神風・愛の劇場スレッド 第79話 『贖罪』(10/3付) 書いた人:携帯@さん
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From: Keita Ishizaki <keitai@fa2.so-net.ne.jp>
Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation
Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
Date: Tue, 03 Oct 2000 02:37:02 +0900
Organization: BIGLOBE dial-up user
Lines: 450
Message-ID: <8rah3u$bjg$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>
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<8raf84$9r6$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>

石崎です。

 このスレッドは、神風怪盗ジャンヌのアニメ版を元にした妄想スレッドです。
 こちらは、第79話の本編です。
 第78話のフォロー記事は、
Keita Ishizakiさんの<8raf84$9r6$1@bgsv5905.tk.mesh.ad.jp>
 から読んで下さいね。
 では、ゲームスタート!



★神風・愛の劇場第79話 『贖罪』

●オルレアン ミストの部屋 1月26日(水)深夜

「またあんた?」

 ミストは、暗闇に向かって声をかけました。
 声をかけた方角から、ノインが姿を現しました。

「または無いでしょう」
「事実を言っているだけじゃない」
「相談があるのですが」
「今度は何よ」
「ちょっとした、仕掛けをしたいと思いまして」

 ノインは魔呪符を手にして言いました。


●桃栗学園 職員室

 木曜日の朝。まろんはツグミとの約束もあり、真面目に登校しました。
 もちろん、新体操部の朝練にも参加しています。
 練習中、先輩達が陰口を叩くのが聞こえましたが、それは自分が悪い事でもあ
ったので、気にはしませんでした。
 朝練の後で、パッキャラマオ先生に呼ばれて今週前半練習を休んだ理由につい
て聞かれ、少し迷ったのですが風邪を引いた事とイカロスの事を正直に話しま
した。

「そうザマスか。なら良かったザマス。東大寺には昨日、自主練中に怪我をして
首に包帯を巻いていたとか聞いていたザマスから」
「え…?」

 敢えて話さずにいた事を先生に言われ、少しドキリとしました。
 月曜日に休んだ時には風邪と言っていたので、先生は知らないと思ったのです。
 都の奴、余計な事をと一瞬思いましたが、口止めをしなかったのも事実なので、
これは仕方がありません。

「自主練はどこでやってたザマス? 確か土曜日は体育館はママさんバレーの練
習の為に貸していたザマスし、日曜日は卓球クラブが……」
「リビングでボールの練習をしていたんです。そしたら足を滑らせてテーブルの
角で…」
「全く、いつもの事ながら危なっかしいザマスね」
「すみません…」
「まぁ大した事は無くて良かったザマス。それから日下部」
「はい」
「その盲導犬の話ザマスけど、学園の敷地内にも貼り紙をするザマス。教頭先生
には話して置くザマスから」
「有り難うございます」
「それから……」

 パッキャラマオ先生は何か言いたそうにしているのですが、なかなか次の言葉
が出て来ない様子でした。

「あの、先生?」
「ああ、何でも無いザマス、もう良いザマスよ」

 そう言われ、まろんは退出しましたが、先生が一体何を言いたかったのだろう
と暫く気になって仕方がありませんでした。


●桃栗学園 屋上

 お昼休み。予め示し合わせていた通り、都達は屋上で昼食を取っていました。

「それで、訪ね犬のポスターは出来たの?」
「ああ。二百枚程刷ってきた。こんな感じで良いよな」

 稚空はポケットから折り畳んだB4サイズのポスターを取り出し、都に渡しま
した。
 それはワープロ文字でイカロスの特徴といなくなった時の状況、連絡先等が
ワープロ文字で印刷され、横にはツグミに借りた家族写真の中から、イカロスだ
けを拡大したカラー写真が貼り込んでありました。

「随分綺麗に出来ているわね。まさかこれ全部パソコンで編集したの?」
「まぁな」
「流石稚空! 何だって出来るのね〜」
「何よ、こんなの誰にだって出来そうじゃない」
「ならまろん、自分でやってみるか?」
「う…」
「ところで名古屋君、何時カラープリンター買ったんですか? 確か持って無い
ってこの前…。それにこれ、カラーレーザープリンターから直接印字したものじ
ゃ無いですか?」
「それは…友達の家で印刷させて貰ったのさ」

 稚空が一瞬回答に詰まった様子なのが、都は気になりました。

(稚空にプリンターを貸した友達って…誰だろう? 稚空のあたし達以外の友達
って…)

 稚空に聞こうとする前に、委員長が話し始めました。

「連絡先にメールアドレスがありますけど」
「ああ、メーリングリストみたいになっていて、ここにメールを送ると指定のア
ドレスにメールが転送されるようになっている。勝手だけど委員長の自宅と携帯
のメアドも登録してあるから」
「そう言えば東大寺さんもピッチ持ってましたよね。あれも確かメール使えたの
では…」
「ええ、一応…。余り使ってないけどね」
「じゃあ、そのアドレスも教えてくれ」

 ふと横を見ると、まろんが膨れているのが目に入りました。

「何膨れてんのよ」
「どうせ私はメールが使えませんよーだ」
「別に気にする事無いじゃない」
「だってぇ…」
「そうさまろん」

 稚空はまろんを側に呼ぶと、何事か囁きました。

「うん! 判った!」

 まろんの顔が急に明るくなりました。

「何話してたのよ」
「え、いや、ちょっと…」
「あたしに話せないような話?」
「えっと、その…」
「まろんはツグミさんの側にいるから、そこに連絡すれば済むって事さ」
「ホントに?」
「うんうん!」

 まろんも肯きましたが、何か隠し事をしているようで気になりました。

「ホームページまで作ったんですか?」

 ポスターを飽きずに眺めていた委員長が言いました。

「ああ、そこまでする必要は無いと思ったんだが一応。ちなみに桃栗CATVイ
ンターネットのローカルニュースグループにも記事を流しておいた」
「随分徹底してるわね」
「俺もそこまでする必要は無いと思うんだが、友達の意見でな。ところで都、警
察の方はどうなってる?」
「あれから帰りに警察に寄ったんだけど、父さん達は事件で出払ってたの」
「又、ジャンヌが現れたんですか?」
「そうじゃないの。ここ数日、桃栗町で起きている怪現象の事は知ってるわよ
ね?」
「ああ、あれですか」

 委員長は肯きましたが、稚空とまろんはきょとんとしています。

「あれ? まろん達は知らないの?」
「知らないのって何を?」
「ここ何日か、桃栗町の上空で、何回か謎の爆発が起きているのよ。最初は花火
か何かだと思われていたんだけど、父さんは過激派の仕業じゃないかって。実際、
犯行声明が何件か出ているらしいわ」
「そんな話になっていたんですね」
「ええ。今のところ被害は出ていないけど、ほっとく訳にもいかないわ。それで、
ジャンヌ特捜班も動員されたみたい」
「そ、そうなんだ、大変ね」
「そうだな」
「だから、今日の帰りにもう一度警察に行くわ。ポスターも出来たから丁度良い
し」
「判った。後で渡すよ」

 その時。意外な程近くで、花火のような音が空中から聞こえました。

「ねぇ、今の音…」
「例の奴じゃないですか?」

 音の方角を見ると、何かが爆発した後のような煙が残っていました。
 それと、何か黒い影。

(鳥…かしら?)

 ただその影は、すぐに太陽に隠れて見えなくなってしまいました。

「ねぇ、あれは一体…まろん?」

 まろんも見ていなかったかと思い、横を向くとまろんは稚空と一緒に走り始め
ていました。

「まろん!?」
「ゴメン! 急用思い出した! また後で!」

 そう言い残すと、屋上の出口に姿を消しました。

「どうしたんでしょう、あの二人」
「さぁ…。ところで委員長、さっき空に何か飛んでいるの見えなかった?」
「いえ、別に何も」
「そう…。気のせいかな?」


●桃栗警察署

「こんにちわ」

 放課後。新体操部の練習が終わった後で、都は待っていてくれた委員長と一緒
にジャンヌ特捜班のプレハブを訪れました。

「ああ、都さん」

 中でパソコンに向かっていた秋田刑事がディスプレイから顔を上げて返事をし
ました。

「他のみんなは?」
「例の事件で、駆り出されてます。今日の昼間もあったんですよ。僕は本当は非
番なんですけど、ジャンヌが出た時に備えて留守番という事で」
「大変ね」
「いやあ、最近はジャンヌの出現件数もめっきり少なくなりましたから」
「そうね…」

 ふと、寂しそうな表情を見せる都。
 やがて、ズタ袋の中から一枚の紙を取り出します。

「ねぇ、ちょっと頼まれてくれないかな」
「何ですか?」
「この犬なんだけど」
「訪ね犬ですか? 盲導犬ですか。都さん、この犬! 確か去年の秋頃…」
「違うわよ。良く似てるけど、別の犬なの。あの時の犬は、崖から海の中に落ち
て行方不明のままじゃない」
「そうでしたね」
「盲導犬がいなくなって、飼い主はとても困ってる。警察でそれとなく捜してく
れないかしら。目立つ犬だから、少し注意して見ていれば気付くと思うのだけど。
公私混同だって判ってるけど、盲導犬捜しならば、後で問題になる事も無いだろ
うし」
「判りました。警部が戻って来たら頼んで置きます。大丈夫ですよ。僕が言うの
も何ですが、警部は署内で人望が厚いですから、きっとみんな協力してくれる筈
です。それと、僕の方でも署内のデータベースにアクセスして、何か事件に巻き
込まれていないか調べてみます」
「有り難う」

 都は秋田にポスターを何枚か渡し、何か判ったら電話するようにと頼んで特捜
班を後にしました。


●桃栗町郊外 ツグミの家

 新体操部の練習を終えた後、急ぎ足でツグミの家を訪れたまろん。
 ところが先客がそこには居ました。

「まろんお姉さん。こんにちわ」
「全君? どうしてここに?」

 以前サンセットクリフまで連れて行った全が、ツグミの家のリビングでお茶を
飲んでいました。

「昨日夕陽を見に行った時、三枝先生が言ってました。まろんお姉さんが来ない
って」
「あ…」

 全に言われ先週、三枝と写真のモデルになる約束をしていた事をまろんは思い
出しました。

「ごめんなさい。最近色々あって…。でも、どうして全君が? 電話してくれれ
ば良いのに」
「三枝先生は無理を言って頼んでるから、こちらから催促するような事は出来な
いって。お姉さんがその気になるまで待つって言ってました」
「そうなんだ…」

 せめて電話一本位入れれば良かったとまろんは少し罪悪感を感じました。

「でも僕、先生が寂しそうな顔をしているのが気になるんでぃす。それで、お姉
さんに直接聞こうと思ったんです。でも、僕はお姉さんの住所も電話番号も知り
ません」
「それもそうね」
「それで、ここを思い出したんでぃす」
「どうして?」
「ツグミお姉さんも、まろんお姉さんの事を知っている様子でぃしたから、教え
て貰おうと思って」
「夕陽は綺麗だった? 全君」

 まろんの分のお茶を持ってツグミがリビングに戻って来ました。

「ああ、私が運ぶ!」
「これ位平気よ。日下部さんは座ってて」

 昨日のケーキ作りの様子を見ていたので、まろんは大人しくソファに座りまし
た。

「ツグミさん、全君と知り合いだったんだ」
「御免なさい。黙ってる積もりは無かったのだけど、街で偶然会って。それでこ
こに夕陽を見に来たついでに一度家に泊まった事があるの」

 そう言って、お盆を置いてからまろんの耳元に顔を寄せて。

「あ…でも、何も無かったから安心して」

 と、ツグミは囁きました。
 全は子供なので全然気にしていなかったまろんですが、ツグミが気にしている
様子なので、まろんはクスリと笑いました。


●枇杷町 山茶花邸本邸

 学校から帰宅した弥白に、執事が来客を告げました。
 客の名を聞いた弥白は、たちまち微笑んですぐに通すように命じます。
 ややあって、稚空が弥白の部屋に現れました。

「今お茶でも…」

 弥白は稚空をソファに座らせると、お茶の支度をしようと部屋に付属している
キッチンへと向かいかけました。

「良いよ。すぐに行かないといけないから」
「そうなんですの?」

 昨日もそうでした。
 久しぶりにやって来た稚空は、用事だけ済ませると、すぐに帰ってしまった
のでした。

「昨日はプリンターを貸してくれてサンキューな。今日はお礼を言いに来たん
だ」
「それ位お安いご用ですわ。ああ、そうですわ。例の物、出来ましてよ」
「もう出来たのか!?」
「山茶花グループに不可能はありませんわ」

 弥白は、用意してあった大きな封筒をテーブルの上に出しました。
 稚空は中に入っている物を取り出して広げました。

「ずいぶん元の写真に比べて大きいな」
「写真から輪郭線をトレースして、立体コピーで仕上がりを確認しながら、ど
うすれば目の見えない方に特徴を掴んで頂けるのか、試行錯誤し修正を繰り返
して最終的に印刷するんですのよ」

 稚空の手にしている紙には、稚空が持って来た写真が、盛り上げ印刷の形とな
って印刷され、厚紙の表紙に挟んで製本してありました。

「随分手間がかかるんだな。それを一日で仕上げてくれるなんて、本当に済まな
い」
「稚空さんの頼みですもの……。それで稚空さん。くどいようですけど、私の名
前は……」
「ああ。誰にも言ってない。でも、どうしてお前が手伝った事を言っちゃいけな
いんだ?」
「だって、恥ずかしいんですもの…」

 嘘でした。本当は怖かったのです。
 あの女に、自分の存在を知られることが。
 稚空に昨日写真を見せられた時、心臓が止まるかと思いました。
 しかし、稚空の頼みを断ることは出来ませんでした。

 それに先日見た悪夢。
 どうやら実際に起きた事では無かったとは言え、罪悪感を感じていたのかも。
 いつしか心の中で二人に殺意を抱いていた自分に……。

 そんな筈はない。
 そうよ、困っている人を私は助けているだけ。
 私は、何も間違ったことをしている訳では無い。
 全ては愛しい稚空さんの為なのだから。
 決して、間違った事などは…。

「昔から弥白は目立ちたがりなのに、妙な所で恥ずかしがるんだよな」
「ごめんなさい」
「良いって。それじゃあ、俺、もう行かなきゃ」
「あ、稚空さん」
「何?」
「いえ…。また来て下さいね」
「ああ。じゃあな」

 稚空が出て行ってしまった後で、弥白は思います。
 どうして今日も、稚空を引き留める事が出来なかったのかと。


●桃栗町中心部 噴水広場

「東大寺さん!」

 ポスターを街中に貼っていた都は、噴水広場で委員長に声をかけられました。

「ちゃんと貼った?」
「もちろんですよ。ちゃんと目立つ場所に貼っておきましたから」
「こっちも大体貼り終わったわ」
「それじゃあもう遅いし、そろそろ帰りましょうか」
「そうですね。そう言えば日下部さんは今日も?」
「ええ、泊まるらしいわ。まぁ今日は他にお客さんもいるらしいから安心よね」
「お客?」
「ほら、全君よ。ツグミさんと知り合いだったみたい」
「へぇ」

 その時、都の電話が鳴りました。
 電話は秋田刑事からでした。

「都さん、例の盲導犬ですけど、それらしい犬が見つかりました」
「え!? もう? どこで目撃されたの?」
「それが…」
「どうしたの?」
「実は、昨日の深夜、県道×号線でスピード違反のバイクを追跡中のパトカーが
道で犬を轢いてしまった事故があって、その犬の特徴が例の盲導犬とそっくり
なんですよ。犬を轢いた事故なんて記録に残らない方が多いですが、今回は官
用車に傷をつけたって事で、事故の状況が書かれた始末書が出ていました」
「何ですって!」

 秋田は、事故の状況をかいつまんで説明しました。
 それによると、事故があったのはツグミの家の側を走る県道をツグミの家か
らやや枇杷町方向に行った場所の路上で、時間は今日の午前2時頃。
 暴走族のバイクを追跡していたパトカーが、道路上で寝そべっていた黒い大き
な犬に気付くのが遅れ、轢いてしまったとの事でした。

「で、その犬はどうしたのよ」
「即死だったそうですから…。人間ではありませんので、保健所かどこかで既
に遺体は処分されたんじゃ無いかと…」
「良く似た犬じゃないの? それと首輪とかは?」
「当事者にメールで写真を送って確認したので、多分間違いないと思うんです
が…。遺品についても、まだそこまでは」
「判ったわ。遺体がどうなったかについても調べてくれないかしら。お願い」
「判りました」

「どうしたんですか? 東大寺さん。遺体がどうこうって」

 電話を切った都に委員長が声をかけました。

「……」
「ねぇ東大寺さん」
「ちょっと黙ってて」

 この事をどう伝えるか、それとも伝えるべきでは無いのか、都は呆然と立ち尽
くしていました。


●オルレアン ミストの部屋

「ノイン。あんたも随分酷い事するわね」

 再び現れたノインに、ミストはそう言いました。

「そうですか? 何時までもどこかで生きていると希望を持たせるよりは、余程
親切かと。どうせ、返す積もりなど無いのでしょう?」
「そんな事無いわよ」

 ミストは、アキコとイカロスの方をちらりと見やりました。

「時期が来たら返す積もり。その時まで両方とも生きていればの話だけど」
「生きていれば、ですか」
「ところであんたのその魔術、前から思っていたけど魔界の術では無いわね」
「判りますか? これは、人間が作り出した魔術なのですよ」
「物質から『生命』を生み出す魔術か…。魔王様があんたを重用するのも判るわ
ね」
「本当は少し違うのですが…。まぁそう言うことにしておきましょうか。…そ
れでは、後は任せましたよ。ミスト」

 そう言い残し、ノインは闇の中へと姿を消しました。

(第79話 完)

 またまたやってしまいました(滝汗)。
 では、また。

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Keita Ishizaki (E-mail:keitai@fa2.so-net.ne.jp)
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