接触8割削減って?

中国武漢から発した新型コロナウィルスの猛威で先行きが見えない。緊急事態宣言で外出自粛要請に応えて在宅勤務の毎日だが、世間には「ただの風邪に騒ぎすぎだ。意地でも普段の生活を続けてやる」と息巻く声もある。そんなに自信があるなら、最前線の医療現場に行って手伝ったらどうだ・・・と言いたいが、なんだか中国の海洋進出で軍事的脅威論が高まったとき「そんなことは杞憂だ」「そう言うなら尖閣列島に行って盾になれ」といった議論を思い出した。実際に現場に送っても、現場で奮闘している方々の邪魔になるだけだろう。

また、「ヨーロッパで死者数が多いのは、医療崩壊で治療できずに亡くなった人の診断書に、面倒だから新型コロナと書いてしまっているせいだろう」という意見も聞いた。そうだとしたら医学的には新型コロナの死亡率に含めるべきではないのだが、関連死であることに変わりない。震災と同じく、直接死より関連死者数の方が社会的には重要だ。

対策として「人との接触数を8割減らせ」という号令のもと、「街の人出がなかなか目標に達しない」「都心は減ったが周辺はまだ5割だ」といった報道が連日されるが、数学の「順列組合せ」を覚えている者なら「ちょっと待て」と言いたくなる。誰も言わないのが不思議だ。

例えば従来100人の人出がある地点で45人に減ったとして、「まだ6割減にも満たない」ということになるのだろう。ところが、これは

両者の接触数を平均すると、 (0回×55人 + 44回×45人)÷100人 =19.8 で一人当たり19.8人に接触することになり、従来99人と接触していたのだから約20%、つまり80%の削減目標達成だ。

極端な話、従来2人だった場所が1人に減ったとして、これを5割減というのだろうか。実際は2人のどちらも接触はゼロだ。

実感として、たまに出社しても満員電車がガラガラとなっているのを見て、9割ぐらい減っているという印象を持った。

ところで、「8割減」というのは感染症の拡大を予測する数式から求めた科学的数値だと聞いて、「接触数」の定義が気になった。予測式で想定しているのと同じ意味の「接触数」で考えないと意味がないからだ。調べてみると、未感染者数S、現在感染者数I、回復者数Rの関係を表現した「SIRモデル」が基になっているという。

SIRモデルは、IとRの各微分方程式(時間変化率)を含む連立方程式で、感染が広がる係数と回復する速さ係数が含まれる。これらの係数はこれまでの感染拡大状況から設定されるのだろうが、接触人数との関係はイマイチ分からない。

どうやら、接触人数がこの方程式に及ぼす影響をどのように見積もるかで、意見が分かれるのだろう。「8割減」の見積もりにあたり、医療と性風俗に関する「接触数」はどうしても介入ができないと想定し、それをカバーするために接触削減目標を多めに見積もっているという話も聞く。そうであれば、これらに関わらない者は削減目標を緩めてもいいことになる。

「8割」にどこまで折り込んでいるのか、そもそも2m以上離れていれば接触数にカウントしないという話も聞くし(であれば、人出が何割減ったかを8割と比較するのは無意味だ)、また8割減の母数となる「削減前の接触数」の前提がどこまで捉えているのか、わからないことが多い。

結局のところ、後悔したくなければともかく外出を控えた方がいい、というありふれた結論になりそうだ。

(2020.4.23)


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