを考えているという
様子です。ですが考えをまとめる前にまろんの奇妙な行動に気付きます。
「あんた、何やってんのよ」
ツグミの外套の中に顔を突っ込んでいたまろんが、中からくぐもった
声で返事をしました。
「だって臭いんだもん」
ツグミが流石に呆れたような顔をして言います。
「臭いまでは防げないんですけれど」
「でもこの中の匂いの方がまし…」
都がしびれを切らして、まろんの尻を蹴りました。
「いい加減にしなさいっ!」
「痛いなぁもうっ!」
そうは言ったものの、服の下に顔を埋めているのは苦しかったらしく、
まろんは大きく息を吸い込んで、それからしこたま噎せています。
「馬鹿」
まろんは涙目で都を睨みましたが、都は相手にしませんでした。
咳が治まってから、まろんはツグミに言います。
「昨日の香りが全然しないよ」
「周りが酷い臭いだから鼻が利かないのでは?」
「あ、そうか」
それまで押し黙っていた大和が言った言葉に都が一際大きく頷きました。
「あんまり聞きませんね、太陽信仰で油を奉納って言うのは」
「流石ですね、賢者さん」
「私も何か変だなって思ったのよ」
都へなのか大和への返事なのか、ツグミが話し始めます。
「"太陽神殿"というのは後の世で生まれた言い方で、実はちょっとした
間違いから来ているんです。本当の名前は"ひの神殿"と言って、
その"ひ"が、お陽様と勘違いされたのが今の呼び名の由来。
正しくは"緋の神殿"。緋色の緋ですよ」
真っ先にその名の意味に気付いたのは大和でした。
「それでは、この神殿に奉られているのはもしかして」
既に都も気付いていました。
「火竜って奴か…」
まろんが三人の顔を見回しながら聞きました。
「何それ?」
「火を吹く蜥蜴みたいなもんよ。とてつもなく大きい奴らしいけど」
「もしかして此に居るの?それ?」
「居たらどうだってのさ?」
「捕まえて見世物用に売り飛ばす!」
「馬鹿」
「何ですって〜!」
「馬鹿って言ったのよ、あんたが勝てる理由ないでしょ」
「勝てるもん。ツグミさんだって居るし」
「生憎と…」
ツグミが答えました。
「見世物にするのは無理でしょうね」
その答えにまろんと大和が驚きの声を上げました。
「やっぱり居るのね!」
「まさか、本当ですか?」
「皆さんが想像しているのとは大分違うと思いますよ」
「やった!早速お宝発見よ!」
「まだ見付けてませんけど…」
「見付けたも同然だって」
「脳天気」
自らを奮い立たせるかの様に声高に話す三人。そしてまろん達の向かう先、
広間の奥には通路へと続くであろう暗い穴が洞窟の様に口を開けていました。
(続く)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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